表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/107

第七十八話 モテるってツラいね

「お疲れー!」


 リンが、元裸の女の子を連れてきた。

 今は、Tシャツにスカート、ソックスに革靴と、ラフではあるがちゃんと服を着ている。見覚えのある服だ。リンのを貸してあげてたんだろう。


「おお、そっちもお疲れー」


「大変だったわよー。リンが押さえつけている間に、わたしが服を着せてあげたの」


 アリスがいかにも大変であったかのように、ため息をつく。


「そういえばその子、今は大人しいね」


「リンに敵わないと悟ったのか、急に暴れなくなったの」


 うーん、言われてみると心なしか、瞳に光が無いような……


「みなさん! お手伝いありがとうございました!」


 サラちゃんが深々と頭を下げてくる。


「それで、この子はどうするのだ?」


 エシュリーが元裸の子を指さした。

 サラちゃんがその子に近付く。


「それは……【空間転移テレポート】」


 サラちゃんが触れた瞬間、女の子が消える。


「こうします」


「どこに送ったのだ?」


「王城です。後は向こうで何とかするでしょう」


 結構大雑把だな。


「ささ、気を取り直して、観光に戻りましょう!」


 サラちゃん、もう気持ちを切り替えたみたい。

 まあ、そんな深く考えることも無いか。




 その後は、湿原地帯を巡って巨大ワニを見たり、山岳地帯の翼長十メートルはあるかという巨鳥に追い掛け回されたり、全長五メートルのクモを見付けてしまいキモイキモイ連呼したり、いろいろと観光なのか冒険なのか良く分からないことをした。

 帰りがけに女王様たち用のお土産として、ハナミツ酒の原料となるメリルカプスを摘んできたりもする。摘んでたら、首が七匹のヘビになっている馬に、炎を吹きかけられちゃったけど……


「みなさん、お疲れ様ですー!」


「……うん、ケガとかは無いけど……いろいろと疲れたわ……」


 お城のサロンみたいな部屋で、ソファーに寝転がる。

 羽を逃がすためだろう、イスの背もたれはかなり低く、それにもたれかかることは出来ないのだ。


「うん、わたしも疲れたよー」


 アリスがわたしに覆いかぶさるようにして寝転がってきた。

 大き目のソファーは部屋に二つしか無くて、一つにはリンとエシュリーが一緒になって寝てるし、ここしか場所が無かったということ――にしておこう。


「どうだったかな? 我々の領土は?」


 突然、サラちゃんとは違う、澄んでいて気品ある声が、部屋の中に流れこんだ。


「あ、レッドクイーンさん」


 いつの間に入ってきたのか、レッドクイーンとお付きのメイドが二名、部屋に入って来ていた。

 さすがに女王様の前で寝転がってるわけにはいかない。

 みんな起き上がり、姿勢を正す。


「そんなに、かしこまらなくてもよいぞ」


 レッドクイーンさん、顔が笑っている。

 今日はとっても機嫌が良さそうだ。


「うむ、なんってったって、わたしの下僕だからな」


 エシュリーだけ、リンに膝枕された状態で寝たままだ。


「エシュリー、主神なんだから、ちゃんとしなさい」


「えー」


 文句を言いながらも、起き上がってくれるエシュリー。よろしい。


「何といいますか、この国の動物をたくさん見ましたが、みな凄い攻撃的で驚きました」


「アリスの言う通りだよねー。何度も戦うことになっちゃった」


 外して立てかけてある剣に目を向ける。

 寝る前に、メンテしないとなんないんだよなー。メンドーだー。


「強いものだけが生き延びられる世界だから、自然と凶暴な生物ばかりになっていったのであろう。もし、領土を巡っていたのが普通の人間であれば、既に食われて終わっていただろうて」


 レッドクイーンが、わたしの左に座る。

 右に座っているアリスが、わたしの腕をつかみ、少し引っ張ってきた。


「だが、お前は傷一つ負わず、戻って来れた」


 レッドクイーンの透き通るような輝く黄金の目に射抜かれて、ちょっと緊張してしまう。邪眼か何かじゃないだろうな?

