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人間から種族:超美少女へ転生し勝ち組人生目指す  作者: 里芋御膳
第七章 幼女神さまの国と科学技術の国
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第九十七話 新生スピーダーの初戦闘

 眼下に広がる広大な大地。

 行けども行けども境界の見えない、無限なのかと錯覚してしまう荒野を、東へ東へと突き進む。


「ほんとーに、なーんにも無いねー」


 窓から覗いて見える範囲には、街はおろか木の一本も視界に入ってこない。


「そんなに珍しいかな? 王都に行く時にも通ったじゃないか」


 スピーダーの操縦をしながら、リンがこちらのつぶやきに反応した。


「前は地上を走ってたし、屋根が無い頃だったからスリルで周りが良く分からなかったというか……」


「あと少しで国境線に差し掛かるよ」


「え? もう着くの?」


 あまりに早いため、アリスが驚きの声を上げる。

 さすがは最高時速二千キロという超加速だ。そしてそれだけの速度を出して飛んでいるのに、乗っているわたしらにはまったくGが掛からない。


 今わたしたちは改良版スピーダーに乗って、ファルプス・ゲイルの国土を真東に向けて飛んでいっているところである。

 目指すはバーゼル領となっている元アース国。元エシュリーの国だったところだ。


「リンよ、ほんとうにこれ一機だけで大丈夫なのか?」


 いよいよ敵国に突入というところで、エシュリーがリンに念を押す。

 今回の戦いは連合国での総攻撃となるのだが、バーゼルの空中戦艦はヤバすぎる相手なので、わたしら――いやリンが、露払いを買って出たのだ。


「だーいじょうぶ! 前に実物を見ているし、勝算は十分にあるって!」


「みんなと行っても良かったんじゃない? 今更だけど」


「それだと被害が凄いことになるよ?」


 わたしの再三の念押しにも、結局この回答である。

 これから大群を相手に戦うっていうのに嬉しそうなリンの顔を見てふと思う。


「すっごい兵器作ったから試して見たくてしょうがないんだ」


「……あー、まあ……それも……ある、かな?」


「ちょっとーリンー!」


 アリスが突然にリンに飛び付き肩を揺らす。


「ちょっ!? アリス危ないって!」


 窓の景色を見るに、いま相当に揺れたようだけど、内部の安定装置のおかげで何も感じない。


「アリスだって、試したいでしょ? その神剣」


 リンがアリスの持ってきている剣を指差す。

 今回の戦のために借りてきた神剣リーシェインだ。


「ううっ、確かにそうだけど……リンみたく単独で突っ込んでまで試したいとは思わなかったもん」


「ほらほらエシュリー、アリスが困ってるし元気付けてあげて」


 横に座っているエシュリーをアリスの方に押し付けて、元気付けさせようと試みてみる。

 困ったときの神頼みだ。


「なんでわたしが!? えーっと……おほん。まーアリス、わたしとモナカもいるし、大丈夫だ!」


「そっかー、モナカが守ってくれるんだー」


「わたしに話しが回ってきたー!? いやまあ、守るけどね」


「ありがとー!」


 リンを掴んでいた手を離し、今度はわたしに抱き付いてきた。

 流れ的にそのまま抱きしめて、頭を撫でてやる。

 それで満足したのか、アリスが満面の笑みをこちらに向けてきた。すごく可愛い。


「さあ! 国境線を抜けるよ!」


 リンの声に前方を見ると、見慣れた赤紫の壁が迫ってきていた。

 そういえば、ここが初めて超えた国境だったんだっけ。

 懐かしい思い出に浸る間もなく、一瞬で国境線を越えてしまっていた。情緒も何もあったものではない。




「おおっ! モナカ、憶えているか! あの街が見えてきたぞ!」


 エシュリーが眼下に見えた街を指差す。


「どれどれ?」


「あああっ、おそーい! もう過ぎちゃったよ」


 ちょっと頬を膨らませて抗議してくるエシュリー。


「仕方ないじゃない、時速二千キロじゃあ一瞬で通り過ぎちゃうんだし」


 つまり一秒で五百メートル以上進んじゃうわけだ。

