9
「俺は水中戦が苦手なんだ。同様に空中戦も苦手だ。俺は地上戦しかできない。だって地球を愛しているから」
僕らは一通りはしゃげ終わった後、鷹野瞬は唐突な自己弁護を始めた。
一度、鷹野瞬は妹に川に沈められていた。この兄、なんで妹に負けてるんだか。
今は夜。黒々とした夜空には星が瞬く。
木々は影となり、風景は色を失った。夜空と焚火だけが、色としての存在を強く主張する。
自然の中にある炎、星。川の流れる水音。木々の騒めき。
蝉鳴く音は聞こえない。代わりにコオロギたちの合唱が、生き物の音としての覇権を取っている。
今、僕たちは移動していた。一通り遊び終えた僕らは、しめとして花火をやることになったのだ。テントの張ってあるキャンプ場では、草木がありすぎるので、最初に車を止めたところまで戻っている。
「秘密兵器もあるんだぜ」と彼は高らかに言う。
「ふーん」と僕は答えた。
僕は鷹野瞬と、彼女は妹と、並んで歩いている。
僕と彼は、暇つぶしに会話を行っている。いつも屋上でするみたいな、斜めから見た批判。高二病的な感じに、偉そうに物事ついて論じる。
内容は次のようなものに関してだ。
なんだか、たまに現実感がないときがある。地に足をつけれておらず、ぼやぼやしてしまう時がある。自分の皮膚を引っ掻いても、他人事のように思えることがある。それはなぜか?
ーー現実性と物語性。
「俺は、現実的かどうかを判断するのは、状況が妥当かどうかで決まると思うんだ」
目の前のことを信じれなくなるような気持ち。それが起こるのは決まって目の前の状況が妥当でない時だと彼は言う。
現実における嘘っぽい光景。それを「物語」という点で比喩的な変換をして、僕らは論じる。作り物めいてる現実は、物語に近しい部分があると直感的に思うところがある。
……物語での不自然。それはなにが起こってしまった時か。
「そして物語において、受け入れられるかどうかは、必然性があるかないかだと俺は思う」
「ふうん。君って、突然神様が主人公を助ける展開とか、いかにも嫌いそうだよね」
「まあな。主人公にその物語の都合が良すぎると、違和感を感じるよ。でも……なんというか、突然の幸運は受け入れがたいのに、突然の不幸とかはすんなり受け入れられるんだよな」
「例えば、突然主人公の親が急死したりする話とか?」
「そうそう。まあ、『不幸が起きた』から物語が始まって、主人公は苦しんで、乗り越えていくっていうのは、物語の『起』として認識するから、それですんなり受け入れちまうのかもしれない」
突然の不幸。
主人公の大切な人が死んで、そこから物語が始まること。
「でもそれって、物語の都合で不幸が起きただけだよね」
「ああ、ある意味でのご都合主義だ。でも、幸運よりも不幸の方が、突発的に起こるものとしては受け入れやすいんだよな。突然宝くじが当たるよりも、両親が飛行機の墜落事故にあった、の方がなんだか現実的じゃないか?」
それは僕らがネガティブな人種だからなのかもしれない、と思う。
しかし、ほとんどの人は宝くじが当たった知らせよりも、大切な人が飛行機事故にあった時の方が現実味を感じるだろう。
そういうものだ。幸せよりも不幸を過敏に感じ取りやすいのが人間である。痛いのも痒いも知っているのは、その感覚を知っていれば避けようとするからだ。痛いや痒いを感じる能力があるから、人間は学習しようとする。肌に残る感覚が、人間に行動を促す。
そうやって『嫌なこと』を強く認識するように、人間はなっている。
「瞬、君って不幸になりたいわけ?」
「そういうわけじゃないさ、ただ……」
「ただ?」
「今この瞬間に、現実味がないんだ。楽しいだけで俺の人生が成立するのは、なんだか変な気持ちがするんだ」
鷹野瞬の物語。
不幸なき世界。現実味が感じられない、作為的な世界。
楽しすぎることに、不自然を感じてしまう、彼の習性。
一貫していて、揃っているのは変なんだ、と彼は言う。
二律背反。善と悪があるからこそ、そこは現実と呼べる。
白も黒もあるのが現実世界。
正しさが一つではないのが現実世界。
幸運と不幸がまぜこぜになっているのが現実世界。
「物語のアンチテーゼだ」と彼は言う。
まぜこぜであること。
例えば、と彼は続ける。
登場人物が一貫できるのは非現実的に見える。それは物語的なんだ。楽しそうなやつはいつも楽しそうに過ごすのは物語的だ。皮肉的なやつが一度も素直にならないのは物語的だ。常にキャラが自分というキャラを守って行動するのは、物語的であって、どこか作為的だ。
――だってそうだろ?
