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一月十日 凹ヘコ━━(´・ω・`)━━ン凹




ノア「その桜の木の下、死体が埋まってるらしいぞ」



一月十日、放課後。アイス屋の店番のバイトをしながら、と言っても相変わらずお客さんは来ないので庭の落ち葉掃きをしていたら、遅れて帰ってきたノアさんが僕の目の前の木を指差した。


アーサー「…………」


ノア「って冗談だよ、冗談!」


アーサー「あ、いや、そうじゃなくて……。ノアさんって、小説とか読まない系女子だと思ってたから」


ノア「……本物のファンに比べたら全然だろうけど。ていうかお前寒くないのかよ! 中入ろうぜ」


アーサー「いや……そろそろ何か仕事しとかないと、申し訳無いというか……」


せっかくの楽なバイト、クビにならないようがんばらなければ。


マリア「そう言うと思って、お客さん役を連れてきたわ!」


みーたん「え、私そのために連れてこられたの?」


どうやら今日は、三人で一緒に帰ってきたようだ。


マリア「……ほんとは今思いついたの」


みーたん「ていうかアーサー君ってここで働いてたんだ、知らなかった」


アーサー「そういえば言ってなかったっけ……」


モードレッド「ほぉ……面白いことになっているようだな」


アーサー「…………、え!」


いつの間にか、店の前のベンチにもう一人の僕、モードレッドが座っていた。


みーたん「っ……」


咄嗟にみーたんさんが僕の後ろに隠れた。ノアさんは鞄を投げ捨てると、僕が店の玄関先から持ってきていた竹箒を手に取った。


ノア「出たなモードレッド……」


すると今度はマリアさんが、ノアさんの前に出て両手を広げた。


ノア「マリア......?」


モードレッド「......」


マリア「……あなたが、もう一人のアーサー君なの?」


そういえばまだ、マリアさんはあいつに会ったことがなかったのか。するとモードレッドが、肩を回しながらゆっくりと立ち上がった。


モードレッド「……だったら?」


マリア「……」


ノア「よせマリア! そいつは……」


マリア「うん。......だから、お願い。もうノアを、みーたんを……、苦しめないで」


モードレッド「……」


マリア「お願い……!」




(風の音)



モードレッド「そこのノアリスが、自己犠牲を成功させてくれればいいだけなんだがな」


ノア「て、ていうかその、自己犠牲を成功させるって何なんだよ」


モードレッド「いやお前、得意なんだろ? そういうの……」


ノア「え?」


モードレッド「今朝もわざわざ早起きして隠してきたんじゃないのか、下駄箱の画鋲とか……」


マリア「!」


ノアさんとマリアさんの顔が、全く同じように強張った。


ノア「……それ以上喋るな」


モードレッド「……解決してやる気の無いヤツが、善人ぶるか?」


ノア「解決? 死んだ心は生き返らない」


モードレッド「確かになぁ。……だったら別に、隠れて隠す必要は無いだろ」


ノア「そ、それは……」


モードレッド「…………」


マリア「……ノア、もういいの。今までありがとう」


マリアさんが、笑っているような顔を見せた。


ノア「マリア、違うんだ! もう最近は画鋲とかは……」


マリア「これからは、アーサー君が助けてくれるから」




(風の音)



ノア「アーサーが……?」


アーサー「……え、あ、うん!」


ノア「…………そう、なのか」


マリア「それから、今度アーサー君の歓迎会をしましょう? 私、どこかに遊びに行きたいの!」


ノア「……」


マリア「みーたんも、いいでしょ?」


みーたん「え、私もいいの……?」


マリア「うん!」




(風の音)



ノア「……そうだな! よしアーサー! 楽しみにしとけよー!」


アーサー「……あ、うん!」


モードレッドが呆れたように背を向けた。どうやら、今日のところも襲われずに済みそうだ。


モードレッド「……そうだった。アーサー、一昨日聞き忘れたんだがお前............ゾンビを見たらしいな?」


マリア「えっ?!」


アーサー「そういえば言ってなかったっけ……」


これで柏矢倉氏以外の全員が、モードレッドとは会ったことになった。しかしゾンビを見たことがあるのは、まだ柏矢倉氏とメリーさんと、僕だけか。


モードレッド「それで、目の色は見たか?」


アーサー「……目?」


モードレッド「見てないのか、ならいい。……しかし報告通りなら、人目につかないところで襲うはずなんだがな」


アーサー「あ、ちょっと待って! これだけ聞かせて!」


立ち去りかけたモードレッドを慌てて呼び止めた。せっかくだ。僕がずっと引っかかっていたことを聞いておこう。



アーサー「モードレッド。一月三日、僕とノアさんを襲った時、僕とノアさんのケータイの履歴、削除した?」



モードレッド「あ? ケータイ? 何のことだ……?」



アーサー「…………いや、何でもない」



モードレッドは去っていった。僕にはモードレッドが嘘をついているようには、見えなかった。だとしたら、着信履歴を消したのは……。



みーたん「……ほんとに私もいいの?」


ノア「みーたんはアーサーの歓迎会なんか行きたくないってさ」


アーサー「凹ヘコ━━(´・ω・`)━━ン凹」



…………消したのは!



みーたん「そ、そういうわけじゃなくて……!」


ノア「じゃあ決まりだな!」


マリア「うん……!」






この中に、裏切り者がいる……!?

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