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一月九日 これまでのノベルズバグ




モードレッド「もしもし? 俺、お前なんだけど……」


ノア「履歴が消されてる……」


モードレッド「そんなことよりノアリス、次はいい加減成功させろ」


ノア「えっ……?」


モードレッド「自慢の自己犠牲をな」


モードレッド「メリーサ、お前は既にジューマに目をつけられている。……なるべくお前は、自己犠牲はするな」








マリア「これって……」



一月九日、放課後。アイス屋の店番のバイトをしながら、と言ってもこたつでみかん食ってるだけだけど。……まぁとにかく、店番をしながらこれまでの重要そうな発言をノートに書き出していると、同じく店番の日だったマリアさんに見られた。


アーサー「この中に……真犯人に繋がる証拠があるはずだっ!」


マリア「真犯人?」


アーサー「あ、いや、真犯人っていうか、ジューマ?」


マリア「例の……ゾンビのことね」


マリアさんもこたつに入った。


アーサー「ところで、マリアさんはどこ行ってたの?」


マリア「みかんの皮を取りに」


アーサー「みかんの……皮?」


僕はマリアさんが出してくれた湯飲みに口をつけた。ちょうどいい温かさだ。


マリア「天日干ししたのを煮てから、お茶にするの」


アーサー「へぇー」


マリア「今アーサー君が飲んでるそれも、みかんの皮茶なのだけど」


アーサー「へぇ?! ……味しないからお湯かと思った」


マリア「わざわざお湯は出さないと思うわ……。でも確かに、今日のはちょっと薄いかも」


いつもより味の薄いみかんの皮茶を、みかんを食べながら飲まされたってそりゃ、味わかんないよね。



マリア「…………」



アーサー「…………」



聞こえるのは、精々エアコンの音くらい。客の声も足音も、全く聞こえてこない。


マリア「お客さん来ないね」


アーサー「そうだねー」


マリア「ねぇアーサー君……」


書き出した発言を眺めていると、同じく僕のノートの方をぼんやりと見ていたマリアさんが、目を合わさずに言った。




マリア「あなたは……ずっと私のそばで、笑顔でいられる……?」






アーサー「ずっ……?!」



ずっと、私の、そばで……?!



アーサー「…………」



ずっと、私の、そばで……?! つまり僕に、ずっと、マリアさんの、そばにいてほしい……?! つまりつまりつまり!



マリア「……アーサー君?」




父さん、母さん、フラン。今日僕は生まれて初めて、コクられてしまったようです。



アーサー「…………」


えっ返事ってどうすればいいんですか生まれて初めてなんでよくわかんないんですけど。


アーサー「……」


ふつつかものですが、とか? いやなんかふつつかのつつでかみそう。えっどうしよう。




歌麿「……案ずるな、ドレイク氏は他人の設定に興味を持つような人間ではない」



戸を開け暖簾をくぐって店に入ってきたのは、なんと柏矢倉氏だった。


歌麿「故に他人のために無理をし、又その見返りを求めるようなことはない」


マリア「…………」


アーサー「柏矢倉氏、ど、どうしてここに……」


歌麿「汝がバイトを始めたと占いに出てな。しかし接客業とは、汝ほど向いてないものはいないだろうに」


アーサー「マリアさん、鏡持ってきてあげて」


歌麿「案ずるな、我は殿堂入り済みだ」


アーサー「殿堂入り済み」


柏矢倉氏もこたつに入ってみかんを取った。ていうか僕って、そんなに接客業向いてないかな。今さら辞めるつもりはないんだけど。


マリア「……歌麿君は私のこと、どこまで知ってるの?」


歌麿「汝が望むなら、汝すら知らぬ汝をここで晒そう」


……晒すって。いや、そういう意味じゃないことはわかってるんだけども。……なんだろう。このいかがわしさ、なんだろう。


アーサー「マリアさんは、柏矢倉氏に占ってもらったことは?」


マリアさんがみかんの皮茶を入れた湯飲みをもう一つ持ってきた。


マリア「まだ、無いわ」


アーサー「なるほど……。えっと、柏矢倉氏の占いはね、協力者が増えるほど正確性が増すんだ。彼一人が勝手に占っても何ていうか……アバウトな結果になってしまうらしいんだよ」