楽しそうなやつだって、どこかで傷ついて悲しんでいる。悲しそうなやつだって、家に帰れば案外楽しく家族と過ごしているかもしれない。大人しそうに見えるやつだって、大声をあげたことがないわけじゃない。
楽しい表情をしているやつが実は楽しんでいないなんてよくある話だ。作為的ではない現実的ってのは、こういうものなんだ。
一貫するわけがない。見せる姿全てが真実本物なわけがない。
人を救いたいと願い、人を殺したいと願う。矛盾した思考に見えるかもしれない。でも本来、人はそういうことを思う生き物だ。嫌いなのに好き、とか。愛憎を感じて生きるとか。善と悪を併せ持ち、全部がぐちゃぐちゃになっているのが、現実なんだ。
そういうものこそが、物語的ではない、現実的ってやつなんだ。
――本心から死にたいとずっと願ってる奴なんて、ほんとにいるもんなのかな?
彼は、自分を物語の中に置いた。だからあらゆることを疑い始めた。画一化された現実を不自然と感じ、躍起になって綻びを探そうとする。
自分を疑い始める。そして、僕のことも。
彼はこういう生き方しかできないのだろう。そして、この生き方はきっと不幸だ。差し出された幸せを素直に受け取れないやつは社会不適合者の極みだ。それは明らかに、生きることに向いてない。
僕は彼の言葉を気にしなかった。まるで相手にしなかった。
されど物語的、という言葉は少し胸に響いた。僕は自分を偽っている自覚がある。配役を演じているのだと、知っている。それは作為的と呼べるものであり、まやかしであり、幻想であり、物語的と呼べるものだ。
嘘と虚像で塗り固めた僕の世界。
やがて、僕らは車を止めたところまで辿り着く。
「さーて、花火だ」
さっきまでの微妙に暗かった話が嘘のように、意気揚々と彼は言う。意識的にやっていることなのかもしれないけれど。
彼は車からたくさんの花火を持ってきた。持ってきすぎだろう、と言いたくなるぐらいに、両腕には大量の花火が抱かれていた。
女子たちは無邪気に喜んでいる。花火は一般的な棒状の、火を付ければ先から炎がほとばしるタイプのあれだ。
僕らは一斉に火を灯す。闇夜貫く閃光。切り裂くような発火音が、花火の先から噴射される。
「綺麗! 綺麗だね!」
彼女がはしゃぐ。いつもと同じ平常運転。楽しくてたまらないという表情は、おそらく周囲一帯の人間を巻き込むほどのものだ。単純でいて強力。純粋で心の底からの感情の発露。
一方、妹は控えめに花火を楽しんでいるように見えた。でも、口元が緩んでいる。楽しくて仕方がないけれど、あえてそれを抑えるような行動は、兄に似ている。
そして鷹野瞬は――。
「アバタケダブルラ!」
ちょっと間違っているハリーポッターの呪文を唱えながら、なんと打ち上げ花火を水平に発射していた。緑の閃光。彼が持つそれはまるで杖のよう。……じゃなくて、それはそんな風に楽しむためのものじゃない。
「なにしてるの」
「ああ、魔法使いの気分になりきってる」
「……いや、あのね」
「アバタケダブルラ!」
禁じられた遊びを行う彼の表情生き生きとして見えた。
「おい、楽しいぞこれ。まじで魔法使いみたいだ。やってみ」
打ち上げ花火を渡される。
僕はそれを杖みたいに軽く振って、魔法を発射した。
「ノリノリじゃねえか」
「うるさいよ」
危険な遊び、もとい不良めいた遊びな気はするけど、こんな広いところなら森に燃え移るということもなさそうだし、被害はでそうにない。誰にも迷惑が掛からないならまあ、腹を据えて楽しんでもいいのかもしれない。
そんなことをしてると、彼女が食いついてくる。
「わー、なにそれ楽しそう! 私もやりたい!」
「お兄ちゃんらしい遊びしてるね……」
二人が魔法の杖を装備する。
「今日から皆は魔法使いだ」
鷹野瞬の宣言に「はあ」と僕は反応する。
「決闘しようよ!」と彼女。
いったいなにをしようっていうんだ。殺し合い?
