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人間から種族:超美少女へ転生し勝ち組人生目指す  作者: 里芋御膳
第七章 幼女神さまの国と科学技術の国
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第九十五話 脳の内部の怪物

 テルトを担いで屋敷に戻ってみると、キャロルさんがキルシュを泣かしている所だった。


「おや早かったね」


「ふえええええっ! リン~っ!」


 キルシュが泣きながらリンに向かって走って行く。

 その顔はすみでラクガキされまくっていた。


「っと、何があったの?」


 キルシュを抱き止めたリンがそう問いただす。


「うぇっ、……キ、キャロルさんと……ゲームしてて……」


 流す涙ですみが溶けだして、実に悲惨な顔になっておる。

 キルシュが言うように、テーブルにチェスの様な戦略ゲームのボードが置かれていた。


「普通にゲームしてもつまらないので、負けた方に筆でラクガキをするとしたのだ」


 キャロルさんがこまを手の中でもてあそびながら、つまらなそうに言う。


「まさか二十連勝してしまうとは……我ながら自分の才能が恐ろしい――」


「ふえええええっ……」


「遊んでもらえてよかったねーキルシュ」


 リンがやさしくキルシュの頭を撫でるが、キルシュ本人にその手を払われてしまう。


「良くないわ! 顔に描くところ無くなったら次は体だと脅迫されたのよ!」


「うへー、キャロルさん鬼畜ですね」


「鬼畜ではない。モナカよ、勝負とは時として非常なものなのだ」


「おそろしいわー」


「いやモナカ、師匠はただ単に女の子の体にいたずらしたいだけだって」


 リンのあきれ声に、キャロルさんは無駄に偉そうに腕を組み、大きくうなずく。


「別の意味で恐ろしいわー」


「もー、そんなことしてる場合じゃあないでしょ! キルシュはお風呂行ってきなさい!」


 わたしらの掛け合いにしびれを切らしたか、アリスがテキパキと指示を出す。

 キルシュはそれに従い、部屋を出ていく。


「わたしも一緒に……」


「キャロルさんは汚れて無いでしょ!」


 キルシュに付いて行こうとするキャロルさんの襟首をつかむ。


「やだーモナカちゃん嫉妬?」


「ちがわい!」




 みんなでキャロルさんの自室へ。

 ベッドにテルトを寝かしつけ、キャロルさんに見てもらう。


「どうかな?」


 難しい顔をしているキャロルさんに恐る恐る聞いてみる。

 キャロルさんはいろんなデータの映し出されている手元の端末とにらめっこ中。

 テルトの周囲をキャロルさんが取り出した浮遊型診断機が飛び回り、その結果が映し出されている。


「脳に異物があるわ。それが信号を発信して、宿主を洗脳しているみたいね」


「異物? 師匠それってどんなものか分かります? 取り出せますか?」


 リンも気になってしょうがないのか、自身の師匠に問う。


「うーん……魔法的でも生物的でもない……何かの機械っぽいというか……よし!」


 キャロルさんは何かを思い付いたのか、自分のカバンを漁り出す。

 リンのポーチと同じく、いくらでもモノが入る無限バッグだ。

 みんなでキャロルさんに注目していると、目当てのものが見つかったのか、取り出したものを高々と持ち上げわたしたちに見せびらかす。

 医療器具か何かを取り出すのかと思ったんだけど、それはどう見ても――銃だった。


「じゃーん! 高性能転移銃!」


「えっと……危険じゃないんですか? それ……」


 アリスがキャロルさんに疑いの目を向ける。

 その視線を気にした様子もないキャロルさんが、おもむろにその銃口を寝ているテルトの頭に向けてしまう。


「ちょっ!?」


 危機感を覚え、キャロルさんを羽交い絞めにする。


「ちょっとモナカちゃん! こんなみんなのいる前で大胆ね! けどわたしはそういうのも嫌いじゃあ無いわよ」


「キャロルさん何言ってるんですか!」


「あーけど、リンが嫉妬しちゃうかもー」


 構って欲しいのかチラリチラリとリンの方に何度も視線を向けている。

 すごくうざいわー。


「嫉妬しませんって! それより、その銃みたいなのは何か説明してくださいよ」


「ああもー、リンちゃんいつもつれないわー」


 キャロルさんはそのまま、あからさまな泣きまねをし出す。


「それもいいですって!」


「くすん」


 リンに怒鳴られ、ようやっとキャロルさんは真面目モードに切り替わった。


「えっとねー、この銃は……魔力生体を相手に撃ち込む銃よ」


「魔力生体?」


 聞いたことも無い言葉に、思わず聞き返す。


「肉体を持たない魔力で出来た人形だよ。そいつらを外から操作して内部の異物を破壊するの」


「へーそうなんだ」


 昔テレビで見たナノマシンによる治療風景みたいだな。


「そ、分かったら離してもらえるとお姉さん嬉しいかなー」


「おお、これはすみません」


 言われて拘束を解く。


「さて、改めて……」


 キャロルさんが再び銃口をテルトに向ける。


「シュート!」


 キャロルさんが引き金を引くと、銃身から青く輝く何かがテルトの中へと飛んで行った。

 見た目には特にテルトに変化は見られない。


