第21話 魔法学園入学式
エリー教開宗から一晩が経ち、遂に入学式となった。
「フェノン、お前強いな」
「伊達に公衆の面前でうんち漏らしただけあるからね!」
袴を着た状態でドヤってると自分の精神がえぐれて涙が出てきた。そしてリアはハンカチで涙を拭いてくれた。エリーはわたしたちより起きるのが少し遅くて今朝食を食べに行ってるので、この部屋にはいない。
「泣くぐらいなら言うな」
「うん……ありがと」
それから入学式に必要なものを準備して髪を結ぶ。今日はサイドテールにしてみた。ちょっと左側が重い。
「リアも髪伸ばせばいいのに」
「黙れTS娘」
「リアも一緒でしょ!」
「俺は出来る限り男で居たいんだ! お前みたいなうん━━━━な、何でもない……」
少し涙目になりかけたわたしを見てリアは口を閉じた。
それは置いといて、もうわたしが完全に女の子として生きてるからなのかリアの気持ちがよくわからない。普通に男の人とも結婚できるだろうし、たまに妄想だってする。……白馬の王子様のヤツだけど。
「お、お待たせしました!! すぐ準備するから待ってて!!」
「「かしこまりました王女様」」
わたしはリアに合わせて跪いてエリーを崇め奉る。
「王女様はやめてよぉ~」
エリーがおかしくなるのは緊張していた時だけで普段の時は(お母様たちと比べると)普通だと思った。
それからエリーが準備を終えるとわたしたちは部屋を出て鍵をかけた。鍵は各部屋2つずつしかないらしく、わたしが持つと絶対なくす気がするのでその辺はリアとエリーに任せた。
そして入学式が始まった。
「新入生代表による宣誓。ルーズベルト領、領主の娘、タテロール・ルーズベルト様」
「はい」
あの時の金髪縦ロールが声を出して立ち上がった。
あれほど名前が単純な新入生代表は初めて見た。タテロール……素晴らしい名前ですね。尊敬します。
縦ロールの宣誓が終わり、入学式も終わった。そしてわたしたちは教室へと移動した。新入生は全部で12人。生徒は高齢化が進み過ぎた影響でかなり少ない。さらに女子はわたしとリアとエリー、タテロールのみ。残りは全て男子である。
「まずは手元にあるものを確認してくれ」
自分の席に着くと、机の上には教科書と生徒手帳、学園案内表、寮の使い方、身分証明書のカードがあった。この身分証明書には魔力が流れる仕様になってるらしく、出席確認はこれで行うらしい。
「問題はないな。それじゃあ手前の男の子から自己紹介してくれ」
担任の先生はモブを指して、軽い自己紹介を頼んだ。それから1人ずつ名前と趣味、この中で結婚するなら誰がいいかという謎の質問もあった。男子全員が終わった段階ではわたしが3人、エリーが1人、リア4人、縦ロール0人と意外にもリアが一位だった。理由は親しみやすいかららしい。リアはわたしの後ろで「俺はホモじゃない」とかボソボソ言ってた。縦ロールは縦ロールで「ありえませんわ」とかほざいてた。
「じゃあ次、エリー」
「え、エリーでしゅ! よ、よろしくお願いするどすえ!!! しゅ、趣味は◎$♪×□△¥●&#です、この中で好きな人は□●&◎$♪#◎$♪×□でしゅ!!!」
めっちゃ謎の自己紹介をした王女様。途中から何を言ってるのかすらわからなかった。そして顔を赤くしながら座るとリアが立ち上がって自己紹介をした。
「リアだ。趣味はゲームだな。それで好きな人は……」
何故かわたしに指をさしてくるリア。どうしても男には指をさしたくないらしい。男子諸君は「やっぱそっちかぁ~」という反応を見せた。縦ロールはそういう世界もあるんだという真実を初めて知ったような顔をしていた。
そしてリアが座ったので、わたしが席を立ち上がった。
「フェノンフェリナスです。趣味はお団子を食べることです! 好きな人は……お団子です!!」
「「「……えっ?」」」
何故か不思議そうな顔をしてわたしを見てくるモブ一行とリアとエリー。そんな民衆をほっといてわたしは席に座る。
「えっと……さ、最後どうぞ……」
何故か先生すら戸惑う。わたしなんか変なこと言った? 別に普通のことしか言ってないような……?
すると1番最後のタテロールが立ち上がった。
「タテロール・ルーズベルト、ここルーズベルト領の領主の娘ですわ。ここの女は大したことありませんわね。わたくしの趣味はやっぱりお洒落ですわ。好きな人ですか……そこの男ですわ」
なかなかイケメンそうな顔をした男が選ばれた。
少年よ、かわいそうに……合掌。
「ちょっとなんで二人揃って手を合わせてるのですか!?」
縦ロールの指摘に後ろを見るとリアも合掌していた。そしてそれを真似し始めたクラスメイトたち。
「あんたたちさっきから生意気ですわよ! このわたくしを誰だと思ってるんですか!! 領主の娘ですのよ! 1番モテて当然ですわ!! 歯向かったらどうなるか教えてあげますわ! そこのあんた! 勝負なさい!!」
偉そうにわたしの席に指をさして言っているがそこにはすでにわたしの姿はなかった。そしてその後ろのリアの姿もなかった。わたしとリアはみんなが合掌してる間に教卓の下へと避難していたのだ。
「……消えましたわ!? ちょっとあんたどこにやったのよ!?」
「ふぇっ!? し、知らないよ!?」
縦ロールがエリーに絡み始めた。さすがに他人に迷惑をかけるのはよくないので、リアを投げることにしました。
「リア、いってらっしゃい」
「は?」
わたしはリアを縦ロールめがけて投げた。すると縦ロールはリアを華麗に避けた。
さすが自称領主の娘。この奇襲攻撃をかわすなんて……
ちなみに投げられたリアはわたしの席に顔面衝突して机と共に倒れました。
「あなた、いい度胸してますわね。勝負ですわ!!」
「ええっ……」
リアがわたしの方を見てくるが、わたしは透明化を駆使して姿を隠した。するとリアの舌打ちの音が聞こえた。でもわたしには関係ないので無視した。
「(あの脱糞野郎覚えてろよ……)」