一月七日 ショボーンダマー( ´・ω・)y━。o 〇
一月七日、今日から新学期。しかし新学期早々、僕はある問題に直面した。それはこの学校に、僕が憧れのあの人演技をし始める以前の僕、つまり去年の僕をよく知っている人物がいたということである。ほとんどのクラスメイトは今の僕を見ても、アーサー君ってこんなキャラだったんだな……で済む。しかし、隣の席の柏矢倉氏だけは違った。なぜなら僕と彼、柏矢倉歌麿は契約友人、ライトノベルならぬライトフレンドだったからである。ライトフレンドがどんなものかというと、簡単に言えば、学校でのみ成り立つ最低限の友達関係。主な義務は二つ。一つ目は、どちらかが学校を休んだ時の授業内容や宿題の伝達。二つ目は、二人組作って〜と言い放たれた時の相手役である。尚、二人組作って〜と言われる可能性のある日に学校を欠席することは、契約上絶対に許されない。
話が逸れてしまったが、結局問題はすぐ解決した。柏矢倉氏が全てを悟り、不問にしてくれたからである。いや、悟るというよりも、占うが正しいか。実のところ彼の占いは必ず当たる。イメチェンした僕を見た彼は即座に占いを始め、全てを理解し、受け入れてくれたのだった。
アーサー「新年早々、我々ライトフレンドの力を見せる時が来たようだな柏矢倉氏!」
休み明けテスト終了後、先生から月末に一年生全員参加の百人一首大会があることが発表された。清明院高校では毎年行われている学校行事で、二人一組で参加するらしい。二人、一組である。
歌麿「左様。時は来た……」
柏矢倉氏のキャラは出会ったときからこんな感じである。柏矢倉歌麿というジャパニーズな名前からの金髪碧眼イケボイス。喋り方さえ普通ならモテモテだったと思う。因みにライトフレンドの契約を持ちかけてきたのは彼からで、僕と彼は三年間同じクラスになるという占いの結果を考慮してだそうだ。そして今、そのライトフレンドの真価が発揮される…………はずだった。
アーサー「男女混合、だと……?!」
なぜか今年から、だそうだ。
歌麿「やむを得ん」
柏矢倉氏はポケットからメダルとカードを取り出し、しばらくの間メダルを投げたりカードを引いたりしてからメダルとカードをポケットに戻した。
アーサー「柏矢倉氏、一体何を……?」
歌麿「汝と我が同盟を結ぶ者を占った」
アーサー「そ、そんなことが……!」
歌麿「左様、これは未来における決定事項。我が占いが……正義だ」
アーサー「……して、結果は?」
歌麿「我が同盟者は、メリーサ・フォンヴィジン」
知らない人だ。
アーサー「だ、誰だっけ?」
ツインテールの女子「あんたの前の席の、私なんだけど?!」
突然目の前の席に座っていたクラスメイトが振り返った。おでこが赤くなっている。どうやらテストの残り時間、机に伏せて寝ていたようだ。あ、因みに僕の席は窓際の一番後ろ、至高の立地だ。
歌麿「盗み聞きか、我が同盟者」
メリー「同盟者って……メリーで良いわよ、別に。ていうか、盗み聞きはぼっちの習性でしょ」
アーサー「……もしかして」
僕は既に柏矢倉氏に、もう一人の僕やゾンビのことも相談していた。
アーサー「ゾンビのこととかも、聞いてた?」
メリー「……鵜呑みにするほど、バカじゃないわよ」
あっそう。
アーサー「へっ、気取っちゃってさー! そういうやつが一番最初に食われちゃうんだもんねー!v( ̄Д ̄)v」
メリー「あ、あんたってそんなキャラだったのね……」
歌麿「…………」
アーサー「いーよいーよ! で、柏矢倉氏! 僕の同盟者はー?」
歌麿「汝の同盟者は、マテリア・グレイル」
え、マリアさん?!
