レベル2
イヤホンから聞こえてきたノイズはこんな感じだった。
「オマエハ、エラバ…… レタ」
俺は静かにイヤホンを外し、呟いた。
「疲れてるってか、憑かれてるわ」
肩が重たく感じるのは勉強のせいじゃなかったか。
俺はそう思って、スプライトを飲み干して店から出た。
「……塾行くか」
現時点で幽霊をどうにかする方法はない。
どうせイタズラみたいなことしかできないんなら、とりあえずほっとけばいいか。
俺が気を取り直して歩き出した時だった。
「気づけや!」
ガードレールに座っているじいさんに怒鳴られた。
「……俺?」
人差し指で自分を差すと、じいさんはこっちこっち! と手招きしてくる。
何だよ一体……
「ワシのメッセージをことごとくスルーしおって! そこの店で話をするぞ」
じいさんは俺の手を引っ張って再びマッ〇に入ろうとしたので、振り払う。
「何でまたマッ〇に行かなきゃいけないんだよ!」
「……じゃあそこのファーストキッ〇ンにするか?」
「そういう問題じゃないって!」
てか、奢らせるためにファーストフードの店を選んでるんじゃ……
結局、路肩で妙なじいさんと話をする羽目になった。
じいさんが言うには、俺は勇者候補として選ばれたらしい。
んでもって、異世界に連れて行きたいが、その前にある程度レベルを上げておきたい、とのことだった。
「……行かないし。 他を当たって下さい」
俺は取り合わない。
「待てっ! お前の将来は勇者だ、塾など行く意味がない! 剣の訓練を受けねば、ワシはお前にまとわりつく」
俺は黙って110番に通報した。