第7話 今世紀最大のピンチな件
リリナが繰り出した一撃は、さっきのウィンディゼルの風圧と大差がなかった。
「ふん。お前も随分成長したもんだな。向こうの親父も安心してるんじゃないか?」
「知ったような口きかないで!!」
またもや激しい一撃を繰り出す。さっきにまして風圧が強くなった。
「安心しな。お前も親父と一緒にあわせてやるからよ。“風玉(破)” リリナ腹部あたりに風の塊のようなものが発生する。リリナはたちまち吹っ飛んだ。しかし、闘技「鳥類」を使用しているので、軌道を変えることができる。なんとか体制を取り戻し、スピードを緩める。《生物性能上昇[俊足]解除》
「絶対あんたを倒してやるわ。」
闘技 [アフリカゾウスキル] リリナの四肢が紅い光に包まれ、胴体は蒼い光に包まれた。
《生物性能上昇 [怪力]》
「これが私の最強怪力防御状態。足は早くないけどね。」
「ふむ。世界最強の生物とも言われるアフリカゾウの闘技を使用したか。これは私にも容易に動かせんな。」
「しかも近くには重大生命エネルギーポンプ。巨大竜巻を起こそうもんなら、ポンプが壊れてあんたの居場所はなくなるでしょうね。」
「ならば場所を変えるまでだ。 細く巨大な竜巻[セィンストロングトルネード] 位置転移[ポジション マタスティアジィス]」
「魔法解除[マジックキャンセル] あんたの細工くらい余裕で解除できるわ。」
しかしあくまで解除できたのは位置転移のみ。一部分に一気に凝縮した竜巻の塊が、リリナに高速で向かってくる。
「ふん。これくらい。」
リリナは‘バッ’ とジャンプする。
「追跡[チェイス] 無駄だ。」
ウィンディゼルがその竜巻を睨むと、竜巻は薄い紫の光に包まれた。その瞬間、ジャンプしたリリナを襲った。
リリナの背中に直撃。【ドパァン!!!】という激しい音と主に、リリナは吹っ飛ぶ。体を包んでいた紅や蒼の光が点滅し、フッと消えて行く。
「さすがのアフリカゾウちゃんも、自然の強大な力に叶わなかったわけか。悲しいねぇ。で、お前はなんなの?」
ウィンディゼルが俺の方を睨み、質問してきた。だが緊張と畏怖で口が開かない。汗しか出てこなかった。
「・・・・。まあいいや。お前も運が悪い。普通の高校生だろうが、巻き込まれてしまったんだろ。口外しないというなら、逃がしてやるけども。」
・・・そうだ。俺はただ巻き込まれただけ。あいつがどうなろうと、知ったこっちゃない。家も壊され、余分に歩かされ、恐怖心も煽られ、、、。何もいいことされてないじゃないか。むしろ倒されてくれてせいぜいする。
「まあこいつは殺すがな。じゃああっちの世界で親父とでも戯れてな。」
リリナはピクリともしない。
「じゃあな。」
ウィンディゼルが竜巻に囲まれたその腕でリリナに向かって殴ろうとする。今拳を振り下ろした。
ああ。そうだ。それでいい。あいつも口外しないというなら逃がしてやると言っているんだ。早く終えて、帰って、家が直るまでは地獄生活になりそうだが、死ぬよりはマシだ。さあ。やってくれ。
「そんなことになる訳、いかねぇじゃん。」俺はぼそりと呟いた。
【【ドパァン!!!】】
気がつくと、そこには倒れたウィンディゼルがいて、俺はリリナを抱えて立っていた。