ノア「お、アーサー! お前もう誰かと組んだ?」
ノアさんとマリアさんがやって来た。学校の制服姿で会うのは初めて……じゃないんだろうけど、なんか新鮮だ。
アーサー「ノアさん! ま、まだだよー!」
ノア「やっぱりな、じゃあマリアと組んでくれよ!」
さすが、占い通りだ。ていうか、やっぱりってなにさ。
マリア「ノ、ノア!」
ノア「ん、アーサーじゃ嫌って?」
アーサー「……ショボーンダマー( ´・ω・)y━。o 〇」
マリア「そ、そういうわけじゃ……」
歌麿「然り、これは決定事項である」
ちょうどチャイムが鳴り、柏矢倉氏はメリーさんと、僕はマリアさんと組むことになったところで、お昼休みとなった。
売店でパンを買ってから教室に戻る途中、階段でマリアさんに呼び止められた。
マリア「あ、あの、さっきはごめんなさい」
アーサー「あいや、こちらこそ組んでくれてありがとう!」
マリア「私も嬉しかったけど…………今回で、最後ね?」
アーサー「え?」
マリア「学校で話すのは、これで最後」
アーサー「……」
そう言って、マリアさんは去っていった。
アーサー「嫌われたのかな?」
メリー「嫌われたんでしょ」
教室に戻って昼ご飯を食べながら柏矢倉氏に相談したら、メリーさんが口を挟んできた。
アーサー「うっさいぼっちめし!」
歌麿「盗み聞きか、我が同盟者」
メリー「な、なによ! マリアのこと教えてあげようと思ったのに!」
アーサー「マリアさんのこと?」
メリー「そうよ! どうせよく知らないんでしょ?」
メリーさんは椅子を僕の席の方へ向け、お弁当箱と水筒を僕の机の上に置いた。
メリー「あの子、いじめられてるらしいわよ」
アーサー「い、いじめって……」
メリー「暴力とか直接的なやつじゃなくって、誰にいじめられたかわからないような間接的なやつらしいけど。多分あんたを突き放したのは、巻き込まないためよ」
アーサー「でも……なんで」
メリー「三回も苗字が変われば、あいつらにとっては充分すぎる理由になるわ」
アーサー「三回……?」
メリー「……ほんとに興味ないのね、他人に」
メリーさんによれば、マリアさんの苗字が最初に変わったのは入学してすぐ。次が梅雨に入るちょっと前。そして夏休み前には一度転校しこの学校を去ったらしいのだが、夏休みが明けてしばらくするとまた戻ってきて、また苗字が変わっていた、らしい。
アーサー「それほんとにこのクラスで起きた話?!」
メリー「あんたほんとにこのクラスの生徒?」
歌麿「案ずるな。彼女の転校した日、再度転校してきた日、どちらも汝は学校を欠席している」
アーサー「なるほど!」
メリー「にしたって……」
((鐘の音))
アーサー「っ!」
突如脳内に響く鐘の音。つまりはゾンビの襲来を告げる警報。そして僕は何となく、教室の窓の外を見た。
アーサー「…………」
髪の長い女性が、窓の外に張り付いていた。長すぎる前髪で目は見えない。それこそ井戸とかブラウン管テレビとかから出てきそうだが、着ているのはこの学校の制服のようだった。そしてボロボロの制服から見える肌には、赤いひびが入っている。まさしくそれは。
アーサー「ゾンビ……!?」
柏矢倉氏も、メリーさんも気づいた。
メリー「な、何あれ……」
((鐘の音))
また鐘の音が聞こえた。それと同時に、目の前のゾンビは歪んで消えた。僕にはゾンビのいた空間がまるで、波紋のように波打ったように見えた。
メリー「何、今の……?!」
クラスにいた生徒も、何人か目撃したようだった。教室の中がざわつき始め、見れなかった人の否定の言葉ばかりが大きくなっていく。その中で、柏矢倉氏の投げたメダルが僕の机の上に落ち、音を立て、そして止まった。
歌麿「あれが、ゾンビだ」
メリー「嘘……」
歌麿「我が占いが……正義だ」
今日僕は、ゾンビを見た。