「いいけど、使っていいのは火傷の呪文だけな。例の三つの呪文は使うなよ?」
「いや、それしか僕ら使えないし、ていうか花火は人に向けて打つものじゃないよ」
「ああ、さすがに冗談だ」
彼の場合、どこまでが冗談なのか本気でわからなくなる。
結局、僕らは四人一列で打ち上げ花火(水平)を発射したりした。斬新な遊びだが、みんなはわりかし楽しんでいるように見えた。
タイミングを揃えよう、とみんな一斉に火をつけるが、タイミングを揃えるのは中々難しかった。しゅんしゅんしゅんしゅん、と発射されていく四本の花火は、流れ星みたいな尾を書いて闇の中に消えていく。
目に焼け付く残光。なんだかおかしな気分になる。
陶酔感。魔法、花火。
それが終わったら、元の普通の花火に戻って、みんなで静かに騒ぐという字面にしておかしなことを行い、花火がすべてなくなったら閃光花火に移って、ぱちぱちと燃える小さな火球を眺めていた。みんなで座り込んで、お互いの閃光花火を見つめていた。誰が一番長持ちするかを競い合った。儚い寿命の閃光花火は、一分もしないうちに全部落ちて行ってしまって、風情を感じさせた。しんみりとした空気を掻き消すように、次の閃光花火が投入された。
そんなことを繰り返していた。みんな夢中だった。多分、僕だって。
鷹野瞬は次の花火を取ってくると言って、今この場を空けていた。妹も引き連れていったので、今は僕と彼女の二人きり。
「ねえ、楽しいね」とにっこりと彼女は言う。
本当に珍しいことに、僕は「うん」と答えた。ひょっとしたら頭がどうにかなる前兆なのかもしれない。そう自分で思うぐらいに、珍しい行動だった。
雰囲気に呑まれていた。夜の闇が、そこにある刺激的な光が、僕の感覚を狂わせる。理性的ではない熱狂感。支配される感覚。波に呑まれて連れ去られる。
「本当に本当に、私、みんなで旅行してよかった。思い出ができた。素敵な思い出が」
零れるような彼女の独白が耳に衝く。
『もうすぐ死んじゃうちゃん』である彼女。最後の夏の思い出。
「私、花火が好きだな。綺麗なものって、やっぱり綺麗で心が洗われるっていうか、なんというか」
いとおしいそうに彼女は言う。
僕も彼女の意見に同意だった。綺麗なものは綺麗だ。僕の狂っていく概念の中で、綺麗なものは象徴的に輝いている。孤高に立つ、僕の中の『綺麗』という概念が僕にとってはとても大切だった。何よりも、と言ってもいいぐらいに。
だから、僕は言った。
「うん。またやりたいね」
彼女が驚いた顔をする。でもすぐに緩やかな顔になって、幸せそうな顔で微笑んだ。
二人っきりで、僕らは夜を満喫している。感傷に浸っている。人間らしく、人間にしかできないようなことをしている。
――その時、空に大きな花火が咲いた。
「え?」
彼女の喉奥から、声になりそこなった声が漏れる。
それは、僕らが持っていた打ち上げ花火のようなものではなかった。巨大な花火。お祭りでやっている、あの巨大な花火だ。
そういえば、鷹野瞬の帰りがやけに遅い。まさか、と思う。
「嘘……みたい」
それは確かに、物語のような光景で。
にわかに信じがたくて、圧倒的で、現実でないようで。
――二発、三発と続けて花火が咲く。
豪奢にして絢爛。
僕らは特等席から花火を見上げる。こんなに近い位置からの花火は、初めて見た。そうだ、特等席から見る花火は、値が張ると聞いたことがある。そんな贅沢を、僕らはしているのだ。
「こんなの、こんなのって」と彼女が呟く。
大空に咲く大輪の花。花火を斜めからではなく、首を真上にまで傾けて眺めるなんて初めてやった。目の前が花火の光景でいっぱいになる。花火だけが、視界を占拠している。
