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第24話 返事はきちんと言いましょう


 この学園は最低3年間通わなければならないが、上限はなく、何歳でもいることができる。


 ただし、1度退学すると二度と戻って来られない。この学園のルールは3年間ここで必要なことを学び、それ以降は学園を出ていくなり、そのまま残るなり自由にして良いらしい。残る人は基本的にお金がない冒険者か、王都にある魔法大学に合格するために勉強をする人のどちらかである。


 ではなぜ、わたしの横には前世のクラスメイトがいるのだろうか……?



「どうした? 私の顔に何かついてるのか?」

「い、いいえ!」



 ジッと見てるといきなり話しかけられて、わたしは肩をビクつかせながら正面を向いた。


 声と喋り方からして間違えなく田村さん。授業はサボるけど、成績はかなり優秀ということで有名だった。それに加えてスタイルが良いと、男子にはかなり人気があった人……らしい。情報は全部親友からしか入って来ないので正しい情報なのかは気になる。

 でも確かにスタイルはいい。これなら人気があるのも納得できる。



「大変そうだな。手伝ってやる」



 そう言ってわたしにドライヤーを渡すように手を出してくる。



「あ、ありがとうございます……」



 わたしは田村さんにドライヤーを差し出した。すると田村さんは手際よくわたしの髪を乾かし始めた。



「魔法具だったかな? これはすごいな。地球のものと全く同じだ。それに乾かしやすい。どうやって作ってるというのだ?」



 田村さんは興味津々になってブツブツ言い始めた。

 髪を乾かして貰っているので、何か話しておかないといけない気がする。



「魔法具はルーンと言われる魔法石を使うんです。それでそこのコンセントには地脈から吸い上げた魔力が流れてるらしくてその魔力とルーンが反応して風が出るらしいですよ」



 田村さんは少し驚いたような顔をしていた。



「意外と物知りなんだな。私は胡桃(くるみ)というもっと知ってることを教えてくれないか? 私の知識じゃどうも偏りがあるらしくてな」



 田村胡桃さん……クルミさんでいっかな。最近『さん』付けとか一切してなかったから違和感凄いけど。



「うん、構いませんよ。わたしはフェノンです。クルミさん、よろしくお願いしますね。では何から話しましょうか……?」



 それからわたしはクルミさんにナタリーから教わったことをいくつか話した。そして、髪の毛が乾かし終わり、わたしはお礼を言って立ち上がった。



「今日はありがとう。いろんなことを知ったよ」

「そうですか。それはよかったです。ではまた今度……」

「あっ、ちょっと待ってくれ」



 わたしはその場を去ろうとすると呼び止められた。わたしはその場で立ち止まった。



「もしかして『はい』って言えないのか?」

「……」



 わたしはその場で顔を赤くしながら頷いた。クルミさんの言う通り何故かわたしは「はい」という返事が上手く出来ない。

 ホント、なんでかな……?



「ちょっと言ってみてくれ」



 わたしの肩を掴んで迫ってくる。クルミさんの目がキラキラしてるように見えた。



「あい」



 それから数秒間何も反応してくれないクルミさんに対してわたしの顔はみるみる赤くなっていく。そして耳まで真っ赤になった。



「なにか反応してください……」

「おっと、それはすまん。本当に言えないんだな。恥ずかしい思いをさせてしまったお詫びに今度私のことを話してあげよう。夕方ぐらいまで図書館にいるからいつでも来てくれ。それじゃあな」



 クルミさんはわたしの肩を軽く叩いて先に脱衣場を出ていった。

 真っ赤になったわたしをその場に残して。


 それからわたしは部屋に戻って今度はパジャマのワンピースに着替える。エリーは先ほど部屋の前で入浴セットを持った状態でわたしとすれ違ったので、当分帰って来ない。なので、話すなら今しかない。



「さっき田村さんと会った」

「ブフォっ!?」



 リアがお茶を口に含んだタイミングを狙って話を切り出すと案の定リアはお茶を吹き出した。



「マジ?」

「うん、マジ。それで……なんか普段は図書館にいるから……」



 話始めると先ほどのことを思い出して顔が徐々に赤くなってきた。そしてそのまま羞恥心に勝てなくなって涙目になって、わたしは布団の中に逃げ込んだ。



「お前一体なにされたんだよ……」



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