第7話 鍛冶屋のグラン
鍛冶屋に行きました。
「エステルおはよう!」
「トウマさんおはようございます」
「はわぁわぁ~ワタシの事は無視ですかぁ~新しい女見つかったらワタシは用なしですかぁ~?」
「おはようアズミ人聞きのわりぃ事言うのは即刻やめろ」
色々と誤解を招きかねない発言をするアズミについついクセで軽くアイアンクローをかましながら笑顔で対応した。
「あばばば、ぢょヴじにのりましたぁ。ずみませんでずぅ」
「な、仲がとてもヨロシイデスネ」
思いっきり誤解をしてそうなエステルが何故かカタコトになりつつ微妙な表情を浮かべていた。
「いや、アズミと知り合ったの昨日だからな」
そう考えてみればまだ昨日あったばかりなのである。被害者と加害者の関係ではあるが・・・・強いて言うなら俺の妹にサイズ感とか雰囲気がどことなく似ているのが要因だろうか?喋り方は全然違うけど
「アハハ、ソウナンデスネ。・・・ヒトメボレデスカ?・・・・ウラヤマシイナ」
誤解を加速させカタコトで何か言っていたが最後の方は声が小さすぎて俺には聞き取れなかった。
「あれだ。うちの妹になんかサイズ感が似ててついな」
色々とめんどくさくなってきた俺は、そう言うと少し立て直してきたのか表情が戻ってきたエステルとこめかみを擦りながらうぅ~うぅ~唸るアズミを置いて食堂をへと歩きだした。
朝から賑やかで楽しそうねぇと明らかに誤解をしてそうな女将さんに見送られ俺達は朝食をとりグランさんの所に向かうのだった。
「すみません。グランさんはいますか?女将さんの紹介で来ました」
俺達はグラン&カラ工房と書かかれた看板のある店に入りカウンターへ座る可愛らしい女の子に声を掛けた。
店に入った時に見た剣や槍に斧等様々な武器は、どれも値段はかなり張るが業物ばかりなようだった。どれも品質B+以上の物ばかりで中にはA+の物まであった。確かにかなりの腕前のようだ。
「あぁツキノさんの紹介ですか。へぇーなるほどなるほど。お兄さんなかなかいい感じですね」
そう言いながら小さな女の子は俺をマジマジと見てから頷き店の奥へと入っていった。 あなたーお客様よー と奥から聞こえる。えっ!?既に結婚しているの!?この世界って何歳から結婚できるの?と驚いていると奥からグランさんらしき人が現れた。あれ?小さい?
『ウオォイ、小僧ぅ!ワシの嫁に色目を使ってみぃハンマーの錆びにするけんのぅ』
奥から頭身より大きなハンマーを担ぎ髭を生やした小さな男が物騒な事を言いながらこちらを睨み付けていた。
どうやらドワーフの夫妻だったようです。
いや・・・眼がマジですね・・・怖いっす・・・・奥さん照れてないで止めてください・・・・。
「ほおぅ・・・ちぃーと線が細ぇがなかなか見込みのありそうな感じじゃのぅ。小僧ついてこぉい」
蛇に睨まれた蛙のような状態の俺は言われるがままグランさんの後をついていき、途中1度振り返るとオロオロするエステルと笑いを堪えてるアズミが見えたが はやくしろぉ という声に足早にグランさんの元へと向かった。
「小僧、今までに打ったことはあるか?」
「チシキハアリマスガ、マダアリマセン」
「ほじゃあ、何でもいい小僧の知識を最大限に活用して1本打ってみぃ。材料と道具はうちのを自由に使え。気合い入れてやるんじゃぞ」
「ハイ」
俺はグランさんに言われるがまま材料の選別から入り玉鋼を見つけこれを使いスキルとしてある知識もフル活用し刀を作ろうと思う。スキルがあるのできっと何とかなるはずだ。・・・・しかしそれは甘かったとしか言わざるを得なかった。
まず火床の温度も知識としてはあるが経験がないのでバラつきがでた。
そして、刀の真ん中に用いる柔らかい鋼の心鉄の鍛錬も外側に用いる硬い鋼の皮鉄の鍛錬も心鉄に皮鉄も巻き込み熱しつける造込み・刀身を形にする素延べ・火造りと呼ばれる形を作り上げる工程・その後形を整え焼入れ・刀身を研磨する鍛冶研ぎ。
そう何一つとっても自分がスキルによる知識として持っている理想からは程遠い拙い作業だった。
そうこの世界でも例えスキルがあったとしても、それは知識としてあるだけでそれをキチンと使いこなせるかはまた別の話だったのだ。
経験して腕を磨いていかなければ完全に宝の持ち腐れなのだ。
俺は目の前に出来ている2尺程の刀を見て落ち込んでいた。
『オイ、小僧!何を一丁前に落ち込んでるんじゃ』
「初めて打ったにしちゃあ上出来じゃ。それと確かこりゃぁカタナとかいったかのぅ?ヒガノの技法とはなかなかオモロイのぅ。鑑定出来んじゃろ?やってみぃ」
いつの間にか横に立っていたグランさんに言われ俺は自分が初めて打ったモノを鑑定した。
種類:小太刀
威力:E
耐久:E+
特殊:切れ+(微)
「小僧よ。造りだして思うように出来ない中でも集中力を切らさずようやったのぅ。いい鍛冶になりそうじゃ。ガッハッハッハ」
「ありがとうございます。とてもいい経験になりました」
『小僧、ワシの弟子になる気はねぇーか?』
俺は突然の話に驚き思考停止状態になっていた。
「お、そうじゃ。小僧名前は」
「・・・・・・桐島 刀磨といいます。刀を磨と書いて刀磨です。」
「ほう、やはり東の出か?刀磨いい名じゃ。・・・弟子入りについてはよく考えておくんじゃぞ」
「刀磨くん、大したモノは無いけどご飯を作ってあるから食べていきなさいな。もう遅いし泊まっていきますか?彼女達はお昼に買い物に行って戻って来たんだけど遅くなりそうだったし先に帰ってもらったわ」
「カラの飯は旨いからな食っていけ。じゃが惚れたらダメじゃぞ」
どうやら俺は夜遅くまで打っていたようだ。まったく気付かなかった。言われてみればお腹がペコペコだ。グランさんハンマー怖いっす・・・・
「あ、ありがとうございます。お言葉に甘えて食事を頂いて宿に戻ります」
俺はとても美味しい食事を頂いた後、宿屋へ戻るため名残惜しいが席をたった。
「グランさん、カラさん今日はありがとうございました。
グランさん弟子入りの件ですが、とても魅力的な話ですが今後も考えてまずフリドーラムへ行ってギルドへの入会などを済ませたりしてからゆっくり考えさせて下さい」
「ほぅ、フリドーラムへ行く日は決まっとるのか?」
「はい。5日後に来るキャラバンの出発に合わせて向かおうと考えてます」
「小僧、明日から時間があるときでええ。鍛冶のイロハを教えてやる。お前なら短期間でも上達するじゃろうて」
「ありがとうございます。明日からご指導のほどよろしくお願いします」
俺は明日から短い期間ではあるがグランさんから指導して貰えることになった。
宿に戻ったらさっそく二人に伝えて快く了解を貰い明日に備えて眠るのだった。
スキルだけじゃあダメみたいですね。
経験が必要なようです。