――感動せずにはいられなかった。
だって花火が、花火が空で弾けて降ってくるのだ。光の残滓がキラキラと、視界いっぱいに広がっては消えていく。視界の埋め尽くさんばかりのとても綺麗な花火。光の洪水。
また打ち上がる。弾けて咲いて、降り注ぐ。僕らの頭上で、光の粒子が何度も瞬く。
いろんな色の花火が打ちあがっていく。息が着けない。あまりにも圧倒的で、信じられない光景で、目を離せなくなる。
僕はなんとかという体で、彼女の横顔を見る。
――彼女は涙を流していた。
とても綺麗に。
「すごい……ほんとうに、すごい……」
手で拭うこともなく。
「人生で……こんなのが……見れるなんて」
打ち震えていて。
「私、こんな風に綺麗に死にたいなあ」
綺麗に死にたがる彼女。悔いを残さぬこと。後悔しないために楽しいことをして、全部味わって、その後綺麗に死ぬこと。
ねえ、と彼女は言う。思わず零してしまったみたいな声。
「私って、本当に死ななきゃダメなのかな?」
――どうしても、なんだか信じられないんだよ。私。
「嘘じゃ、ないのかな。この光景みたいに、全部夢だったりしないのかな?」
――彼女はとても綺麗に、涙を流す。
僕は、圧倒される。
何も言えなくて、僕は彼女の手を握った。何の意味があるのかなんて、わからなかった。でも、それが僕の返事だった。口では言えないから、そうするしかなかった。
ねえ、と彼女は言う。
「君は私と一緒に死んでくれるんだよね?」
「……うん」
「そんなの、嘘だったらいいのにね」
「…………うん」
物語の中にいるような錯覚を覚えていた。目の前の現実を、現実として見ていなかった。
花火があまりにも綺麗だから、彼女があまりに綺麗だから。
彼女はいつだって、とても綺麗に死にたがる。それが彼女が生きる意味。
それはまやかしだった。死ぬことは救いにならない。単なる破滅であって、死を求めることは堕落に他ならない。投げやりに生きても、落ちぶれるだけだ。だがそれでも、そうすることしかできなかった。もうすぐ死ぬ人間は、自暴的になるしかなかった。
救いなんてどこにもなかった。歪み切った偏執的な信念こそが、最後に残った意地だった。
それが少し、僕には悲しかった。他人事だから……なのかもしれない。
◇
「隠すのは卑怯だと思うから、『死んじゃうクン』にはいっておくね」
「なにを?」
「……うん。実はね、君はまだ生きれる可能性があるんだよ。病院からももうすぐ教えられるとおもう。君の病気、『概念色欠乏症』の進行が完全に止まった事例が最近見つかったの。その人は自分が圧倒的な変化を、感動を経験したらしいよ。それが進行を止めるトリガー、って感じだってほぼ結論が出てる」
「ふうん。一つの病気の打開策が見つかったのは喜ばしいことだね」
「君は嬉しくないの? 病気が治るかもしれないんだよ? 生きられるようになるんだよ? 失われた概念は確かに戻らない。でも、心のどこかで覚えてるものは戻ってくるらしいんだよ。今の生が絶望的でも、きっとそこそこ健全に生きられるようになるんだよ」
「どうでもいいよ。もう死ぬことは決めたことなんだ」
「……私との約束のせい?」
「バカにするな。そんなものじゃない。僕は最初から生きたがりじゃないってことだ。いろいろ考えて決めたことなんだ。僕は妥当に死ぬ。それでいい」
「『死んじゃうクン』、『圧倒的』なものだよ」
「……」
「『圧倒的』なもの。それを手にいれれば、君はまだ生きられる。私とは違う」
◇
鷹野瞬が戻ってきたころには、すっかり彼女の笑顔は戻っていた。「綺麗でしたね」という妹は機嫌がよさそうだった。
