表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/107

第四十六話 信仰の力

「災厄ってなんでしょうか?」


 ニャンコの言葉に、スプーンの動きを止めてしばし考えてみる。

 今日の晩ご飯はホワイトシチューである。


「なんだろ? 考えたって分からないし、そんときに考えればいいんじゃない?」


 とり肉とニンジンをまとめて口の中へと運ぶ。

 スープにとろみがかなりあり、口の中にチーズの風味と共に広がっていく。


「ニャンコ、どうにもならないことは、考えても大変になるだけよ。とりあえず今は食事を楽しみましょう」


 アリスの言葉に、ニャンコは無言でうなずき、厚手のクレープ生地に漬けた野菜と魚の燻製を挟んで、口にほおばる。

 わたしも食べたけど、クレープとナンの中間みたいな触感で、野菜と燻製の味で十分にいけた。


「ナンバー〇〇一ゼロゼロワンも言っておったな、わたしが救世主となると」


 エシュリーはやや香草の風味の強い焼いた肉に食らいついていた。

 なんでも、香草と一緒に酢漬けにした肉を焼いたものらしい。


「うーん、ちょっと違くなかった?」


 わたしもエシュリーと同じお肉を食べてみる。ちょっと風味が独特なため、あまり大量には食べれないかな?


「ナンバー〇〇一ゼロゼロワンは、わたしたちに行くようにおっしゃられていましたし、行くことで災厄を防ぐことが出来るのでしょう」


 ニャンコはまたもスプーンの動きが止まってしまう。


「みなさん、お願いします。わたしの祖国を救うのにお手伝いください」


「そんな改まらなくたって、やってやるわ」


「そうそう、モナカはなんでもやっちゃう子だから」


「そーそー」


「ニャンコ、がんばるためにたくさん食べなよー」


「はい、テルトさん。たくさん食べます!」


 勢いよくスープをかっこむニャンコ。


「そーそー、食べれるときに食べておく。それが力になるんだから」


「……リンは、ほんとにそんなに食べれるの?」


 ミンチ肉の焼いたものにハムの盛り合わせ、エシュリーと同じく漬けた肉を焼いたもの、さらにビーフシチューにまで手を伸ばしている。

 それをかなりの勢いで食べているのだ。


「食べれるときに食べなきゃあね」


「それだけ食べて体型を維持できるのが、うらやましいです」


 アリスが自分のお腹を見ている。


「アリスは逆にもっとお肉付けてもいいと思うよ」


「モナカは太った子が好きなんですか?」


「いや、太ったというか、アリスは細すぎるかなーと思って」


「分かりました! もっと肉を付けて美味しく食べてもらうようにがんばります!」


 アリスはチーズケーキとアップルパイを頼みだした。


「それは甘いものが食べたいだけでは?」


「モナカも食べよう!」


「うーん、ええい、食べちゃうか! みんなにも注文してやる!」


「え! わたしは、もう十分頂いているので……」


「ニャンコはもっと食べろー! というか、なんで同じ量食べてるのに、こんなにムチムチなんだ、けしからん」


 胸を触ろうとしたけど、ちょっとためらって、太ももを掴んでやった。


「ちょっ! モナカさん、いきなり何を」


「モナカ、発情するな」


「発情しとらんわ、お子様は黙っとれー」


「そうだぞ、エシュリー」


「テルトも同じだー。テルトにはチョコケーキも頼んでやろう」


「わーい!」


「わたしはクリームソースのパスタを」


「リン、ほんとに大丈夫!?」


 寒い日の暖かいご飯はとてもいいものだ。なお、リンは全部食べ切ってしまった。

 あの体系で、どこに入ったのだろうか? ポーチみたく異次元に繋がってるのかな?




 街の散策や買い物などをしていたら、あっという間に巨人が攻めてくるという日になっていた。

 ナンバー〇〇一ゼロゼロワンを乗せた馬車はすでに出発している。

 少し遅めの朝食のあと、スピーダーに乗って国境の検問所まで逆戻り。

 検問所には、多数の兵士が詰めかけており、馬車や馬が複数停められていた。

 入れてもらえるのかなと思ったが、どうやらナンバー〇〇一ゼロゼロワンが、わたしたちが来ると言っておいてくれたようだ。すんなりと入れてもらえた。


「ちなみに、どんな人が来るって言われていたんですか?」


「すごく可愛い女の子六人組がやって来ますと、言われておりました」


 最初、兵隊さんが冗談で言ってるかと思ったが、超真面目な顔だったので、たぶんそのままの言葉を言われたんだろう。

 ナンバー〇〇一ゼロゼロワンは、まじで女好きとかでは無いのか?

