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人間から種族:超美少女へ転生し勝ち組人生目指す  作者: 里芋御膳
第七章 幼女神さまの国と科学技術の国
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第百二話 バーゼル本島

 ふと、目が覚める。

 薄暗い室内。微かに聞こえる寝息。

 室内は真っ暗で、だけど部屋の中にいる他の三人の気配は感じられた。

 自宅の屋敷にあるベッドほどのクッション性は無いけれども、今寝転んでいるこのベッドも寝心地が悪いわけでもない。

 なんで夜中に起き出したかは良く分からない。

 ベッドを降り、窓へと近付く。

 閉じられたカーテンの隙間から外の風景を見てみるが、やっぱり今は真夜中みたい。

 外には満天の星空があり、空を漂う雲が右から左へと流れていっていた。

 視界のはるか下には、穏やかな夜の海面が見られる。


 旗艦である飛行船に乗せてもらい、目的地、バーゼル本島へと向かっているところだ。

 自分は疲労感を感じにくい体質なので、夜中に目が覚めたとしても辛くは無いが、他のみんなはぐっすりと眠っている。

 明日には本島襲撃を行うのだ、今のうちに十分に休んでおいてもらわないとならないだろう。

 しかし――


「エシュリーは寝る必要があるのかな?」


 神様って、疲労するような印象は無い。

 まあ、ご飯を食べる印象もあまりないのだが……

 エシュリーの場合、あれこれ食うわ好き嫌いするわ夜も爆睡してるし、なんか中途半端に人間臭い感じなんだよな。

 暗闇になれてきた目を向けると、そこにはヨダレを垂らしてぐっすりなエシュリーの姿が。掛布団をくしゃくしゃにして抱きしめ、寝返りをうっている。


「なんというか……幸せそうな顔だなー」


 そばにより、ほっぺたをつついてみる。

 おもちのように柔らかく、かつ弾力のあるスベスベした肌を指に感じる。

 何度かやったことあるが、気持ちのいい感触だ。

 気持ちがいいので辞め時がつかめず、何度もつついてしまう。


「……う? ふみゅ……」


 エシュリーの小さな口から声が漏れ、うっすらと目が開く。

 起こしちゃったみたい。


「ああ、ごめんごめん。まだ寝てていいよ」


「うにゅ? う……」


 思考が眠っていたのか、よく分からない返事らしきものをよこし、そのまま寝てしまう。


「あっさり寝ちゃったなー」


 怒ったりあばれたりと、掛け合いがあるものとばかり思っていたので少々拍子抜けだ。

 最終決戦前夜と行っても、あまり緊張感は無い。

 今まで負けたことは無いし、仲間が重傷を負うことも無かった。

 なので、今回もどうにかなっちゃうだろうという気持ちしか湧かないのだ。

 ただ、みんながいることで、いろいろと助かっているという感謝の気持ちだけはある。

 再度寝たエシュリーを含め、リンもアリスも気持ちよさそうに寝ている。

 その顔を順に見ていく中で、変な気持ちが芽生えてきた。


「感謝の気持ちとして……」


 アリスのそばに移動し、そのほっぺたに軽くキスしてみた。

 エシュリーと同じくらい柔らかく、それでいてエシュリー以上に張りと弾力が感じられた。不思議な、お花の様ないい匂いが鼻腔をくすぐる。

 次いで、リンにも同じようにキスした。

 エシュリーやアリスに比べ柔らかさは少ないが、もっちりとした感触が心地いい。多少汗のにおいも混じっているが、落ち着く清涼感がほのかに感じられる匂い。

 最後にエシュリーの元へ戻ってきて、キスしてあげた。


「……順番には意味は無いんだよ?」


 わたしは誰に言い訳してるんだろう?

