レベル3
しばらくじいさんの話を聞き流していると、警察官がやって来た。
「もめ事ですか? 事情を説明してください」
俺がこのじいさんに無理矢理ファーストフードを奢らされそうになった、と言うと、警察官はあきれた顔になって注意した。
「はぁ…… いい大人が何してるんですか。 もし次……」
言い切らない内に、警察官が目の前から消えた。
「……えっ!?」
「ワシは転移魔法が使える。 あの男を異世界に飛ばした」
そう言って、今度は俺の方に向き直り、どこからか取り出した杖を向けた。
「お、脅しかよ……」
「もしこのままお前を異世界に送り込めば、丸腰の状態じゃ。 雑魚モンスターにすら適わず、死ぬ」
やばい……
頼みの警察が消えてしまった。
俺はさり気なくカバンに手を突っ込み、何か武器になるものがないか探した。
「……やるっきゃない」
俺はシャーペンを手にした。
それを握りしめ、隙を伺う。
「覚悟を決めろ! ワシと共に異世界に行くと言え!」
「ふざけんなっ!」
俺はシャーペンを握った手を振り上げ、じいさんの頭に突き立てようとした。
ところが、手に持っていたシャーペンがいつの間にか消えている。
異世界に飛ばしたのか!
じいさんの早業に、俺はとうとう降参した。
「……参った。 異世界に行くって断言はできないけど、少しだけ付き合うよ」
その言葉を聞いて、分かればいい、とじいさんはその場に倒れ込んだ。
どうやらMPを使い果たしたらしい。
「面倒くさ……」
近くの病院で、じいさんは目を覚ました。
ベッドに横たわり、点滴を打っている。
「で、じいさん。 俺は何を訓練したらいいんだ?」
「……そこの杖を貸せ」
ベッドの脇に置いてあった杖を渡す。
じいさんが杖を振りかざすと、ドシャリ、と剣が落ちてきた。
「えっ、本物?」
「当たり前だ」
こんな物騒なものを病院の中で取り出すとは……
「家に持ち帰って素振りをするのだ」
「こんなもん持ち歩けないし…… 一旦しま……」
言い切らない内に、じいさんは眠りについていた。
「このクソじじい……」