第三十八話 ダンスレッスン!
「モナカ、魔法を覚えてみない?」
それは、テルトの何気ない一言から始まった。
確かに、魔法が使えるのは便利そうだ。
テルトみたく無制限には使えないだろうけど、憶える価値は十分にある。
それで、街の郊外で練習を初めて見たのだ。
「すべての国家、世界全体に存在する力の元が精霊力。マナとか呼ばれることもあるんだけどね」
テルト先生の講義を真剣に聞く。
一緒に見学に来ていたアリスも、わたしの隣で静かに聞いている。
リンたちは街の工房でスピーダーの修理中だ。
「モナカは神聖魔法って言う、魔法の一種を使ってるけど――あっちは神への信仰心を媒体として発動するもの。わたしたちの使う魔法……うーん、精霊魔法というかな? それは精霊力を媒体にして使うんだ」
「うーんと、つまりやり方は一緒?」
「神を感じるところを、精霊を感じるというように置き換えればいいんだよ。モナカ、超美少女って、魔法適正がめちゃくちゃ高いから、すぐに覚えられると思うよ」
言われて、実践してみようかと思って、ふと疑問に思う。
「精霊力を感じるって、どうするの?」
「これをあげよう」
テルトが投げてよこしてきたのは、一つのリング。
「魔法の発動体だよ。わたしの予備をあげるね」
テルトは自身の人差し指に付けている指輪を見せ、笑みを見せた。
「これに意識を集中させれば、精霊力を感じられる。それと魔力アップの効果もあるんだ」
「ふーん、まあ、試してみるわ」
指輪を付けた指を前方にある岩に向ける。
精霊さん力を貸してーと考えつつ、習った呪文を解き放つ。
「【光弾】」
指先から光が撃ちだされ、岩が吹き飛んだ。
「さすが、モナカ!」
「おおおーっ! できた!」
アリスと両手をつないで、一緒になって喜んじゃった。
「初めてにしては威力が高いなー。単純な魔力だけなら、わたしよりも上かも」
ちょっと驚いているテルト。
「あとは、たくさん魔法を覚えればいいね」
「なにが知りたいの?」
「一番は【空間転移】かな。それで移動がかなり楽になるし。あとは、大勢ザコがいたとき用に【炎の嵐】とかかな」
「モナカ、それが終わったら、次はわたしとのお稽古の番ですよ?」
「うん? アリスも何か教えてくれるの? 超能力?」
「ダンス!」
「ええ?」
なんでダンス?
「ほらー、前にお城にいたときに言ってたじゃない。昔、らいぶっていう音楽祭に夢中になっていて、一緒になって歌ったり踊ったりしていたって」
「ああああーっ、それは……忘れて……」
それを、何の音楽も鳴っていない中、わたし一人でやるのは恥ずかしすぎる。
「ええーっ! テルトはモナカに教えてあげてるのに、モナカからも何か教えるべきよー! ねえ、テルト」
「えっ!? わたしも踊るの?」
「楽しいよ!」
「うーん、そうだねえ。今度はモナカが教えてよ」
「そーなるのかー」
逃げ場は無さそうだ。
周囲を見回してみる。
うん、他に誰もいない。今なら、いいかな。やっちゃえ!
「わーかったよー。えーっと、何やろうかな……」
「お城で見せてもらった、フェスティバルなんとかっていうの!」
あああああーっ、なんか話が盛り上がって調子に乗って披露してたな……
「あれかー……うん、まーいいわ」
興味津々な二人の前でポーズをとる。
「えっとー、まずは右斜め前を見るように立って、右手を腰に、左腕を前に突き出して、人差し指を振りながら、ステップを踏む。」
「えっとこうかな……」
「こうだな」
「そうそう、二人とも上手。さらに首も可愛く振ってみよう!」
三人で振り付けやってみる。
動きはいいけど、無音って、なんか空しくなるね。
「ねえモナカ、音が無いと寂しいね」
アリスも同じこと考えていたようだ。
「そうだねえ、けど、演奏する人とかいないし……」
「モナカが踊りながら歌ってよ!」
ハードル上がってきた!
「ちょっ! それはさすがに恥ずかしいよ」
「モナカ~、もう、覚悟きめちゃいなよー」
「ええい、テルトは他人事だと思って! いいわよ、やってやるー!」
「わーい!」
二人から拍手が上がった。
「ちゃ♪ちゃ♪ちゃー! き~みっと♪新しい――」
歌い始めると、カラオケの時のようなテンションになり、もうノリノリで歌って踊りまくった。
アリスは一回見ただけで覚えちゃったようで、一緒になって歌まで始めた。
テルトはダンスを覚えようと、一生懸命のようだ。
「モナカ、なにやってるの?」
「ひああっ!」
突然背後から声を掛けられた。
「あ、エシュリー、こんにちわ……」
「ものすっごい、ノリノリだったねー」
ああっ! 外の冷静な世界のノリで突っ込まないで! 恥ずかしくなってくる!
「いやああぁぁぁ、あのね、えっと、ほら、陽気な天気だなーって」
「何を言っている。それよりモナカ、客が来たぞ」
「お客さん?」
誰だろう? この巨人の国に知り合いなんていないけどな。
「モナカ、もしかして巨人にまで愛人がいるのですか?」
「愛人ってなんだー!」
領主の館に、ツイートも含めてみんなで集まった。
客というのは向かいに座っている、赤いローブ姿の巨人。
「わたしは宮廷魔術師団に所属する魔術師、デブラと申す」
宮廷魔術師団を名乗るデブラに、わたしたちも自己紹介する。
「さて、わたしがこちらへ来たのは、我らが王が、モナカさんたち人間に会うことを所望されたからなのです」
「ほう? 巨人の王が人間に何の用だ?」
エシュリーは身を乗り出そうとするが、慌てて姿勢を正していた。
落ちそうになったのだろう。なにせイスの高さが通常の三倍はあるのだ。
「詳細は聞いておらぬ。行ってから確認いただきたい」
「その申し出を断った場合、どうなるのですか?」
アリスが確認をする。
「なぜ断ることがあるのだ? 王に会う機会など、二度とないかもしれぬのに」
「そうね、こちらにも言いたいことは山ほどあるし。モナカ、行くということでいいかしら?」
「そこらへんは、アリスとエシュリーの判断に任せるわ」
「話しを理解して頂けたようでなにより。明日、同時刻に迎えに上がる故、支度を整えておくよう願う」
「待ってくれ」
ツイートがデブラを引き留めた。
「なにかな?」
「オレも連れて行って欲しい。モナカたちに不利な証言等があった場合、味方になるために一緒に行きたい!」
「王からは巨人の動向は許可されていないが、戻ったら聞いてみよう」
「感謝する」
宮廷魔術師団デブラは、そのまま空間転移で消えていった。
「何の御用だろうね?」
「考えられるのは、先のカルナ公爵との攻防について。あとはファルプスゲイルとの小競り合いの件にわたしたちが関わってると知ったか。どちらかだろう」
「わたしは、我が国への王城への不法侵入ならびに誘拐と窃盗、さらに戦争行為、それらを糾弾したいと思っています」
「アリスさんが行くと、また捕まえようとするんじゃないですかね?」
「そしたらみんなで守ればいい」
「ありがとう、リン」
その後、何かあるかもしれないからと、テルトに修行を再開してもらった。
アリスがまた付いてくるかと思ったら、何やらリンと話して行ってしまった。何かをするつもりだろうけど、なんだろう?




