第8話 鍛冶修行(前編)
グランさんのもとで鍛冶修行です
「あら、今日はおひとりですか?」
「あ、女将さんおはようございます。今日から出発までの期間ですがグランさんに指導して貰えることになったので暫く単独行動なんです。」
「あらあら、弟子をまず取らないグランさんが珍しいわ。よっぽど気に入られたのかねぇ」
現在時刻は8時前工房開店の1時間前だがワクワクが止まらず俺は朝食を済ませ女将さんに見送られグランさんの工房へと向かった。
工房の前には腕組みをしたグランさんが見えた。
『小僧!!おそかったじゃねぇーか!!!』
開店前よりもだいぶ早くに来てるので遅い事は無いとは思うのだがそんなことを言うグランさんの元へと駆け足で向かった。
「おはようございます。遅くなりました。ご指導のほどよろしくお願いします」
「オゥ、さっそく工房へ行くのじゃ」
「はい!!」
「刀磨さんおはようございます。今日早いですね。まぁ旦那は更に早くて6時頃からソワソワして店の前を行ったり来たりしてたんですよ」
「カラさんおはようございます」
奥から出てきたカラさんがクスクスと笑いながらグランさんの今朝の行動を教えてくれた。
それを聞いてその姿と男にデレられてもなぁと思いながら俺も思わず微笑んだ。
「なぁぁ!?カラ!いらん事いってんじゃねぇー。今日は少し早く目が覚めたから少し体を動かしてただけじゃ!!さっさと行くぞ小僧!!!」
俺は照れているのであろうグランさんに促され慌てて奥の工房へと向かった。
「小僧よ。鍛冶職人になり何処を目指す。そこそこのモノが作れての生活か?それとも究極とも言えるようなモノを作れるよう目指すのか?どっちじゃ」
「俺は職人としてやっていく上で鍛冶職人としては、究極のモノを作れるような目指したいです」
「ほぅ心意気はわかった。なら鍛冶をする上で打つ前に必要な事を言うてみぃ」
「はい。まず作るものをイメージすること、それに必要な材料の選定することです」
「そうじゃ。なら昨日と同じようにカタナを作るとし、その場合ここにある2つの玉鋼どちらを使えば良いもんが作れるかのぅ?」
俺は渡された玉鋼を鑑定した。結果はどちらも品質Bと出ていた。つまりどちらを使っても同じだと推測された。
「同じ条件で打つのであればどちらも同じになるとおもいます。」
「ほぉ、どうしてそう思うのじゃ?」
「はい、2つの玉鋼は共に品質がBでしたので条件が同じなら同じモノが出来ると判断しました」
「なるほどのぅ、じゃが不正解じゃ。カタナを作るであれば右側の方が僅かではあるだろうが良いものが出来るのじゃ」
「なっ!?それはどういった理由でしょうか?どちらも同じ品質ですよ?」
「簡単な話じゃ、成分量的に右側の玉鋼の方がよりカタナに合うという事なだけじゃ」
それは職人ならではの経験からくる目利きとでもいうモノなのだろう。これも経験を積み重ねていくしか上達する術はなさそうだと思った。
「小僧、鍛冶屋をやっていく上でどの種を作っていく気じゃ?」
「材料の調達に冒険者として行こうと考えるのでとりあえずは自身が使える刀・剣・槍を優先的に作っていこうかと思っています。」
「ん?小僧ハンマー熟練は持っておらんのか?それとある程度慣れるまでは刀と片手剣だけにしておくんじゃな」
「あっはい了解です。スキルの方は持ってないです」
「ぬぅ・・・よし。ハンマーの使い方から教えるとしよう。鍛冶をする上でどうしてもある方がええからのぅ」
それから俺は3時間ほどハンマーの扱いの基本を徹底的に教え込まれ鍛冶スキルもあったお陰様か早くに【ハンマー熟練】LV1を獲得した。
どうやら経験を積むことによって新しいスキルも覚えれるようだ。
「なんとか様になったわい。後はしっかりと鍛練あるのみじゃ。次は鉱石の見極めと打ち方じゃな」
「あなたーその前にご飯にしましょう」
「もうそんな時間か・・・小僧、飯食ったらすぐ再開じゃ」
食事をとりにリビングに向かうとそこにはアズミとエステルがいた
「はわぁ~朝早くから来てたんですねぇ~」
「昨日もですけど鍛冶している時の集中力は凄いですね」
「あぁ、何か思うように出来なくて悔しいんだがその分どうにかしてやりたくて熱中しちまうんだ」
「ふふふ、刀磨くんを見てると若い頃のグランを見てるみたいだわ」
「ワシもまだ若いじゃろうに・・・。小僧飯を食ってさっさと行くぞ」
そう言いながらギラッとグランさんの鋭い眼光がこちらに突き刺さった。・・・・・カラさん勘弁して下さい。
「今日のお昼はエステルちゃんも手伝ってくれたのよ。しっかり食べてお昼からもガンバって!」
エステルとカラさんの作った料理はとても美味しかった。そういや、アズミは何しに来てたんだ?
俺は午後から鉱石の見極めに手間取り打ち方まで辿り着けず1日目を終えた。
2日目は、6時間ほど打ち方の基本を教え込まれスキルの知識との技量差を埋めていき、その後から鉄鉱石を鉄のインゴットにする作業をこなして2日目を終えた。今日も二人とも来てどうやらカラさんの手伝いをしてるようだった。
3日目は、グランさんに言われ鉄インゴットを使い自身にあった専用のハンマーと鉄敷を作った。グランさんには技術にハンマー、鉄敷と貰ってばっかりだ。
4日目は、玉鋼を製造に1日を費やした。この世界にあった技術も日本古来からのたたら製鉄そのものであった。出来上がったのは品質Cの玉鋼だった。今の俺の技術ではこれでも良くできた方だと思う。
あとグランさんが言ってたヒノデという国の成り立ちに日本人が関わっているのはほぼ間違いないだろう。グランさん話を聞く限りヒノデの人と俺は黒髪、黒目というこの世界では他にない同じ特徴があるみたいだ。
「小僧、明日が今回の修行最終日じゃ。まだ教えるべき事は山ほどあるがこの期間に学んだ事を生かして最初に作ったのと同じカタナをつくるんじゃ。
しっかりと成果を見せるんじゃぞ。
今日は早く帰り明日に備えておくんじゃ」
「グランさんわかりました。ありがとうございます」
俺は言われた通り早くに宿に戻り明日に備え頭の中でカタナを打つシミュレーションを何度かしてから眠りについた。
次話で鍛冶修行というかレッスン?が終わります。
因みにグランさんとカラさんの年齢はグランさん37,カラさん35歳です。