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第六十話 天使の軍勢

 無数の天使を従える軍艦。

 無数の戦闘機を従える宇宙戦艦(仮称)。

 イルミナルの塔から一定の距離を保ち、空を漂っている。


「丁度、十キロ程でしょうか」


 ニャンコのつぶやきは、イルミナルと敵達との距離であろう。

 イルミナルの効果範囲が、確か半径十キロだった。


「アウトレンジから攻撃されたら、アウトじゃない?」


「それは大丈夫だと思いますよ」


 すでに腹をくくっているのか、ニャンコの口調には、いくぶんの余裕が感じられた。


「そなの?」


「今は見ているしかありませんし」


 確かにニャンコの言う通り、高度二百メートル、距離十キロではコチラの攻撃は届かない。

 テルトの魔法だけは届くのだろうが、一人で相手をさせる訳にはいかないだろう。


 軍艦と宇宙戦艦、両方を交互に見ていたら、何の前触れも無く、砲撃が開始された。

 軍艦から撃ち出された十条の光線、宇宙戦艦から放たれた十条のレーザー光線。

 それらが弧を描いて、イルミナルへと向かう。

 だが瞬時にすべての攻撃が光の文字と変わり、イルミナルに吸収されてしまった。


「攻撃まで封じれるんだ!」


 完ぺきな防御でもあるのか。


「あれを、イルミナルの信者がやっているのです」


「信者が? どうやって?」


「こうやります」


 ニャンコが天使たちの軍艦へ向け、手をかざした。

 すぐに、敵の第二撃が放たれる。


「イルミナルよ!」


 一つの砲弾が光と変わり、イルミナルへと向かって行った。

 残りの砲弾も、他の信者たちだろう、すぐに光となって消えた。


「こうです」


「それって、信者が狙われない?」


 リンの最もな疑問に、わたしも同意したい。


「それも封じれますから」


 ニャンコがニッコリ微笑み返す。

 イルミナルの周りには、千人規模で神官がいる。ニャンコの言う通り、突破は難しいんだろう。


「来るよ」


 テルトが言う通り、両艦の周囲にいる天使たちと攻撃機が、こちらへと向かってきた。


「エシュリー、アリスとニャンコお願いね」


「モナカさん、ここならイルミナルの力が使えるので、わたしも戦います」


「オーケー。ニャンコも今日は頼りにするね。というわけで、アリスとエシュリーは待っててね」


「おう、ぶっ倒してこい! 特にバーゼルの連中を」


「みんな、無理しないでね」


 二人にサムズアップで返し、敵に向き合う。


「【飛翔フライト】」


 みんな飛んでいるので、こちらも飛び立つ。

 テルトとリンもわたしに続く。


「どっちから行く?」


有翼人ルーファレティウスは物理効かないよ。防御結界のせいで」


「バーゼルの攻撃機も硬いけどね」


「ということは、わたしの魔法の独断場だな」


 テルトがニヤリと笑って、天使たちに手を向ける。


「【炎の嵐ファイヤーストーム】」


 テルトの得意呪文が炸裂。

 天使たちをまとめて焼き払う。


「それ一発だと倒れないと思うよー」


 炎を突き破り、天使たちが向かってくる。

 一人の放った光の矢が、こっちに来た!


「【光弾フォビット】!」


 光の矢を撃ち落とす。

 間髪入れず、数人がミスリルの槍で突いてくる。


「ちょっと! 忙しいな!」


 全て避け切ってから、まとめて切り裂こうと剣を振るう。だが、見えない壁に弾かれてしまった。

 そういえば、結界があったんだっけ?

 超めんどくさい。


「【空間転移テレポート】!」


 距離を開けて時間稼ぎ。

 テルトもリンもすでに戦闘状態に入っていた。

 【炎の嵐ファイヤーストーム】のダメージがあるためか、リンが魔力弾をバラまくたび、どんどん天使が撃ち落とされていっている。


「わたしも負けてらんないか」


「【雷竜エレクドラゴン】!」


 雷の竜が空間を真っすぐ飛んで、軌道上の天使たちを撃ち落とす。

 やった! と思った瞬間、視界が赤く染まる。

 敵の【炎の嵐ファイヤーストーム】か!


「【魔力障壁マジックバリア】!」


 魔法防御で防いでおく。

 魔法は使うし物理効かないし、ほんとに強敵たちだ。

 そんな風に思ってたら、わたしに向かって無数の【雷の矢ライトニング】が飛んで来た!