例えば、柏矢倉氏が誰かの命日を占ったとする。柏矢倉氏が一人で占っても、せいぜい何年後かまでが限界だ。それでも充分すごい気はするが、加えてその誰か、本人にも同じようにメダルを投げたりカードを引いたりしてもらうことで、何年後の何月かまで絞り込める。さらにその誰かの家族や友達にも同じようにしてもらうことで、何年後の何月何日かまで絞り込めることができるらしいのだ。僕はまだ命日を占ってもらったことはないが、それ以外の僕のことについてはほとんど占ってもらった気がする。もしかしたら僕のことについては、僕よりも柏矢倉氏の方が詳しいかもしれない。



歌麿「我が占いを疑うも疑わぬも汝次第だが、本来人間は他の人間に興味を持つものだ。故に人のために無理をし、又その見返りを求めてしまうこともある」


マリア「……」


歌麿「そしてノアリス・ワンダーマンも、人間である」


マリア「!」


アーサー「ノアさん……?」


歌麿「笑っていなければ泣き崩れてしまう者もいることは、汝ならよく理解しているだろう」


急にマリアさんが立ち上がった。明らかに動揺している。


マリア「……アーサー君、お店お願いしてもいい?」


アーサー「えっ、別にいいけど…………あっ!」


こたつから飛び出したマリアさんを、僕は咄嗟に呼び止めた。


アーサー「さ、さっきの返事なんだけど……!」


マリア「返事?」


アーサー「僕なんかで、いいのかなって……」


マリア「僕なんか……?」


アーサー「いや、だって……」




マリア「…………そっか。アーサー君を……」


アーサー「……マリアさん?」


まだ何か呟いていた気がしたが、僕には聞き取れなかった。暖簾をくぐって走り出す直前、暖簾の前で振り返ったマリアさんと目が合った。



マリア「ううん、なんでもないわ! だって私とあなたは、最高のカップルなんだもの!」






(僕が恋に落ちる音)






歌麿「大丈夫かドレイク氏」


アーサー「……死ぬかと思った」


僕はただ、その場で見送ることしかできなかった。あの弾ける笑顔の前には……僕は無力だ。








アーサー「それで、柏矢倉氏はどうしてここに? まさか本当に冷やかしに来ただけってことは無いだろうし」


僕はエアコンの設定温度を1度下げた。


歌麿「ドレイク氏、もう大丈夫なのか」


アーサー「油断すると口角上がりそうだけど、問題無いよ!」


歌麿「……そうか。では質問に答えるとしよう」


柏矢倉氏は湯飲みをこたつの上に置いて、部屋の奥の方を覗いた。


歌麿「ノアリスと、彼女の祖母は?」


アーサー「どこか出かけてるみたいだけど……二人には内緒ってこと?」


歌麿「不安を煽るだけだからな」


アーサー「……不安?」



歌麿「ノアリス・ワンダーマンに死相が出ている」



アーサー「えっ……」



ノアさんが、死ぬ……?



歌麿「ただし我が日課の簡易的かつ間接的な占いの結果だ。それに、我が明言したことで変わる運命もある」


そういえばさっき、唐突に僕のことを散々ディスってから、ノアさんが泣きそうみたいな話してたよね? それでその後マリアさんが店を飛び出した……ってことは。



アーサー「……ねぇ、さっきの話からすると、ノアさんの死因って……!」


歌麿「不明だ」


アーサー「えっ、そうなの? で、でも……」


歌麿「だからこそ、自殺だけは防がなければならない」


アーサー「……」


歌麿「その他は良い。だが自殺だけは、どんな手を使ってでも我々は回避しなければならなイ。彼女ヲコノ町カラ、追放シテデモナ(★‿★)」


アーサー「か、柏矢倉氏……?」


歌麿「……話が逸れたか。だがドレイク氏、全ては繋がっている。モードレッドと名乗るもう一人の汝、ジューマと名付けられたゾンビ、そしてこの夢見市という町とその住人。……全てに本気で向き合いその結末を見届ける覚悟、汝には有るか?」


アーサー「覚悟……」


歌麿「我々はいずれ悪として、正義に否定されなければならない。汝はそれを、許せるか?」


アーサー「…………」


許す……。そういえば、ノアさんには正月早々濡れ衣&タダ働きさせかけられたんだったっけ。黙って従ったマリアさんだって、同罪といえば同罪。……そして僕は、そのマリアさんとつきあおうとしている。…………でもせっかくのガールフレンドだしなー!



アーサー「……即答しなきゃダメ?」


歌麿「否、よく考えるといい」


柏矢倉氏はアイスクリームパーラーどらねこ特製のバウムクーヘンを買って、帰っていった。






本日発生したことで、特筆すべきことはこのくらいである。ひとまず一晩考えてみるとしよう。こんな時憧れのあの人なら、一体どうするだろうか……。

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