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第四十三話 美少女は視線を集める

 スピーダーでいざ北の国の最初の街へ!


巨人の国キアルゴラ側の国境に近い町、それがシャルハルバナル第二の都市サンティルポステラ、通称サンティです。そこに偉大なるナンバー〇〇一ゼロゼロワンのお住まいになる大聖堂があるのです」


 ニャンコが偉大なるポーズというか、左手を右胸に、右手で天を仰ぎ、顔を上げて恍惚な表情で語ってくれた。実に誇らしげというか、楽し気というか。

 しかし、この国の名付けは本当にめんどくさい。サンティだけ覚えとこう。


「ニャンコは、ナンバー〇〇一ゼロゼロワンに会ったことあるの?」


「残念ながら、そのような機会には恵まれませんでした。わたしの出身地はこの国の東南の端でして、距離が離れていたというのもあるのですが……」


 目に見えてガッカリしだした。

 いつもテンション低めだけど、神様が絡むとめっちゃ元気になるんだよね。いや、一応信者になってる私もテンション上げていかないとなんないんだろうけど。


「ニャンコ、写真持っていたじゃん」


 最初に出会ったときに見せてもらっている。その後も、何度も事あるごとに見せられていたりする。

 中肉中背の三十代くらいの男性。着ている服は白い民族衣装。ニャンコと同じ白肌白髪の赤眼以外に顔に特徴は無く、全体的にまるで凄さが感じられない。

 信仰していると神聖魔法が使えるので、特殊な力は持っているのだろうけど、見た目からはまるで想像できない。

 実物を見たら、こう……なんか、内に秘めたオーラ的な、何か凄い印象だったりするんだろうか?


「はい、シャルハルバナルの国内だったら、雑貨屋とかで売っていますよ。一枚銅貨三枚でした」


 うーん、おっさんの写真が銅貨三枚か。

 現人神の写真なら、そんなもんなのかなー? だとしたら逆に安いと言えるのかも。

 欲しくはないけど。

 どうせ持つなら、アリスとかリンみたいな美少女の写真の方がいいし。

 うん? そういえば――


「この国って、カメラあるの?」


 まだ検問所しか見てないけど、文化レベル的に機械類は無さそうな気がした。


「北の国は、ファルプス・ゲイルや妖精国と海路で結ばれているので、写真機などは大量に輸入されていますよ」


 ニャンコの代わりにアリスがら返答があった。

 巨人の国とか戦争とかしてるけど、他の国とは仲がいいんだ。

 いっそ巨人族とも仲良くなれば、陸路も安全に使えていいんじゃないのかな? 無理なのかなー、戦争って正直分からなくて、なんでやるのかなーと思っちゃう。


「はい、いろいろなものが輸入されてきてますね」


「その代わり、わたしたちはアレを送ってもらってるけどね」


「アレって何?」


 北国で文化的に後進的な国から、何を送ってもらっているんだろう?


「氷です」


「氷?」


 氷って輸出入するものだっけ?

 ファルプス・ゲイルには冷蔵庫があったから、自前で作れるのではないのかな?