「ふぉいやー!」


 ハート形の魔力弾が飛んできて、それらが撃墜される。


「大丈夫? モナカ」


「リン、ありがとね」


「【魔法球メイガスボム】」


 テルトの声と共に、【雷の矢ライトニング】を撃った奴らが、みんな落ちていく。


「そこら中、敵だらけだから注意してね」


「そだね、テルト」


 軍艦から飛んでくる天使たちを見る。

 百や二百ではきかない数だ。さすがに取りこぼしは多くある。

 最も、それらはニャンコ以下、神官さんたちが片っ端から封じてくれているようだけど。


「モナカ、バーゼルの大きな船、先端が光ってる!」


 バーゼルの宇宙船。その先端の光球の輝きが増している。

 あれって、アニメとかでよくあるよね。


「主砲発射かな? 封印しきれるのかな?」


 とはいえ、わたしが前に戦ったインパルス砲台よりも、数倍デカいやつだ。

 代わりに受けたいとは思わない。

 そう思っている間に、インパルス砲が放たれた。

 目標はイルミナルの根元!? エシュリーたちがいる辺りだ!


「やばい!」


 助けに行こうと動いたが、すぐに巨大な光弾が、文字に変わっていった。


「あれも防げるのか」


 エネルギーが多いためか、数十の文字列となってイルミナルへ刻まれていく。


「完全に無敵防御だねー、イルミナルは」


 ふいに、背後から声が聞こえた。


「え?」


「危ない!」


 振り向こうとした瞬間、リンにふっ飛ばされた。


「ちょっ、何するのよリン!」


「なんか、ヤバそうだったから」


「すっごい感がいいのね、あなた」


 リンを称賛したのは、さっき声を掛けてきた天使だ。

 他の天使たちと違い、鎧の代わりにローブのようなものを着ている。

 天使様たちはみんな金の瞳と髪を持ち、彫刻のように美しいんだけど、この人はその中でもひと際キレイだ。

 その背後に四人、他の天使たちよりも豪華な鎧を着込んだ連中が付き添っている。


「さっきから、あなたたちだけで、どんだけの兵力を潰してくれてるのかしら?」


 背後の四人が槍を構える。来るか?


「ラグナ、油断するな」


 また別の声が頭上から聞こえた。

 瞬間、リンが震えた。


「どうしたのリン?」


「えっと――」


 リンが新たな声の主に視線を向けた。

 同じく天使だけど、勇ましいというか、強そうというか、ゴテゴテとした鎧のデザインである。


「久しぶりだな、人間」


「リン、知り合い?」


「知り合いというか、前に戦って封印した相手というか……」


「バーゼルの戦いに協力する見返りに、復活させてもらったのだ」


 この天使だけ、声が鋭いというか厳しそう。

 リンはなんか変な汗かいている。


「えーと……モナカ、テルト。紹介するね」


「あんま紹介されたい相手でも無さそうだけど」


「こちら、フレイア。有翼人ルーファレティウスの将軍さん」


「紹介感謝する。貴様への復讐の機会が与えられたことも、感謝しよう」


 フレイアさんは、悪そうな笑顔を浮かべている。

 せっかくキレイな顔してるのになー。


「リン、あなた恨み買い過ぎじゃない? キルシュの時とかもそうだし」


「いやあれは、運が無かっただけで!」


 リン、そういう体質なのかな?

 可愛いのに、残念な子だなー。


「よしわかった、リン。他の連中はわたしたちに任せて! 存分にフレイアさんと親睦を深めていいよ!」


「ちょおおおおっ、テルトー! 見捨てないでー!」


「行くぞ、リン!」


 フレイアの掛け声とともに、強制的に戦闘が始まった。

 リンは観念したか、そのままフレイアへと向かう。

 となると、わたしたちの相手は――


「もーフレイアちゃん、わたしはザコ担当?」


「雑魚じゃないわよ!」


「そーだ! そーだ!」


 このラグナって人、見た目だけなら優しい天使様だけど、かなり毒がありそうだ。


「そーなの? あ、申し遅れました。わたし、この有翼人ルーファレティウス軍の副将を務めております、ラグナと申します」


 丁寧ていねいというか、慇懃無礼いんぎんぶれいというか、深々とお辞儀される。


「これはどーも。わたしはモナカ、普通の女の子だよ」


「テルト、幻魔だよー」


「そーなのですか。では、さようなら【極大爆破アルティメット】」


 発動が早い!

 防御結界を発動させる間もなく、エネルギーの塊に飲み込まれてしまう。


「あれ? しぶといですね。あれで肉体が残ってるって」


「ま、まあ、耐えられなくも無かったし……」


 けっこうキツかったけど、なんとか死ななかったみたい。

 再生能力プラス【全回復フル・リカバリィ】で一瞬で復活したわけだ。


「テルトは、大丈夫だった?」


 周りを見るが、テルトが見当たらない。


「テルトー!」


 どこいったかな? 【空間転移テレポート】したのかな?


「まず一人」


 笑顔でブイサインしてくるラグナ。


「――え?」


 呆けたわたしは、ラグナと四人の天使に囲まれるのだった。


「――え?」

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