そして、鷹野瞬はさらに上機嫌だった。
「圧倒的、だっただろ?」
「ああ、すごかったよ。……これ、お金いくら使ったの?」
「そのためのバイト代だ。どうせこれはこうやって使う予定だったんだ。気にすんなよ?」
圧倒的な物語。鷹野瞬はそれを望んだ。
そして、僕らに共有してくれた。たぶん、そういうことだ。ずいぶんと気前がいいものだな、となんだか暖かな気持ちになる。
僕らはキャンプ場に戻ることになる。鷹野瞬を先頭に、行進を始める。どこか夢心地な足取りで。
僕はさきほどの光景に足を取られていた。地に足がつかない。現実感がなかった。
みんなとの距離が離れる。迷子になったりはしないだろう。だが気を使ったのか、妹が歩くペースを落として僕と並んでくれた。
「先輩、大丈夫ですか? 病気、とかですか?」
「いや、違うよ。そんなに心配しなくて大丈夫」
心配してくれるこの子は、きっと悪い人間ではないのだろうな、と思った。
あの日の対決を思い出す。
『お兄ちゃんは、前はこうじゃなかった』『あなたが死ぬことの誘惑を吹き込んだんでしょう』『――最低』。
ずいぶんと態度が変わったものだ、と思う。
妹は気まずそうにしている。なんども口を開きかけては閉じる。
それはしっかりと見えていた。でも、僕はそれを放置する。
「ねえ、先輩。その――」
言いかけてはやめる。言葉を飲み込む。
いい加減煩わしくなって「どうしたの?」と聞く。
「その、相談があって」
「お兄さんのこと?」
「……本当に、人の心を読むのがうまいですね」
「君が考えてるのはそのことぐらいでしょ」
冗談めかしていうと、険が取れたように、顔のこわばりが消えた。
「先輩、私、お兄ちゃんに死んでほしくないです」
「彼も死なないように頑張ってるみたいだよ。君の出番はないんじゃない?」
「はい。そうかもしれません。こういうのは、当人にしか解決できないものだから。でも私、せめてお兄ちゃんのことを理解したいんです。寄り添うぐらいのことはできるように」
切実だった。
できることをしようとしていた。
そういうのは、嫌いではなかった。
そもそもを言えば、僕は他人のことを考えれる人間のことが……嫌い……ではない。
「そうだな。自殺してしまう原因って、君は何か知ってる?」
「えっと……いじめとかパワハラとかでしょうか?」
「ああ、そういうことじゃないんだ。わかりにくくてごめん。僕が言っているのは、『きっきけ』だ。なんで実際に自殺、という行動を起こしたかってことだ」
「それは……ひときわ辛いことがあったから、とかですかね?」
妹の言葉は、微妙に的を得ているが、本質的には少し違う。
「学生が自殺するのは夏休み明けが一番多いって話、知ってる?」
「はい、聞いたことはあります。学校によっぽど行きたくなかったんですかね」
学生の自殺は、夏休みの終わりに集中している。いじめに耐え兼ねて自殺する生徒なら、いじめられている期間の最中に自殺を選ぶはずだ、と直感的に思うだろう。夏休みのあとに死ぬのはおかしい。夏休みという休憩時間を挟んだのだから、精神的なライフポイントが回復しているはずだ。そんな風に。
でもそれは違う。
「もっとも辛い時期に、人は死なないことが多いんだよ。パワハラに耐え兼ねての自殺より、耐え兼ねての退社のあとに自殺する、みたいな」
ずっと辛くても、辛いことが日常になってしまえばそこからの変化は案外起こらないものだ。もちろん、例外はあるけれど。
「それって、なんだか変な話ですね」
「まあ、一例なんだけどね。ようするに、本当に自殺してしまうのには、なにかのきっかけが必要なんだ」
