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ファンタジー、恋愛。

パチスロ


けたたましいファンファーレの音で意識を取り戻した。


目を開け周りを見渡す。


「ここ何処だ?」


見渡した場所は眩い光に包まれた広い空間だった。


手をかざし目を細めて周りを見渡すと此方に駆けてくる女性が見える。


女性は俺の前に滑り込むようにして立ち止まり声をかけてきた。


「おめでとうございます。


あなたはその記憶を持ったまま転生できる権利を得ました」


「記憶を持ったまま転生って、俺死んだの?」


「はい、そうです。


死んだ記憶はございませんか?」


「え!?チョ、チョット待って」


記憶を探る。


あ! そうだ。


凍結した道を走っていたとき右側から突然車の前を横切ったカラスに驚いて、急ハンドルを切ると共にアクセルを踏み込んでしまいガードレールを突き破り海に転落したんだ。


そっか…………あれで死んだのか…………、当たり前だよな冬の海に落ちたら直ぐ死んじまうよな。


「思い出されたようですね」


「ああ…………思い出した、俺死んだんだな…………。


そういえばさっき記憶を持ったまま転生できる権利って言ったけど、何それ?」


「それはですね、今の記憶を持ったまま生まれ変わることができるのです。


生まれ変わったときに記憶している知識や経験を役立てる事ができるのです」


「へー」


彼女の言葉に耳を傾ける俺に彼女が手を振った途端意識を失う。






けたたましい騒音で目を覚ました。


目を開け周りを見渡す。


あれ? 此処見たことがあるな?


眩しい光に包まれた広い空間を見渡しながら朧気に頭に浮かんだ記憶を探る。


首を傾げ記憶を探っている俺の前にこれまた見覚えのある女性が滑り込んできた。


「おめでとうございます。


あなたはその記憶を持ったまま転生できる権利を得ました」


そう言われてこの場所と女の事を思い出す。


「記憶を持ったまま転生出来ても使う機会なんて無かったぞ!」


「へ? お会いした事ありましたっけ?」


「ああ、詳しく教えろ!」


「ええっと…………」


「記憶を持ったまま生まれ変われると聞いて転生を心待にしていたのに、生まれ変わったのはなんかの菌だぞ、菌!


細胞分裂で仲間を増やす菌だ!


どうやって知識を生かせって言うんだ!


その次も菌、その次の次も菌、5~600回菌に生まれ変わった後で生まれ変わったのはウサギだ。


生まれて3日程たったとき、巣穴に浸入してきた頭が10もある蛇に兄弟や母親と共に丸呑みにされたんだ。


何処で記憶を生かせって言うんだよ!」


「それは…………私のせいでは無いです…………」


「どういう事だよ?」


「あなたが前にここで目覚めたときの前世にパチスロって言う遊技機がありましたよね?」


「えっと…………ああ、あったな」


「それと同じなのです」


「え?」


「7が3つで大当たりだとして最初の7と次の7は結構出てくる確立が高いですけど、最後の7は殆ど出ない。


それと同じなのです。


記憶を持ったまま転生できる権利は最初の7。


記憶を生かせる世界に転生できる権利が2つ目の7。


そして最後の7は、その世界の生物界に属する生物の中でその知識を生かせる生物に生まれ変わる事が出来る権利。


何処の世界でもそうですけど、知識を生かせる生物なんてその世界に生息する生物の極僅かな物。


あなたが何度も転生した菌類が一番多い派閥。


掌に乗るくらいの容器に100億以上の菌が入っているくらいですから。


あなたが最後に転生したウサギなんかも食物連鎖の下の方の生物なので、結構数が多い方ですね。


という訳で最後の7を引く確率は、天文学的数字分の1くらいの確率なのです」


「それじゃ!


ここで記憶を持ったまま転生できる権利を得てもどうしよう無いじゃないか?」


「そんな事はありません。


最初の7と次の7を出していなければ最後に7を出しても大当たりにはなりませんから」


「確率が天文学的数字分の1何だろう? 何時大当たりが出るか分かったものじゃないだろうが!」


「最初に権利を得てから5~600回の転生でまた権利を得たって事は、あなたは運が良い方なんですよ。


天文学的数字回転生を繰り返しながら一度もここで目覚めた事が無い物達の方が多いのですから。


ですから今回も大当たりを引く事が出来なくても、あなたは何度も此処で目覚める事でしょう。


ですからあなたにはこう言っておきます。


また会いましょうとね」


そう言いながら手を振る。


手を振られ意識が無くなる寸前、生き残るために発達したウサギの耳は女の最後の呟きを捉えていた。


「もっとも、人間だった頃の記憶が何時まで残っているか分からないけど………………」




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