「北の国以外では自然に氷が出来ることが無いんです。純度が高い天然氷は、他では手に入れることが出来ません。その氷で作ったお菓子とか、美味しいんですよ」


 うーん、アリスの国で氷菓子とか食べてなかったな。帰ったら食べようか。

 ……なんか、寒い中でかき氷を想像したら、身震いしてきた。


「それとナンバー〇〇一ゼロゼロワンの写真も大量に輸出してますよ」


「いつもいつも写真を山のように送ってくるのはちょっと……」


 アリスが眉をひそめて、困った顔をしている。

 確かに大量のおっさんの生写真とか、嫌がらせレベルである。

 処置が大変なんだろうなー。


「うん? もう一人の神様の写真とかは出回ってないの?」


 確かもう一人いたはずだけど、写真も見せてもらって無いし、布教もされてない。


「イルミナルですか? 国家秘密のため写真撮影原則禁止なのです」


「モナカ、ファルプス・ゲイルの神剣と同じ扱いだと思え」


 エシュリーが追加で説明を加えてくれた。

 軍事施設とかと同じ扱いなのか。同じ神様なのにナンバー〇〇一ゼロゼロワンとはえらい違いだ。

 ナンバー〇〇一ゼロゼロワンに会った後、首都にも行って見てみたいな。


「街が見えてきましたね」


 ニャンコが指し示す先に、街が小さく見えてきた。

 城壁で周りが囲まれているのはどこもそうだけど、なにやら街の中央に目立つ建物が建っている。


「街の中央に大聖堂があるんです! 初めてみました!」


「ふわあぁぁっ」


 テルトが何やら鳴きだした。

 見ると、ニャンコが感極まったようで、隣に座ってるテルトを思いっきり抱きしめていた。

 ムチムチ魅惑のボディに顔が埋まっており、呼吸大丈夫かなとちょっと心配だ。


「早く街で服を買いたいですね」


 アリスがそわそわしている。

 今でも重ね着状態で、お世辞にもいい恰好では無い。

 早くまともな服にしないと、人前に出るたびに毎回恥ずかしい思いをしなくちゃあならない。


「街へ着いたら、まずは服を買いに行きましょう。ホテルはその後で」


「え? 大聖堂へ行かないのですか?」


 ニャンコが心底残念そうに問いかけてくる。


「ニャンコは服の問題無いからいいけど、わたしたちはちゃんとした服を着たいからね」


「うん、わたしも服買いに行きたい」


 リンも同意のようだ。


「リンは寒くないでしょ?」


 運転席のハムスターに言ってやる。


「さすがに、着ぐるみのままは恥ずかしいから、ちゃんとした服が買いたいよー」


「自分が恥ずかしいと思うようなデザインになんでしたんだ」


「モナカが着たら可愛いかなーって」


「着たらハムスターに見えるんだから、意味ないじゃん」


「それもそうか」


 リンも大概、変なところで抜けてるような気がしてきた。


「わたしはまた、モナカと一緒に入りたいな」


「ええー。めちゃくちゃ動きにくいじゃん」


「あの密着感がいいのよ!」


 アリスは大丈夫なのか?

 めちゃくちゃ真剣なまなざしを向けられてしまい、口に出して言うのがはばかられてしまう。


 そんなこんなしている間に、街へとたどり着いた。

 第二都市というだけあって、かなりデカい。

 街の大通りは広く、馬車なども多く行き交ている。前を行く馬車の速度に合わせ、スピーダーは安全な徐行運転だ。

 しかし、オープンカーというのはこういうときキツイ。

 ゆっくりとした速度なので、外から中が丸見えなのである。道行く人たちの視線が刺さる刺さる。

 美少女六人組が、変な恰好をしているのだ。それは注目を浴びてもしかたないだろう。

 リンは現在ハムスターに擬態中なので、誰の視線も浴びていない。というか気付かれてもいないだろう。

 わたしとアリスは注目を集めまくっている。自分で言うのもなんだけど、美少女なので、男性の遠慮ない視線が気になるし、ちょっと居心地が悪く、救いを求めるようにお互いに寄り添っている形だ。それがまた注目の原因になってしまっているかもだけど。

 そして男性の視線はわたしたちから後部座席のニャンコへ向かう。断定は出来ないけど、ニャンコの胸が視線の集中砲火を浴びているんじゃないだろうか?


「モナカは可愛いから、注目されちゃってるのね」


「アリスも注目されてると思うよ? ニャンコも」


「わたしは気にならんな」


「エシュリー見ている人、あんまりいないようだけど」


「なんという!? この国の人間は見る目が無いのか!」


 いや、エシュリーも可愛いんだけど、お子様だからそこまで男性の視線は集めないと思うな。テルトもまたしかり。


「ここからだと良く見えますよね」


 ニャンコが呆けたような声を出す。何かなと一瞬思ったが、前方に見える大聖堂のことだなとすぐに思い至った。


「確かに立派だよねー」


「わたしのお城よりも大きいかもしれませんね」


 ニャンコではないが、圧倒的な存在感を感じた。

 地球にいたときに大聖堂に行く機会が無かったのでハッキリと比較できないが、これ以上のものは無いのではなかろうか?

 高さは百メートルを越えているかな。

 中央に尖塔が建ち、そこを頂点として左右に広がるような造りだ。白色の石造りで、表面の造形の複雑さから、荘厳な印象を受ける。高さもそうだけど、何よりもボリューム感があり、その巨大さを印象付けている。

 ここにいるのか、ナンバー〇〇一ゼロゼロワン

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