レベル9
じじいは、俺のレベルを考慮して、そこまで強くない相手を選んで召喚すると言った。
しかし、それでも相手は魔物。
油断したら殺される可能性もあるはずだ。
「覚悟はいいな?」
「……ああ」
俺の剣を持つ手に力がこもる。
じじいが杖を振るうと、突然、二足歩行のぱっと見猫の様な生物が、俺の目の前に現れた。
「にゃ!?」
「こやつはシーフキャット。 戦闘力が低い代わりに、身のこなしが軽く、投げナイフを使う」
俺は剣をシーフキャット目がけて振り下ろしたが、後方に飛んで避けられた。
「や、やめろにゃっ! オレに一体何の恨みがあるにゃ!」
……全然好戦的じゃないじゃんかよ。
「なぁじじい。 これ、人選ミスじゃね?」
「……」
俺も戦意を失いかけたとき、あることを閃いた。
シーフってことは盗賊だ。
つまり……
「お前、鍵開スキル持ってないか?」
「もちろん、あるにゃ」
ある意味こいつを呼んで大正解じゃねーか!
俺はシーフキャットに交渉を持ちかけた。
「異世界に帰してやるから、ちょっと協力しろよ」
「……何をしたらいいにゃ?」
夜。
俺とコンタクト、シーフキャットの3人で校舎に忍び込んだ。
1階にある蟻の巣と思われる部屋の前まで来ると、シーフキャットに鍵開けを頼んだ。
「ちょっと待つにゃ」
シーフキャットが針金を使って鍵穴に細工を施す。
ガチャリ、と瞬く間に扉が開いた。
「これは特ダネだ!」
興奮を抑えきれないといった様子で、コンタクトが先に入り、続けて俺も入る。
部屋の中は一面、モニターで埋め尽くされており、テーブルなどが置かれていた。
俺はテーブルの上にまき散らされていた用紙を手に取って読んだ。
「……これだ」
それは、推薦枠のリストであった。
目を通し、希望してる大学の名称がなかったため、俺はほっと胸をなで下ろした。
「コンタクト、あんまり散らかすと証拠が残る。 イジメられたくなかったら、これ以上荒らさない方がいい」
「うぐぐ……」
名残惜しがっていたが、俺の言葉に従い、その場を離れた。
鍵をかけ忘れて……