第二話 幼女神さまの国が終わります
「ちょおおっ!? なに!?」
まだ状況が飲み込めていないさなか、目の前で大爆発が起こったのだ。
ちょっと混乱気味になってしまう。
「うーん、思ったよりも早いなー」
エシュリーは困った顔をしているが、こっちの方がよっぽど理解不能である。
「今、この国は他国から襲撃を受けて壊滅中なんだ。ここは防衛部隊の最後の砦のある街だったりする」
「大丈夫なの?」
「逃げながら話そうか? とにかく、街の入口まで行って外へ出よう」
大丈夫ではないらしい。
一緒になって走りながら、エシュリーに尋ねてみる。
「ひとつ、聞いていい?」
「うん?」
「なんで、わたしをこの世界に連れてきたの?」
「とある理由から、信者を全部取られちゃって……神様って信者がいないと力が無くなっちゃうんだよ」
「そうなんだ」
「きみが、新エシュリー教の第一信者だ!」
「は?」
ぶっ殺して強制的に入信させるとか、どこの過激派テロ集団だ?
「えっと……宗教の勧誘とか、うちはいらないので」
「もう強制的に入信させた、もう抜けられません」
不敵な笑みのエシュリー。そんな表情でも可愛いのがむかつくわ。
「なんか、もー、めちゃくちゃだわ……」
「それと、これからわたしを養ってください」
「なんで!?」
「信者はモナカだけで、今はもう住み家も無いんだよ。ほら、可愛い幼女と暮らせますよ、やったね!」
「自分で可愛いとか言わないで!」
普通だったら、可愛い幼女と暮らせるのは大いに歓迎するところだが、今のこの訳の分からない状況は何とかして欲しいもんである。
「うーん、どう思考を切り替えていけばいいか」
「気楽に考えよう。起きたものはしょうがない。この世界で楽しい生活を築き上げましょう!」
「お前が言うな―」
うーん、けど、気持ちの切り替えは大切かな?
まず、日本でのしがらみは無くなった。
もう、上司のセクハラ発言を聞かなくていいし、仕事に追われて夜中まで残業とか、寝て起きて仕事しての毎日から、解放された。
まだ十五歳。そう設定年齢だけど、まだ十五歳だ!
憧れていたじゃあないか、気楽な少女時代に!
しかも、こんな美少女になれたのだ。憧れの「美人はお得よ生活」が、これから待っているのだ!
「ああ、気持ちを切り替えてたら、なんか現状もいいかもと思えてきた」
「でしょう!」
「そう! わたしは第二の人生で、面白おかしい人生を送るんだー!」
背後で大爆発が起きた。
「さて、では逃げようか」
ちょっと切り替えた気持ちがぐらついてきた。
「とっとと隣街へ逃げよう! 比較的裕福な国境付近の交易拠点の街だから、そこなら問題のない生活が送れると思うよ」
「ああ、そこが第二の人生の拠点になるのか」
言って、手を引っ張られるがままに走り出す。
とりあず、老後の心配も無く暮らせる基盤があればいいな。それであとは、気ままに異世界ライフを楽しむんだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。