 指を差した瞬間に、もう過ぎている。


「何が見えたの?」


「初めて行った街だよ」


「おおおっ! 懐かしい! ニャンコと会った街だよね」


 エシュリーがコクコク頷く。


「ニャンコと会った街? この辺りで会ったんだ」


 アリスが興味深げに聞いてくる。

 その頃はリンもアリスもいなかったしね。

 目標地点に着くまで、ちょっと昔話をしてみようかな。




「もうすぐ元アース国王都に着くよー」


「もう!? まだ十分も経ってないし!」


 さすがに早い。ろくに昔話出来なかったな。

 元アース国領内のバーゼルの主力部隊は、元首都だった街とバーゼルとをつなぐ港町、その二か所に配備されているらしいのだ。

 テルトからの情報と、エシュリーの索敵魔法から分かったことだ。

 まずは、一番近い首都を叩く!


「向こうも気付いたようだな」


 エシュリーが言う通り、首都から二隻の空中戦艦と、それを取り巻く数十隻の戦闘機が飛び上がっていた。臨戦態勢に入っているのだろう。

 それ以外に、城壁に数十機のインパルス砲台も見える。


「あれ全部相手に出来るの?」


「出来るけど、街が真下にあるんじゃあ被害が出ちゃうよね」


 バーゼルの空中艦隊はその場で静止しており、こちらの様子を伺っているように見える。

 向こうもちょっと反応に困っているのかも。

 見たことのない飛行物体が、たったの一機で近付いてきていたのだから。

 今はこちらも静止している。にらみ合いの状態だ。


「動かないなー」


 リンがぼやきながら何やら操作する。

 何の前触れも無くスピーダー後方から十発のミサイルが打ち出される。

 白い煙の尾を伸ばし、それらは前方の艦隊に向け飛翔。

 高速で撃ち出されたそれらは、空中戦艦や戦闘機に着弾した。


「ちょっ! リン、ここだと被害がーって言ってたじゃない!」


「ちょっとしたあいさつだよ。ほら、向こうが飛んできてくれてる!」


 リンが喜びながら――何が面白いんだろう? ――スピーダーを後退させる。

 それを追ってくる戦闘機群。

 空中戦艦は待機したままだ。


「どうするの?」


「わたしに任せて!」


 言うが早いか、スピーダーが高速で右に旋回。

 そのまま回り込んで戦闘機群の背後を取る。

 速過ぎたせいか、向こうはこちらに即座に反応できていない。


「主砲、充填準備完了――発射!」


 スピーダーの前方に取り付けられた、輝く球体から魔力弾みたいなものが飛んで行く。

 それが一機の戦闘機に着弾した瞬間、巨大な光の閃光へと膨れ上がる!


「何あの巨大な火の玉!?」


 思わず驚きが口からこぼれ出る。

 街を丸ごと飲み込めそうな巨大な光球が消えた場所には、何も残っていなかった。


「やった!」


「あれを一撃で!?」


 バーゼルの戦闘機は特殊装甲のせいで物凄く硬いのだ。

 わたしやテルトの魔法でも二、三発撃ち込まないとならない。

 それをあの広範囲で一撃とは……


「神器砲。シシュポスのかけらを一撃で使い切る魔力砲台だよ。近い奴で前に有翼人ルーファレティウスの部隊を一撃で吹き飛ばしたことがあってね、同じ威力になるかなーと思ってたんだ」


「……すっごい」


 リンの解説が聞こえていたのかい無いのか、アリスも茫然自失といった表情だ。


「リンよ、シシュポスのかけらを使い切ると言ったが、あれ一発だけしか撃てないのか?」


「まさかまさか、何百ってストックを備えてあるからまだまだ撃てるよー!」


「ストックがあるとはいえ……神器を撃つごとに消耗するって、かなり贅沢な兵器だね」


「最終決戦ぽいし、大盤振る舞いしてもいいと思ったんだよ。っと、残りのやつらが来る!」


 無数のレーザーやインパルス砲がスピーダーの機体に直撃する。

 空中戦艦や、残りの戦闘機が一斉に向かってきたのだ。


「直撃受けてるけど大丈夫!?」


「外装そのものはオリハルコン性なのは変わらないけど、その上から魔力障壁をかけてるから」


 慌てているわたしたちとは反対に、リンはいたって落ち着いている。


「魔力障壁って、魔法のやつと同じ?」


 わたしやエシュリーなんかが使う、魔法のバリアかな?