 口に出したことで、最後にしちゃって悪いかな? 一番長い付き合いなのに。なんて気持ちが湧きだしてきて……

 左側に寝返りをうっているので、右が開いている。

 そちらにお邪魔して、一緒に寝てあげる。

 エシュリーの匂いはなんというか、神様的な高貴なものではなく、ミルク的というか完全に幼女様な匂いであった。

 それをぬいぐるみのように抱きしめて、一緒に夢の世界へと旅立つ。




「モナカー、朝だぞー」


 両のほっぺたをつままれている感触に目を開けると、部屋は明るかった。

 どうやらあのまま寝てしまったようだ。


「あ、起きた。おはよー」


「おはほー」


 ほっぺたがつままれたままなので、変な声になりながら、アリスにあいさつを返す。

 このままでは会話できないので、ほっぺをつまんでいる手を引きはがす。


「うやややっ!?」


 すると、つまんでいた本人がバランスを崩し、わたしの上に倒れ込んだ。

 例のミルク系の匂いがやさしい気持ちにさせてくれる。


「おはよーエシュリー」


「うむ。ところでなんでわたしのベッドで寝ているんだ?」


「うん? ちょっとねー……ぬいぐるみを抱いて寝てみたくて」


 昨晩の心情は隠し、適当にでっちあげる。


「わたしはぬいぐるみじゃあ無いって、なんども言ってるじゃあ無いか」


「わたしなら、ぬいぐるみにしていいよ?」


 あきれ顔のエシュリーの代わりにと、アリスが笑顔で両手を広げ、ウェルカムの態勢を取った。


「おー、アリスぬいぐるみだー」


 横で聞いていたリンが、そんなアリスに抱き付く。


「うひゃっ! もー、リンも甘えん坊さんか!」


 アリスがそのリンを優しく抱きしめる。

 それを見ながら、ふとエシュリーに視線を向け、


「わたしらもやる?」


「一晩中してただろうに」


 また、あきれ顔をされてしまった。




 朝食はチーズとベーコンがたっぷり詰まったオムレツに、あつあつ出来立てのマフィン。

 マフィンには生クリームが添えられているが、エシュリーに頼んでコケモモのジャムを出してもらう。

 クリームと合わせて食べると甘酸っぱくて超うまい!

 来たるべき決戦の活力になる美味しさだ。




 館内放送で到着を告げるアナウンスが響く。

 窓の外、前方には緑豊かな大きな島が見えていた。意外な感じだ。

 科学力最強な国なのでてっきり蒸気機関の国スティレルみたく、全面が金属で覆われている景色を創造していたが、案外と普通な景観である。


「いくわよ!」


「おー!」


 みんなでこぶしを振り上げ、全速力で発着場へと向かう。

 リンがポーチからスピーダーを取り出すと、周りから驚きの声が上がる。まあ、驚くだろうな。


「みなさま、お気を付けて」


 この船に一緒に乗船していたヘレナさんから声をかけられ、それに親指を立てて返す。

 スピーダーに乗り込むと同時、飛行船のハッチが開く。


「さて、今日中に全部終わらせるぞ」


「いっくよー」


 スピーダーが急発進し、最高速度のままバーゼルの本島へと迫る。

 向こうも気付いていたのだろう。海岸線沿いに六機の空中戦艦とそれを取り巻く数十機の戦闘機。

 地上にもレーザー砲台やインパルス砲台が陣取っていた。


「毎度毎度同じ顔ぶれで飽きちゃうね!」


 スピーダーの主砲から魔力弾が撃ち出され、前方一帯が大爆発で覆われる。


「わたしも加勢しておこう――【極大爆破アルティメット】!」


「あ、わたしもやっとく! ――【極大爆破アルティメット】!」


 車内から外に向かって展開させた、エシュリーとわたしの魔法がスピーダーの破壊に上乗せされる。


「一気に壊滅させちゃったわね」


 アリスが驚きと興奮がないまぜになった声を上げる。


「いいんでない? こんなスタートの所で足踏みしてもいられないだろうし」


「モナカ! まだまだいるみたいだよ!」


 リンが叫ぶ。

 バーゼル本島の玄関口である巨大な港。

 そこかしこの建造物より、後から後から戦車や戦闘機が湧きだしてくる。


「雑魚は後続の軍隊に任せて、わたしらはそのままバーゼル首都まで行っちゃいましょう! そこの神様倒せば終わりなんだから!」


「了解!」


 周囲に展開されつつある兵力をガン無視し、わたしたちは一路、バーゼル首都までスピーダーを飛ばした。

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