第11話 ゴミクロニクル
後半部分に便器の座り方について説明する部分がありますのでご了承ください。
夕食を食べ終えたわたしはナタリーに勉強を教えてもらっている。
「この世界には4つの大陸があります。プラタナス大陸、ニレ大陸、ボダイジュ大陸、マロン大陸……それらの大陸はもともと1つでした。ではなぜ切り離されたんだと思います?」
それって地盤がどうとかそういう地学的なことじゃないの?
「そういえばフェノン様は知りませんでしたね。この世界の伝説を……」
「でんせつ?」
するとナタリーはこの世界の伝説について語り出した。
『今から数億年前、この世界がまだ生まれたばかりの頃。この世界は荒野で満たされていました。動物や植物はおろか、水や空気もないただ荒野があるだけの世界』
『しかし、この世界には他の世界にはないもので満ち溢れてました。それは神界にしか存在しないとされる魔力。そしてそこに魔力を求めて二人の神様が現れ、魔力を与えてくれたこの世界にお礼として水と空気を与えました』
『結果、この世界には多くの生物が誕生しました。そして生物たちは進化を繰り返し、世界に満ちた魔力を吸収して変異を起こしました。そうして産まれた初めての種族がハイエルフと呼ばれる現在、他のどの種族よりも最も多くの魔力を保有している種族です』
『ハイエルフはその多すぎた魔力を上手く操ることが出来ず、ほとんどの個体が魔力の暴走でその命を落としたのです。そこでハイエルフたちは少しずつ自らの魔力を減らすことで、その命を後世に残していったのでした』
『そうして多種多様な種族が増えたこの世界は平穏な世界へと変わっていったのです。
しかし、その平和はすぐに消えてしまったのです。種族間の便座の座り方問題が酷く激しいものになり、やがて戦争を引き起こしたのです』
『その様子を見ていた二人の神様は激怒プンプン丸になりました。そして二人の神様は大陸そのものを破壊してしまいました。残された種族は小さな島々に住んでいたたった一握りだけとなってしまい、私たちの住むことが出来る場所はほんの少しとなってしまいました』
『そんなとき、ある1人の男性が言いました。「大陸がないなら作ればいいナリ」と。するとその男性はなんとあり得ないことか海に向けて汚物を放出したではありませんか。そして、その男はすぐに捕らえられ、炙り焼きにされました』
『しかし、彼の着眼点は非常によかった。土地が無いなら作ればいい。ただ、作り方が非常に悪かっただけ。ならば魔法で作れるのではないかと残された全ての種族が団結して1つの大きな大陸を作りあげました』
「……その後、大陸は4つに分断され、現在私たちがこうして生きているんです。どうでしたか?」
……うん、前半部分は伝説っぽくてよかったかな? でも後半部分はさ、伝説なんだから上手く纏めておいてよ。というか便座の座り方問題とかで戦争しないでくれます?
こっちなんて便座も何もないまま教室で出した世界の勇者なんだからさ。そんなわたしから見れば便座の座り方ぐらいで争ってるんじゃねーよ。
「特に後半部分が素晴らしい伝説ですよね?」
「えっ……?」
どこが? ただ便座の座り方で戦争して大陸崩壊したから「大陸をうんちで作ろうぜ☆」って言って、炙られてるだけじゃん。
「ナタリー頭だいじょうぶ?」
「ダメです」
「……じゃあ仕方ないね」
「はい、仕方ないのです」
うん、頭がおかしいなら仕方ない。
「では最初の質問に戻ります。なぜ大陸は4つに別れたのでしょうか?」
どうせ便座のす━━━━
「答えは便座の座り方戦争の続きです」
せめて最後まで言わせろ。
「便座には主に5つの座り方があります。
1つ目はドアと向き合うオープンスタイル
2つ目はドアと反対向きでするベビースタイル
3つ目は便器の右半分しか使わないライトスタイル
4つ目は便器の左半分しか使わないレフトスタイル」
ここまでで一言言っていい? 汚ない。これ以上口を挟むな。
「そして5つ目はしゃがんでトイレをしながら他の人と会話をする『ニーハオトイレ』」
うん、それ地球にあるよね? わたし知ってるよ? ニーハオトイレ。
「ナタリー汚ない。もう寝るから話しかけないで」
「フェノン様もっと語りましょうよ。これからがクライマックスだというのに」
「もう寝るから!!」
ナタリーがめっちゃ話掛けてくるけど、頑張って無視して寝た。
土日は2本投稿します。次回の更新は午前5時です。