 ちょっとあいさつをしてやろうかと思ったが、打ち合わせ中ということで、それは断られてしまった。


「もう姿が見えてますね」


 検問所の物見台。

 わたしたちがそこに出ていったときには、すでに国境線を抜けた巨人たちの姿が見えていた。

 前にもこうして巨人の進行を見ていたものだ。

 あの時は、わたしたちが前線に出て戦っていたが、今回は見学である。実戦に参加しないせいか、今回は落ち着いて様子を見ることが出来た。

 検問所より離れた位置で布陣を組んでいる巨人の数は、ファルプス・ゲイルで見たときと同じくらい、恐らく一万人前後であろう。

 対するこちらも、備えられた大型の弓矢の準備などを進めていた。


「あ、出てきた」


 テルトの指さす先、一番高い中央の物見台に、ナンバー〇〇一ゼロゼロワンが姿を現した。

 周囲の兵士から、大きな歓声が上がる。


「なにをする気だ?」


 エシュリーの問いに、ニャンコが答える。


「ナンバー〇〇一ゼロゼロワンは、全信者の力を合わせて、強大な魔法を放つことが出来るのです」


「幻魔の魔法みたいな感じかな?」


「たぶん、そんな感じだと思います」


 見た目が普通のおっちゃんとはいえ、そこはやっぱり神様らしい、のかな?


「巨人が動き出したよ」


 リンの言葉に前方を見ると、巨人の軍隊がゆっくりと前進していた。

 大丈夫かな? いざとなったら加勢しようかな? 少し体に力が入る。

 ナンバー〇〇一ゼロゼロワンは、杖を振り上げ、何ごとかつぶやきだした。


「モナカ、なんて言ってるか分かる?」


「神聖魔法の言葉だけど、要約すると……みんなー、オラに力を分けてくれ!、かな」


「そ、そうなんだ」


 何やら、アリスが微妙な表情を浮かべた。


「モナカさん、もう少しそれっぽく言ってあげて下さい。まるで適当なことを言ってるみたいじゃあないですか」


「うーん、例えば?」


「え! えっとー……わたしに力を分け与えるのだ信者たちよ、ですかねー」


「あんまり変わらないじゃん」


「そうでしょうか?」


 そんな漫才をやっている間に、ナンバー〇〇一ゼロゼロワンの呪文が完成した。


「【帰還リターン】」


 その一言が周囲に響き渡る。

 巨人の軍勢全体に、赤紫のモヤが覆いかぶさった。

 軍隊の進行が止まる。

 そして、転進。ゆっくりと結界の向こうへと歩き去ってしまった。


「あさっりと終わっちゃったね」


 規模のわりに静かな終わりに、リンが小声でそうつぶやいた。

 それが引き金にでもなったかのように、周囲から大きな歓声が鳴り響いた。


「流石ではないか、ナンバー〇〇一ゼロゼロワンよ」


「女神エシュリー、みなさんも来られていたのですね。はい、我ながら誰も傷つかず終わらせられたので、素晴らしいと思いますよ」


「流石です、ナンバー〇〇一ゼロゼロワン


「ニャンコさん、わたしだけの力ではありません。すべての国民の信仰の力が、わたしの魔法の力につながっているのです。わたしこそ、ニャンコさんやすべての信者に感謝いたします」


「もったいないお言葉です」


 ニャンコは深々と頭を下げた。

 見ると、周りの兵士たちも頭を下げている。

 わたしも信者だからなー。一緒に頭を下げた。


「女神エシュリー、みなさん。今晩、大聖堂で戦勝の宴が催されます。質素な宴ではありますが、よろしければご参加ください」


「はい、喜んでお誘いをお受けいたします」


 アリスが王家流の優雅なお辞儀をしてみせた。

 わたしも見よう見真似でやってみたら、エシュリーが爆笑しやがったので、軽く頭に手刀を当ててやった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