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第七話 敵が本気になってきた

 その報告を受けたのは、わたしがソファーで寝ながら本を読んでいて、エシュリーが何か自慢めいたことをわたしに言っており(わたしは聞いてないが)、ニャンコが申し訳なさそうに部屋の掃除など屋敷のお仕事を率先してやっている中、もたらされた。


「バーゼルの軍勢が来ております! 先日の倍近い数です! モナカ様方、よろしくお願いします!」


 言って、息を切らせている一人の衛兵。全力で走ってきたのか、汗まみれである。

 息の荒い汗まみれのおっさんとか、部屋にいてほしくないので、領主へ報告するように言って追い出した。


「なんだあの兵士! モナカ様方ではなくエシュリー様方だろうに!」


 エシュリーは相変わらず変なところで怒り出す。


「あれから三日、もう来たんですね」


「隣町に本部が設置されてるのかな? 報告して即来た感じよね」


 準備のため、みな自室へと向かう。

 領主様に必要経費と言うことで、装備を買ってもらったのだ。

 店売りのは男物ばかりだし、デザインが可愛くなかったので、特注で作ってもらった。人の金で高額商品買うのは初めてで、ワクワクしたものだ。


 竜族のいる島にのみあるという、貴重な鉱石であるミスリルを、西の妖精族の魔法技師アーティファクターが鍛えたという、超貴重なミスリルチェインメイル。それをデザインも女性っぽく丸みを帯びたものに調整してもらったのだ。色も白銀でとってもキレイ。

 武器も同じくミスリルで出来た、ブロードソードだ。武器の性能差とか分からないので、見た目重視で選んでいる。

 ミスリルは、丈夫さ以外にも軽さが売りと言うことだが、人間の数倍の筋力では、軽いのかどうかちょっと実感がわかない。

 ともあれ、全部装備すれば女騎士の出来上がりである。かっこいい。


 ニャンコは最初同じ鎧をと思ったが、重くて着れないということで、ミスリルの繊維で神官衣を編んでもらった。防御力はそこまで無いだろうけど、手間暇考えたら、わたしのよりも高いかもしれない。

 武器は扱えないということで、持っていない。


 エシュリーは、最初から着ている服が神の衣だということで、特に何も買ってない。

 青を基調としたワンピースで、正直子供服にしか見えないんだが。


 なんか、ファンタジーの冒険が始まるみたいで、すごく気分が高揚する。

 相手はドラゴンとか巨人とかではなく、戦車と言うのがおかしな感じだけど。




 街の外で待機していると、その一団が近付いているのが見えた。

 遠見の水晶球とやらで確認してもらったところ、装甲車が一台、砲身の無い戦車モドキ? が六台、あとは人型のゴーレムみたいなのが六台ということらしい。

 こちらの戦力は、わたしとエシュリーと、エシュリーの陰に隠れるニャンコの三名。

 うーん……


「ねえ、エシュリー。わたしの力であれ、撃退できるの?」


「余裕余裕! わたしを信じて!」


 種族:超美少女は、エシュリーが狙って付与したわけでもないのに、信じるも何も無いもんだ。

 ただ、不思議と恐怖とか何も感じない。

 現実味が無さすぎる状況だし、一度死んだので度胸が付いたのかな?

 少なくとも、自宅にいる時に鳴る携帯の音よりは全然怖くない!


 近付いてくる装甲車のハッチが開き、人が出てきた。あ、またアーリアさんだ。


「ぜんたーい、止まれ!」


 号令一下、その場で停止する一団。


「街の外で待っていてくれたのか? ちょうどいい、モナカ、おまえに話がある」


「なんでみんなモナカを! わたしがこの中で一番すごいんっ……ふごっ……ぶむっ」


 エシュリーの口をふさぎ、アーリアさんに頭を下げておく。

 なんか、悪いことした子供を押さえて相手に謝罪する、お母さんの気分だ。


「えっと、憶えていてくれてありがとうございます、アーリアさん」


「う、うむ、わたしも憶えていてくれて、うれしく思う」


 あれれ? なんか顔が赤くなってる。


「っぷはあ。もーきつく押さえ過ぎだ」


「エシュリー、なんかアーリアさんの様子がおかしいかも」


「それは、超美少女の能力、魅了の力ね」


 そういえば最初に、そんな能力もあると聞かされたな。


「モナカが特に注視して見た相手を、虜にしちゃうんだよ。超美少女というからには、その美貌が最大の武器なのさ」


 いつの間にやら魔性の女になっていたようだ。

 外見年齢十五歳だけど。


「えーと、エシュリーとニャンコは何ともないの?」


「わたしは抵抗力が高いからな。並みの能力は効かん」


 防ぐことに関しては定評のあるエシュリーさんだ。


「わたしは、ナンバー〇〇一ゼロゼロワンとイルミナルに全てを捧げておりますので、他には魅了されません」


 ニャンコのは、高い信仰心で耐えてるということか?


「領主様とか他の人も効かなかったようだけど……」


「いやもう、メロメロだったと思うよ? 男女関係なく。理性の力で何とかしてるようだけど」


 なんか好意持たれる通り越して危険なレベルじゃないかそれ?


