レベル8
俺が助けたメガネ。
本名は紺卓斗というらしい。
「で、何でイジメられてたんだよ」
「……先にありがとうと言っておく。 あと、僕はイジメられていた訳じゃないんだ」
いや、そういう風にしか見えなかったが……
「蟻の巣を嗅ぎつけたからだ」
「……はっ?」
「ググれカス、と言いたいとこだが、ググっても出てこないから僕が説明しよう」
蟻とは、昆虫の蟻ではなく、コンタクトが3年かけて追っている学校内に存在する組織の名前らしい。
その組織は、裏でビジネスをしているとのことだが、その内容は聞き捨てならないものだった。
「いじめビジネス!?」
「そうさ。 蟻のリーダーは学校の経営者とつながっていて、上納金によって大学の推薦枠を手に入れている。 それをさっきみたいなガラの悪いのとか、成績が底辺でヤバいやつらに、働けば推薦枠をやるって言って操っているんだ」
そして、そいつらに金持ちの生徒をいじめさせて、やめて欲しければ金を出せ、と脅すらしい。
「……推薦枠うんぬん言ってたけど、もしかして、俺の希望してる大学の枠も持ってるのか?」
「どうだろうね。 リストを見なければ分からない」
これは確認しないといけない。
もし枠を牛耳られていたら、俺が大学に行けなくなる可能性が出てくる。
「リストを見るにはどうしたらいい?」
「そこが問題なんだ。 連中のねぐらにしている部屋を見つけたんだけど、マスターキーでも開かないんだ。 それで誰かが入るのを待ち伏せしてたら……」
捕まったって訳か。
「……また明日落ち合おうぜ。 もしかしたら、方法があるかも知れない」
あまり頼りたくなかったが、俺はじじいに相談してみることにした。
河原にやってくると、じじいの家を探した。
「おい!」
じじいは魚釣りをしていた。
ブルーシートの家に住んでいて、丸っきしホームレスだ。
「お、どうした。 異世界に行く気になったか?」
「ちげーよ。 あることに協力して欲しいんだ」
俺が経緯を説明すると、じじいは方法ならある、と言った。
「鍵開け魔法がある。 しかも、お前の努力次第で使えるようになるぞ」
「マジか? 教えてくれ!」
じじいは、魔法を使うには魔力とスペルが必要と言った。
「生まれつき魔力のないものがそれを得るには、魔物を食らうしかない。 つまり、ワシが魔物を呼び出して、お前が倒すのだ。 そしてスペルを唱えるには……」
じじいはブルーシートからある物を取り出してきた。
「アイポッド?」
「この中に、スペルのスピードラーニングが入っておる。 これを毎日聞けば、スペルの正しい発音が身につく」
じじいはアイポッドと付属の本を俺に渡してきた。
「てか、魔物なんて倒せねーよ」
「ならば、やめておくか?」
……鍵開け魔法があれば、蟻のリストを読める。
もしリストに希望する大学が無ければ、問題はない。
とにかく、確認だけはしておきたい。
「……やるぜ」
筆がのった