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第13話 高齢化ギルド


 ホットドッグを食べ終えると、お母様がギルドに行く用事があると言ったのでせっかくだからついて行くことにした。



「フェノン、ここよ」

「うわっ……」



 いまにも崩れてしまいそうなぐらいにまでボロい建物で、冒険者ギルドというよりかはお化け屋敷の方が近い気がする。

 お母様が扉を開けると中は酒臭く、酒のビンなどがそこら辺に散らばっていた。



「汚なっ……」

「この街は高齢化が進んでますから仕方ありません」



 言われてみれば確かに若い人とかほとんど見なかった……



「ここの冒険者ギルドは老害よ」

「老害って……」



 若者居ないのに「全く最近の若者はこの街をすぐに出ていこうとする!」とか言ってんの? 無意味過ぎるだろ。



「入るから私から離れないようにね」



 お母様にしがみつくとお母様は奥の部屋の扉を開ける。



「まったくいやなっちゃうわね~」

「ほんとにね~」



 なんということでしょう。たくさんの老婆たちがお弁当を広げて世間話をしてるではありませんか。



「それであそこの家の旦那さんがね」

「うちの所も税金税金って大変なんや。国も困ったもんだね」



 なんだこの老人会……本当に冒険者ギルド?



「ここは年老いた冒険者たちが集まるギルド。通称『シルバーギルド』よ。みんなここで生活してるの」



 どうやらここは老人ホームだったようだ。

 どこの世界でも老人たちは変わらないんだな。



「今日は管理人に書類出すだけだからすぐに終わるけど、ナタリーと外で待っててくれる?」

「うん」



 わたしは頷いて答えた。

 ここまで来た意味なし。ただ老人ホームを見て終わり。はっきり言ってこれ以上ここには居たくない。さっさと帰ろ。



「ナタリー、行こ」

「そうですね」



 ナタリーと手を繋いで外に出て、お母様を待つ。すると正面からジジイ軍団が現れた。



「こんなところにずいぶんめんこい子がおるなー」

「そうじゃな。めんこい子じゃ。お嬢さんたち少しいいかの?」



 ジジイ軍団がナタリーに近づくとナタリーがいきなり倒れた。



「……え?」

「わかっておるな? コイツを助けたければ黙ってついてきな」



 わたしは頷いてついて行くことしか出来なかった。

 どこかの屋敷みたいなところに入ると両手を縛られて座らされ、横にナタリーが寝かされた。するといかにも盗賊団の団長…………の老人バージョンが現れた。


 よし、コイツはジジイ軍団の団長、ジジイ団長と命名しよう。



「コイツもなかなか可愛いじゃねーか。きっといい値で売れるぜ?」



 年齢層が変わってもそのセリフと言い方はファンタジー系小説の定番そのものだった。


 わたしは手離すより保管しておけばアンタの言う「いい値」の数億倍の利益になりやっせ? でもまあ、そろそろ限界だから諦めろ?


 ジジイ団長の背後にあった壁が粉砕された。



「私のかわいい娘に何してるのかしら?」

「おかあさま!」

「げっ!?」



 ジジイ軍団の顔色が一気に真っ青になった。どうみてもただのギャグマンガにしか見えない。



「こ、これはエマ様……どうしてこのような場所に?」

「うちの娘の魔力がここに導いてくれたのよ?」



 わたしだってただの幼女だったら何も出来ないかもしれないけど、前世の記憶を持つ立派な大人。何もしないままホイホイとついて行くようなことはしない。


 シルバーギルドから魔力を少しずつ放出してここまで引いてきたのだ。ジジイ軍団は老人と化したのが原因なのか魔力に気づきにくくなったらしい。

 老眼と同じようなものでしょ。



「さてと、覚悟はいいかしら?」

「「「ひっ、ひぃっ!?」」」


 お母様は何処からか大きな剣を取り出して構えた。



「自分の犯した罪をあの世で詫びなさい! 『地獄門』!!」



 全てが終わった時はお母様の服は赤く染まっていた。

 そして、とても生臭く、ここまで意識を保ったわたしを褒めて欲しい……あっ、もうだめ……



「フェノン!?」









 目を覚ますとお母様におんぶされていた。服は洗浄魔法でも使ったのか知らないけど、綺麗になっていた。



「おかあさま……?」

「フェノン、ごめんね。私が目を離したばかりに」

「いえ、エマ様は悪くありません。私がちゃんとしていればこんなことには……」

「ナタリー、だいじょーぶだから気にしないで」

「フェノン様……」


 ナタリーの頭を撫でているとナタリーの後ろにあったとある店がわたしの目に入った。



「おだんご~お団子いかがですか~?」



 そう、お団子屋さん。わたしの前世の好物。他にも羊羮、せんべい、あられ、すあま……和菓子は全部好き。



「フェノン様? もしかしてお団子ですか?」

「うん」

「フェノンは(はかま)といい、団子といい、和国のものが好きなのね。せっかくだから買って帰りましょう」

「うん!」



 そしてわたしたちは馬車に揺られて屋敷に帰り、ヒツジたちにお団子をあげた。

 ……あれ? そういえばどうして街まで行ったんだっけ?



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