「これも神器のエネルギーを流して壁にしているんだ。レーザー砲は通じないし、インパルス砲も空中戦艦の主砲レベルでないと効かない。しかもそれでも――」


 スピーダーの外が真っ白な光で覆われた。

 恐らくインパルス砲の直撃を受けたのだろう。


「ちょっと傷付いても、バリアのエネルギーを流用して再生するんだ」


「再生?」


 窓からだと良く見えないけど、傷が治るからダメージが蓄積しないということかな?


「機械が再生するの?」


 アリスが半信半疑な質問をリンに投げかける。


「機械じゃないよ、魔道具アーティファクトだよ。魔力で動く疑似生命体みたいなもの――前に師匠の家で見たユーカリアさんに使われている技術の応用だよ!」


 リンが解説をしている間も、スピーダーは沢山の攻撃に晒されている。

 それでもまるでビクともしない。

 下手な神器より強力じゃないか? これ。


「うむ、攻撃も防御も完ぺきか、ならやっちゃえ!」


 エシュリーがリンを焚きつける。


「おう! やっちゃうぞー!」


 スピーダーが急加速し、上空へと飛び上がる。

 それを追ってくる敵艦隊。

 スピーダーは百八十度向きを変え、その一団へと主砲を向ける。


「本日二回目の――ファイヤー!」


 リンの吠え声と共に放たれた魔力球が、艦隊を丸ごと飲み込む。

 戦闘機はそれで一掃されたが、二隻の空中戦艦はあちこちから火をあげているも、まだ健在である。


「さすがにあれは一撃じゃあ無理か」


 リンが操作パネルに打ち込んでいく。

 スピーダーの後方からミサイルが飛んで行き、両側側面からレーザーの様な魔力弾が無数に飛んで行く。

 砲座の向きは自由に変えられるのか、空中戦艦の周りを回りながら攻撃を続ける。

 移動速度がやたら速いので、向こうの攻撃はこちらに当たっていない。

 まあ、当たってもノーダメージなんだろうけど……


「なんか火が止んでるよ!?」


 アリスが驚きの声を上げる。


「あちゃー、向こうも自己修復能力あるのか」


「あっちは正真正銘機械なのに、不思議だねー」


「恐らく星界人のテクノロジーを奪って取り込んだ結果だろう」


「星界人?」


 前に聞いたけど、あんまり覚えて無いや。


「ナノテクノロジーが極端に発達した技術大国だ」


「ナノテクかー」


 反芻はんすうして見たけど、ナノテクって良く分からないな。

 まあ修復しちゃう技術って憶えてけばいいだろう。


「ええい、うっとおしい!」


 リンが再度主砲を撃ち出した。




 結構時間がかかったが、こちらはダメージを受けないんだから、勝つわけだ。

 落下していく二隻の空中戦艦を眺めながら、勝利の余韻をかみしめる。


「お疲れ様」


 アリスがリンの肩を軽く叩いている。


「疲れたー。意外と粘るんだもん」


「再生能力のある巨大戦艦相手では、あんなものであろう」


 エシュリーはそう言ってくれているが、ともかくリンはしんどかっただろう。

 何せ十発も主砲を撃ち込まなくちゃあならなかったんだし。


「リンお疲れ様。次は港町だね」


「うーん、火力もっと上げとくわ」


 首都でさらに強化する気なのか。

 次はバーゼルへ向かうための玄関口。そこが終ったらいよいよ敵の本拠地だ。

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