第二十二話 お忍びデート
首都までは、スピーダーの全速力なら一日で着けるという。
ただ、時速五百キロは、何名かがぶっ倒れてしまうため、安全運転で行くことに。
なので途中の街で一旦お泊りである。
「リンって、いろいろと服持ってるんだ」
「そんなに何着もは持ってないんだけど」
リンが今来ているのは、薄手のふんわりとした水色のスカートに白のプリントTシャツ、上からピンクのパーカーを羽織ってる。
赤やピンク系統の色が好きなのかな?
わたしは袖の部分の色が違うロングTシャツに、おしりにプリントされている黄色のスカート。旧アースの街で買ったものだ。
わたしとリンの二人で、街へ買い出しに来ている。
ニャンコとエシュリーは安全運転の時速二百五十キロでもバテててしまっていたのだ。
テルトはお昼寝したいからと一緒にホテルでお留守番。
「何着くらい持ってるの? わたしは、色や柄違いのシャツとスカートを五着ほど持ってるだけだけど」
「インナーはわたしも五着くらい。アウターを三つほど持ってて、いろいろ組み合わせて着てます」
そんな話をしていて、洋服店のショーウィンドウが目に留まる。
「せっかくだし、何店舗か回ってみましょうか?」
「お金もありますし、新しい服を買ってもいいよね」
言って、何店舗か回る。
こういうものは、ショーウィンドウ見ていいなと思ってお店に入っても、これだ! と思うものが無く、あちこちさ迷うパターンが通例なわけで。
いつも思うが、なんで変なワンポイントを付けたり、逆に足りなかったりするのか。ピッタリなデザインが無いため、どこかの部分で妥協して買うことになる。
もっとお金が溜まったら、誰もが納得するパーフェクトデザインのブランドでも立ち上げてみるかな? そんなことを夢想する。
「あ、モナカとわたしって、体格とか近いじゃないですか。二人で別々のものを買って、シェアしませんか?」
「おお、確かにいいね。テルトとエシュリーも体格同じだからシェアできそうだけど、趣味が合いそうも無いよねー」
「テルトはゴスロリ、エシュリーは変なワンピース、確かにそうかもしれません」
「テルトの服は一緒に買いに行ってみたいね。どんな趣味のものを選ぶのか興味あるわー」
「うん、けどここら辺の服屋は平凡なところばかりで、選びそうなお店無いですよね」
「逆にどこで買えるのか気になるわ」
日本だったら、前に街中で見かけたことあるし、通販もある。
テルトはいつもゴスロリ服だけど。黒一色の服とか、インナーが青や白のものとか、フリル付きとかあのゴテゴテ衣装を何着も持っている。
手荷物としては持たず、実家から召喚しているとか。ただ、元の場所にきちんと返すことができないとかで、荷物がどんどん増えている状況だ。
しかしあの手の服、洗濯方法が分からなかったので、ホテルの受付の人とかに聞いたけど、全部のパーツを外して手洗いとかキツイので、結局街の洗濯屋さんにお願いしている。今回は一泊だけど、首都に行ったらクリーニングに出さないとな。
「あ、モナカ、あれ……」
「あれ? えっ!?」
リンの指さす方向を見て一瞬体が固まってしまった。
まさにテルトが切るようなゴスロリ服の専門店が、目の前にあったのだ。
しかもただ服を飾っているだけでなく、外観も非常に凝ってて、西洋の館というか魔王の城と言うか、黒いゴテゴテした建物になっており、異常なオーラが感じられた。
「おや、あなたたち、お客さんかしら?」
お店の中から、テルトばりのゴスロリ衣装の人が出てきた。
定員さん、かな?