「危ないわねー。チヤホヤされるまでならいいけど、ストーキングされたらどーしよー」


「おまえたち、何をコソコソ話してる!」


 あ、アーリアさんがお怒りだ。


「いえいえ、こちらの話で」


 とりあえず笑顔でごまかす。

 笑顔を向けたら、ますます顔が赤くなるアーリアさん。なんか、カッコいい大人の女性の気持ちをもてあそんでるような感じがして、これはこれで、すっごくゾクゾクする。


「ええい! ともかくだ、お前を捕縛するため、これだけの部隊を連れてきた! ただ、素直に投降してくれば、丁重にもてなそう」


 わたしたちでなくて、わたしだけなのか。

 いっそ魅了の力全開で、アーリアさんを虜にしてもいいかも。


「バーゼルのごみどもが! きさまらなんぞに誰が下るか! モナカ、やっちゃえ!」


「ちょっ、エシュリー勝手に」


「それが答えか、仕方ない。全軍、この者たちを死なない程度に痛めつけろ!」


「あああぁぁっ! やっぱり戦闘か」


 口だけ偉そうなエシュリーにより、戦闘が開始されることになった。




「ニャンコはエシュリーの後ろに隠れてて」


「はいぃぃぃっ」


 アーリアを乗せた装甲車は後方に下がる。

 代わりに、戦車から砲台を無くし無数のスポットライトを付けたような、変な乗り物たちが躍り出てくる。


 剣を抜きつつ、その一台に向けて突撃する。相手の砲身? がこちらを向く。

 いきなり光が向かってきた! 慌てて避ける。


「えっと、レーザー? かな?」


 テーマパークのショーくらいでしか見たことは無いが、レーザーなのだろう。

 さらに数台のレーザー砲台がこちらを向く。

 ええいっ!

 無数のレーザー照射を、見切って避け切る。

 照射後のスキを突き、まず手近の目標に向かって行き、切り捨てる!

 前面のスポットライト的なものを削り落とし、攻撃不能に。

 すぐに別のやつからレーザーが飛んでくるが、後方に飛んでかわす。


 二台目に向かって走る!

 レーザーを避けまくり、勢いのまま、全体重をかけて車体に剣を突き入れる! そのまま刃をすべらせ、横を走り抜けながら、側面を車輪ごと切り裂く。

 これで二台目も沈黙。


「うーん、サクサク切れるけど、なかなか手間がかかるな」


 なんか一気に、どかっとぶっ壊せないかな。最近憶えた神聖魔法とやらに攻撃魔法は無いからなー。


「あーもー、キレイじゃないけど、これでいいや!」


 今動けなくした車体を持ち上げ、手近な奴にぶん投げてやった。

 命中! 車体をぶつけられた奴は潰れて沈黙する。

 残りもこれでいっちゃえ! 剣関係なくなっちゃったけど。


 背後からホバーリング音。

 振り返らずに走って逃げる。無数の銃弾が今いた場所を薙ぎ払った。

 人型のロボットみたいなのが、両腕に付けたガトリング砲を撃ってきたようだ。

 うざいわー!

 ガトリング砲の弾丸を避けつつ、ロボットに近付き、まずは左腕を切り裂き、返す刀で右も切断!

 さらにもう一体近付いてくる、そいつに向かって蹴り飛ばしてやる。

 二台まとめてふっ飛んでいった。


「人型の方が、簡単に倒せて楽だな」


「おーっ! 残り半分だ頑張れー!」


 エシュリーの声援が聞こえる。

 エシュリーもニャンコも隅っこに隠れてて、結局戦ってるのわたしだけなんだな。


「ええいっ! 全軍で包囲しろ!」


 アーリアさんが痺れを切らしたか、号令をかける。

 残った機体が、わたしを囲むように陣形を取ろうとする。


「うーん、あんまやりたくない手だけど……」


 一台のレーザー砲台に視線を集中させる。

 わたしに魅了されろー魅了されろーと念じてみる。いや、魅了って、どうすればいいのか分からないので、なんとなく、そう念じてるんだけど。

 そのレーザー砲台の砲座が、別のレーザー砲台に向き、レーザー攻撃!

 魅了に成功!

 周りが同士討ちを始めた。


「えげつないわー」


 エシュリーの声が聞こえたが無視。

 だって、一体一体倒すの面倒だったんだもん。


「ぜ、全軍、撤退だー!」


 アーリアさんが負けを認めたらしい。

 全軍後退していく。

 壊れた車両の人員も拾っていくのは忘れない。いい心がけだ。


 なんか、アーリアさんがじっと見ている。


「うん? サインならあげないわよ?」


「モナカ……お前、もしかして……幻魔か?」


「幻魔?」


「幻魔とは、出会ったら即死、と言われる自然災害級のバケモノです」


 恐ろしいと言いたげに首を振るニャンコ。


「そんなバケモノと一緒にするなー!」


 目一杯おおきな声でアーリアさんに返す。


「あと、大勢で来られると面倒だから、次回は少数にしてね!」


 アーリアさん、リクエスト聞いてくれるかな?




 街へ戻ると、衛兵たちがねぎらいの言葉をかけてくれたんだけど、なんか怖がられている感じであった。うーむ、怖がらせてしまったようだ。

 エシュリーがわたしもねぎらえと怒っていたが、お前は何もしていないだろう。

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