第25話 生徒会長のお仕事 1
クルミさんと会った翌日、さっそくわたしは生徒会長の仕事を押し付けられた。
そしてわたしは先生に渡された書類に目を通す。というか予算少なっ。こんな低賃金でどうやれと? 宝石作って売るなんてそんな危険犯したくないよ?
とりあえず図書館のテーブルが壊れたというのと、男子寮の一部の部屋の扉の修復は優先かな? 割れた窓ガラスはダンボールか何かでふさいでもらうとしよう。
わたしは生徒会室で着々と必要なことと不必要なことを別けていく。授業をサボって。というか授業はテストが出来れば何も言われないので、問題ない。授業内容なんて全部ナタリーが4歳ぐらいの時に教えてくれたから。
これが英才教育というやつか……!
「学園新聞って無駄遣いもいいところだよ……」
学園新聞というものの過去資料を見てみると領主様の息子サイコー!! という内容しかなかった。どうみてもゴミ。こんなので予算の半分とか使われてたらマジで終わる。なに呑気にカラー写真なんて貼ってんの? こっちにはそんな金ないんだよ?
「身分差別が酷過ぎる……」
生徒会長の過去の資料と一般人の副会長が纏めた資料を見てみるとその差は一目瞭然。お金持ちの奴らが揉み消して、関係ない他人に罪を擦り付けてる。反対に一般人の問題に関してはより大きく事が書かれている。
所詮は領主の息子というわけね……こうなると領主の方からも何かありそう。「なんでウチの息子が生徒会長じゃないんだ!!」とか言ってお金減らされそう。
「差別を無くすにはどうしたら……」
わたしは頭を抱えて悩む。こちらはシンプルにお金がない。お金を掛けずに一般人との差別を無くす方法を考えなければ……!
とりあえず全校生徒が130人ぐらい。そのうちの金持ち軍団は13人……
「やっぱりわたし1人じゃ纏まらない……なんで副会長も会計も居ないの!?」
副会長は居るにはいるが、冒険者なので昼間は出稼ぎに行ってるので基本的に居ない。会計はそもそも存在しない。広報はあるけど、そもそも新聞を発行する気はないので、要らない。
「クルミさんなら何か知ってるかな?」
あの人確か地球では生徒会をやってたはず。もしかしたら何か情報が手に入るかも!
というわけでわたしはクルミさんのいる図書館へと向かった。
「わぁ……!」
思ってたよりも大きく、たくさんの本が並んでいた。そしてクルミさんは意外と早く見つかった。半分壊れたテーブルで本を読んでいた。
「あ、あのクルミさん……」
「フェノンくんか。昨日の話だな? まあ、座りたまえ」
「う、うん……」
クルミさんが膝をポンポンと叩いて待っているので、クルミさんの膝の上にちょこんと座った。
「私は数日前にこの世界とは違う世界から来たのだよ」
クルミさんはここに来るまでの経緯をわたしが漏らした話も含めて全て話した。幸い、わたしはクルミさんに背を向けていたので、涙目になっていることに気づかれなかった。
どうやらクルミさんは他のクラスメイトたちと一緒にわたしのお漏らしを境目にこの世界に転移してしまったらしい。
そしてリアとわたしを除いた全員が王城に転移させられ、勇者様とか言われてたらしいのだが、どうもクルミさんとは相性が悪く、王都から追い出されてしまい、1番遠い街まで来たらしい。
クルミさんは勇者としての力を領主に見せつけてこの学園に住む許可を奪ったらしい。お金は王城から追い出される時に大金貨をいくつか盗んできたらしく、いまはここで文字を読む練習をしてるんだとか。
「というわけだ。フェノンくん、ここの魔道具と魔法具の違いを教えてほしい」
話終えるなり、さっそく聞いてくるクルミさん。わたしはそれに優しく答える。
「魔道具は地脈を使わないで自分の魔力で動かす道具です。反対に魔法具は地脈を使って動かす道具のことです。簡単言えば自力か他力かというだけですね」
「なるほど、そういうことか。ありがとう。ところで何か悩みがありそうだが、相談に乗れるかわからないが出来る限りは努力するぞ?」
何故かわたしの表情を一瞬で読み取るクルミさん。少しばかり肩がビクついた。
「実はですね……」
わたしは生徒会長で、お金と差別に悩んでることを話した。
「差別といえばやはり制服だな。これは身分差が生じないから非常に便利だ。もしお金がないなら集めることをおすすめするよ。私からは以上だ。ここから先は自分で考えたまえ」
肝心なところを教えてくれないクルミさん。こっちはお金が欲しいのに……
1度生徒会室に戻って資料や校則を再確認する。
学園の図書館は学園に所属している者のみ利用可能。部外者が学園に入る場合は身分証の提示が必要……身分証?
「図書館を有料にすればいけるかな? 少し調べてみようかな?」
思い立ったらすぐに行動。わたしは学園を出て街の人たちに図書館を使いたいかどうかを聞いてまわった。
すると思ったよりも多くの冒険者や商人たちがお金を払ってもいいから使いたいと答えた。
「よし、これならいける……!」
わたしは軽い足取りで学園へと戻って行った。