「見た目だと、ほとんど影響が分からないですね」


 興味津々に見ていたニャンコが、そんな感想を漏らす。


「さて、あとはこの端末で操作するだけ」


 キャロルさんが持っている端末の画面に、人体の内部のような画像が映し出される。

 テルトの内部映像だろう。

 可愛らしい幼女とはいえ、この映像は普通にキモイ。

 アリスはその映像を見て怖くなったか、わたしの腕に抱き付く。その手にわたしのそれを重ねてあげ落ち着いてもらう。


「あ、見えてきましたね!」


 リンが言うように、脳の合間に何やら黒い物体が見えてきた。

 甲殻類こうかくるいを思わせるフォルムの怪物。それはなんとなく見覚えがあった。


「前に北の国シャルハルバナルの港町で戦ったやつに似ているな!」


 エシュリーがわたしの背中に飛び乗り、画面をのぞき込む。


「バーゼルの怪物だっけ? あいつらの仕業?」


 見ている画面内で、その怪物がこちらに気付いたみたい。両腕を異常に伸ばしかぎ爪で攻撃してくる。


「師匠! こっちに攻撃手段ってありますか!」


 リンが興奮し、キャロルさんの両肩を思い切り揺さぶる。


「ちょっ、リン! 頭がシェイクされるううう!」


 二人がそんなことをしている間も怪物の攻撃は止まず、魔法生体にかなりのダメージがいったか、画面がブレる。


「キャロルよ、魔法生体は魔法的な生き物なのだな?」


「え? そ、そうだよエシュリーちゃん」


「ならば!」


 エシュリーが呪文を唱える。


「【憑依ミュイナル】!」


 呪文と同時にエシュリーの姿が消える。


「あれ? エシュリーさんはどちらに行かれたのでしょう?」


「さっきのは憑依の魔法だから、たぶんあっちじゃない?」


 疑問を口にするニャンコに、端末の画面を指し示す。


「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃっ!」


 端末からエシュリーの声が聞こえ、魔法生体の腕かな? 青い煙の塊のようなものが脳に張り付く怪物をフルボッコしていた。

 アッとゆう間にやられて粉々になり消えていく怪物。


「ビクトリー!」


 聞こえてくる嬉しそうなエシュリーの声。


「なんか……めちゃくちゃだね」


 リンのあきれたような声。うん、わたしもちょっとそう思う。




「ふー暴れた暴れた」


 元に戻って、やけに清々しい笑顔を浮かべるエシュリー。


「はいはい、お疲れ様」


「これで、テルトは戻るかな?」


「戻るはずよ」


 心配するアリスに、キャロルさんがそう返す。


「テルト、大丈夫? 起きれる?」


 ニャンコがさっきから一生懸命テルトの頬を撫でながら必死に声をかけていた。


「……う、うみゃ……えっ……」


 ニャンコの気持ちが通じたか、テルトがうっすらと目を開く。


「テルトーっ!」


 ニャンコがそのテルトに抱き付く。


「おはようテルト」


 リンも優しく声をかける。


「わたしたちが分かる?」


「大丈夫? 具合は悪くない?」


 声をかけるわたしたちをぼーっと見ていたテルトが、意識がハッキリして来たのか口を動かす。


「えっと……ニャンコに、モナカにリンに、アリス……エシュリー……えっと……」


「初めましてテルトちゃん。わたしは偉大なる魔法技師アーティファクターキャロルお姉さんだよ」


「えっと……キャロルさん? 初めまして、テルトです……」


 洗脳が解けたばかりだからだろうか、めっちゃしおらしくて可愛過ぎる。


「ね、ねえモナカちゃん……テルトちゃんを助けたお礼に、抱き付いても合法だよね?」


「よこしまな行動はうちの国では御法度ですよ」


 キャロルさんも可愛いと思ったのか言い出した提案を、アリスがバッサリと切り捨てる。


「テルトよ、意識が戻ったばかりで悪いが、どこまで状況を理解している?」


 エシュリーがテルトに問いかける。


「えっと……あっ! そうだ! ニャンコ! みんな! 大変なんだ!」


 完全に元気が戻ったようで、テルトの声に勢いが出てきた。


「大変?」


「そそ! 幻魔の世界がバーゼルに打ち負かされちゃった!」


「なんとっ!?」


 エシュリーが盛大に驚く。


「それだけじゃなく、わたしたちを使って巨人族まで制圧しちゃったんだ! 次はファルプス・ゲイルかエシュリーンが危ないよ!」


「バーゼルは本格的に世界制覇をしようとしてきているのね」


 アリスもみんなも深刻そうな表情を浮かべる中、エシュリーが不気味に笑い出した。


「ふふふふっ、バーゼルめ……返り討ちにしてやる。今こそ復讐だあああっ!」


「ちょっとは落ち着け!」


 テンションマックス状態のエシュリーの頭を軽く小突く。


「うぬぬぬ、しかしこれくらいではめげぬ!」


「めげとけ」


 もう一回はたく。


「あううううっ」


「ともあれ、今ちょうど各国の代表が来ているし、丁度いいわ。その場で話し合いましょう!」


「アリス、お願い」


 エシュリーンと連合軍対バーゼルの戦争が始まりそうだ。

リアルの方でバタバタしていて、長期にわたり更新できず申し訳ない。

最終話までもう少し、書き切るよう頑張っていきます。

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