 少し、顔が近い気もするけど。


「それは、モナカやエシュリー、リンが強いからよ」


 アリスが力強くわたしを引っ張るもんだから、そのまま抱きかかえられる形になってしまう。


「そうだよー、わたしたちはすごーく強いんだから」


 いつの間にこっちに来たのか、リンがアリスを背中から抱き込む。


「そーそー、だからおいたはダメだぞー」


 エシュリーが、わたしとレッドクイーンの間に顔を割り込ませてきた。

 今度はエシュリーがレッドクイーンとにらめっこする形になる。

 レッドクイーンは一瞬、キツネにつままれたような表情を見せたかと思うと――突然、笑い出した。


「あはははははっ。そうだな、悪ふざけはやめておこう。わたしでも、この面子めんつには手も足も出んだろうな」


 レッドクイーンは、ひとしきり笑ってから、立ち上がった。


「さて、今日はメリルカプスの花をたくさん持ってきてくれたんだったな。感謝するぞ」


「はあ……」


 これは、みんなに助けられたことに、なるのかな?

 レッドクイーンが何をしたかったのか、今ひとつ分からない。


「お礼といってはなんだが、明日を楽しみにしておいてもらおう」


 レッドクイーンは「またねと」と言って、部屋を出ていってしまった。


「あー、なんなんだろうねー? 変な人だ」


「あれ? モナカは気付かなかったの?」


 アリスに、笑顔で見下ろされる。

 あ、抱き寄せられた態勢のままだった。

 起き上がろうとするが、アリスがそれを手で押さえて押し留めてきた。


「アリス?」


「疲れてるんでしょ? もう少しこうしていなさいな」


「疲れはあんまり感じて無いかな。アリスも疲れてるでしょ?」


「いいから」


 有無を言わさぬ強い口調だ。


「はい」


 逆らわず、このままの体勢でいよう。


「レッドクイーンは、モナカにれちゃったんだよ」


「はい?」


 何を申すかエシュリーさん。


「やっぱりー」


 リンもそう思ってたらしい。


「なんか、キスしたそうだったもんね」


「そ、だからみんなで守ってあげたんだよ?」


「そーなん?」


「そーなん」


 なんなんだろーこの真相は。もっと大層なもんかと思ってしまったよ。


「モナカはもっと、自分がモテるって自覚しないと」


 アリスの手で両側からほっぺたを潰されてしまう。

 変な顔になってそうで、ちょっと恥ずかしい。


「ふ、ふぁーい」


 なんでこんなにモテるのかな? 美貌びぼうかな? やっぱりこの美貌びぼうかな?


「にへへへへっ」


「モナカ、笑い方気持ち悪いー」


「気持ち悪い言うなー」


 エシュリーに足で軽い突っ込みをくれてやった。




 湿原の国三日目。

 今日もサラちゃんが門の前で待ってくれていた――んだけど……


「今日は、人が多いね?」


 サラちゃん以外にも、十人くらい集まっていた。

 サラちゃんは昨日と同じなんちゃってスーツだけど、他の子たちはみんな武装している。


「はいはい、おはよーございます、みなさん! 今日は工事現場に案内するよう言われておりまして!」


「工事現場?」


「はい! これから新しく、島を作ります!」


「おお! ……って、それ、危険なことってない?」


 何せお花を摘むだけで、火を吐く魔獣に襲われる国なんだから。


「そんなに凄いことは起こりませんよー。ただ、衝撃でビックリした動物たちが飛んでくるくらいでー」


 やはり、襲われるようだ。


「……ちなみに、何が来るの?」


「うーんと、空飛ぶエイとかー、頭がヤギの鳥とかー、ですかねー?」


 ……微妙に、危険なのかそうじゃないのか、判断し難い。


「ささ、行きましょー! 行きましょー!」


「ちょっ!? わわ!」


 サラちゃんに押される形で無理やり人力車に乗せられる。

 そのまま飛び立つ。

 今回は、戦闘せずにビックリするくらいで収まらないかなー? 収まりそうもないなー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