レベル10
翌朝、いつも通り3階の教室に向かい、自分のロッカーを開けると、紙切れを発見した。
「なんだこりゃ?」
その紙には、果たし状、と書かれていた。
以下、内容である。
拝啓、片瀬殿
蟻の巣が見つかった以上、放ってはおけません。
口封じのため、決闘を申し込みます。
明日の夜9時、この校舎の屋上で。
逃げればあなたの周りの人間はタダではおきません。
蟻からの決闘の申し込み……
しかも、逃げれば俺の周りの人間がイジメの標的になる。
「こんなの、行ける訳ねーだろ……」
どんな相手かも分からないし、そもそも複数で待ち伏せされたら勝ち目はない。
何で自分のことがバレたのか、と考えたが、すぐに分かった。
「あのモニターで入り口を監視してたのか……」
面倒くせー、と思わず口から言葉がもれる。
その時、背後から声がした。
「この字は…… 書道コンクールで金賞を取った沖田君の字だ!」
コンタクトがいつの間にか背後にいたため、俺はのけ反った。
「お前、忍者の末裔かよ!」
しかし、そんなことより気になるセリフを言っていた気がする。
「……沖田?」
「ああ、間違いない。 こんな達筆な字を書けるのは沖田君くらいだ。 3年A組、B型、好きな食べ物はざる蕎麦。 そして、剣道部の主将」
剣道部の主将だと!?
そんなやつに勝てるわけねーだろ!
「最悪だ……」
推薦の件が問題なくて上機嫌だった俺は、一気にテンションが萎えた。
放課後、俺はすがる思いで河原にやって来た。
ブルーシートで出来た家に入ると、じじいは一人で詰め将棋をしている所だった。
「何だ、今忙しい」
「ただの遊びで何が忙しいだよ。 もっと大変なことが起きてんだ」
俺が事情を説明すると、じじいは盤上を睨みながらつぶやいた。
「相手は剣道部の主将で、明日の夜までに強くなる必要があると」
「……異世界に味方になりそうな魔物とかいないのかよ?」
「原則で一般人に魔物を見せることは禁じられておる。 お前が魔物を倒して強くなる以外ない」
そして、じじいはあることを提案してきた。
「今夜、校舎の中に魔物を放つ。 それを全て倒して、レベルを上げるのだ」