「あ、えーとっ……知り合いにこういう服が好きな子がいるので、ちょっと目に留まっちゃいまして」
立ち去ろう回れ右をすると、肩を掴まれた。
「えっとー」
「大変いいご趣味の御友人がおられるようで、みなさんもぜひ、試してみてはいかがかしら?」
「いや、ご遠慮しま――」
「いかがかしら!」
「ああ、ちょっとだけ見ていきます」
「モナカ、押しに弱いんだね」
「いいからリンも来るのよ!」
「ええええっ!?」
謎の店員さんに引っ張られ、リンを引っ張りつつ店内に入った。
なんというか、飾ってある服が全体的に黒い。
それにパーツも多そうで、めんどくさそうではある。
「まあ、確かに可愛くはあるのよね」
「モナカ、これなんかは可愛いんじゃない?」
リンが見せてきたのは、インナーやスカートが赤いチェックになっているやつだ。リボンやフリルがゴテゴテしてるけど、この中では比較的カラフルで可愛いかも。
「うん、まあ着られなくはないデザインね」
「あなたたちにはコレが似合うと思うわ、さ、試着してみて」
店員さんに無理やり服を渡され、ぐいぐいと試着室へと向かわされる。
強引だなー、これは着ないと返してもらえないかも。
「まあ、今までの人生で着たこと無いし、試しにいいかな」
「今までの人生って、モナカ、わたしと年変わらないよね?」
「あなたの知らない人生があるのよ」
当時を思い出してしまい、ちょっとため息。
「はあ……」
リンは釈然としないながらも、そのまま試着室へ。
わたしも入って着替える。
サイズを見てなかったので、もしウェストとか入らなかったら恥ずかしいなと思ったが、ちょっとキツイくらいでピッタリだった。
あの店員さん、目測で大きさをバッチリ確認できるのか。おそるべし。
試着室のカーテンを開ける。
リンも出てきたようだ。
「わああああっ! やっぱり思った通り! 二人ともすっごく可愛いわ!」
店員さんはいつの間に用意したのか、カメラでめっちゃ連射で撮りまくっている。
「えーっと、顔面崩壊してますが、大丈夫ですか?」
「じゅるっ、いえいえ、これはおいしそうな……ぐへへへっ」
なんか悪寒が走るなもう。
「ふう、ごちそうさま」
五分くらい写真撮りまくって悶絶していた店員さんが、真顔に戻る。
「ありがとう、美少女にお店の衣装着せて写真撮るのが趣味なの」
「いいご趣味をお持ちで……」
どこの世界にも変態はいるものだ。
「あ! 全身写真も撮らせて! お礼にその服あげるから!」
「いいんですか!?」
リンは、もらえると聞いて嬉しそうにしてるけど、ちょっと引っかかる。
「あの、その全身写真どうするんですか?」
「はぁー、はぁー……だ、抱き枕に……」
「きもっ!?」
「いや、モナカ、相手は女性だし、いいじゃない」
「リン、強い子なんだねぇ」
結局写真を撮られてしまった。
もうせっかくだからってことで、わたしたちはそのままの衣装で買い物を続けることにした。
「ううっ、勢いでお店出て来たけど、すっごい恥ずかしい……」
「ま、周りの視線、すごいね」
「テルトはこれがいいのか?」
テルトは案外すごい子なんだなと、認識を改めることになった。
服を買うのが終わったら、洗顔剤やせっけんなんかも買い足しておく。
異世界って言うと、気になるのが衛生面だけど、この国は一通りそろっているんで助かる。
買ったものは全部リンのポーチに入れてもらったので、ほとんど手ぶら状態。楽ちんであるが、物が目に見えないので買い過ぎに注意しないと。
近くのカフェでしばし休憩。
「モナカと二人でお出かけって初めてだよね」
リンは、けっこうボリュームのあるハンバーガーにかぶり付いている。ファストフード店で見たことある奴の、五倍くらいのボリュームに見える。
それは休憩に食べるものなのか?
とにかくリンはお肉大好きな上、よく食べる。そのくせスタイルはいいのだ。
「そういえばそうだね。たまには二人だけっていうのもいいもんだね」
わたしはシフォンケーキを注文していた。
わたしも、超美少女とかになったおかげで、いくら食べても太らなくなった。というかそもそも食べなくても死なないらしい。それはそれで寂しいので、ふつうに食べてるけども。
「二人でお忍びデートみたいだよねー」
思わず含んだ紅茶を吹きそうになった。
「デートってなんだ! まあ、みんなに内緒でケーキ食べたりとか、ちょっとワクワクするのは分かるけど」
「デートはデートだよー」
「デートデート強調するなー!」
そんなこんなでお忍びデート?は終わった。
ホテルの部屋に戻る。
「ただいまー」
「あ、モナカおかええええええっ!?」
エシュリーがこっちを指さして噴き出した。
「モナカとリンがテルト化したーっ!」
「テルト化ってなんだ、人を病気みたいに!」
言われたテルトがエシュリーに襲い掛かっていた。
「えーっと、何か心境の変化でもあったんでしょうか?」
「えっとー、新しい世界の発見?」
「ニャンコもどうですか?」
「わたしは遠慮しておきます」
テルトにお店のことを話したら、行きたがったので、首都に付いてからテレポートで来ればいいと言ってやった。
明日は早めに出て、首都に付いたら、今度は首都見学だ!