自殺するためにも、理由がいる。
それは例えば、末期のおじいちゃんが孫の顔を見て息を引き取ったり。サバイバルで妹を守った兄が、救助が来るのを見た瞬間に目を空けられなくなったり。自分のペットが死んだからもう死んでもいいか、と思って本当に自殺したり。
『きっかけ』だ。重いものから些細なものまで、それらはごまんとある。
僕は思う。鷹野瞬がここまではっきりと死にたがり始めたのには、なにかのきっかけがある、と。
「お兄さん、いつからそんなに変わったんだい?」
「えーと……だいたい、半年ぐらい前からですかね」
「その時、なにがあった?」
死にたいと元から思っていた鷹野瞬。でもそれは、ある出来事を境に深みは増し、決定的な変化を及ぼした。
「……あっ、うちで飼ってた猫が死んじゃいました。でも、確かに私も悲しかったけど、猫は人間じゃありません。自分の死を見つめるほどのことなんですかね?」
「そこは人によって変わるんだ。価値観によるから。でも、お兄さんにとっては重要なことだったんだろう」
たかが動物の死、ととらえることはできる。でも、初めて身の回りで生き物が死んだととらえることもできる。まあ、これは推測にすぎなのだが……多分当たっているはずだ。初めての身の回りの生物の死のせいで『死』という概念を強く考え始める人も多い。一般論。
「少しはお兄さんのことが理解できた?」
「私……そんなことにも気づかずに……」
「そこから考えていけば、たぶんだけどお兄さんのことが多少なりとも理解できるようになると思うよ」
責任はとれないから、そこからの思考は妹に任せることにする。僕の出番はないし、これ以上は義務も義理もない。
妹は深く考え込み始めた。もうすぐ、キャンプ場につく。
「ねえ、先輩」
「うん?」
「それって……違ってたらすごくもうしわけないんですけど……それって、先輩の考えたことなんですか? 今のお兄ちゃんみたいに、先輩はなったことがあるんじゃないですか?」
――俺の考えは、全部お前の後追いな気がするよ。
「瞬からなにか聞いたの?」
「いいえ。私が今、そう思っただけです」
似通った思考。
結局僕は「どうだか」と受け流すことにした。妹はなにか言いたそうだったが、追及してこなかった。
◇
「おーい、遅いぞー」
せかす声がキャンプ場から聞こえてくる。
僕と妹はやや急ぎ足で鷹野瞬の元に向かう。
「キャンプファイヤーやるぞ。はやくしてくれ」
「まだ遊ぶの?」
「しめだ。これで最後だ。夏を謳歌しようぜ」
まあ、最後の遊びらしい。楽しもうぜ! と彼は言う。
僕は鷹野瞬と協力して薪を運んで(持ってきた荷物の中に入っていた)、地面にばらまく。
前にも言ったが、鷹野瞬はすごいやつだ。なんたって、彼はキャンプ経験があるらしく、摩擦で火を起こすことができる。
「あれ、できねえ」
そうでもなかった。
「ライター使うわ」
「昼はできてたのにね」
「まあ、そういうこともある」
大人しく人間が築き上げてきた文明の利器を頼り、着火。そこから火を伝えるのは朝飯前らしく、彼の手腕でどんどん火は大きくなっていった。
キャンプファイヤー、といったが、実際は焚火をしている感じの規模だ。
「しめだ! 楽しむぞー!」
鷹野瞬が盛り上げる。みんなが追従する。
「ほら、おまえもやれよ」
「強制はよくないよ」
「まあ、俺はおまえのこと信じてるから」
「そういうのってずるいよね。……おー」
思いっきり楽しむことが彼の目的なのだし、多少卑怯な手でもどんどん使っていくつもりなのだろう。頑張って僕も騒ぐことを心に決めておく。
彼女が手を高々と上げる。ハイテンション気味に。
「はーい! では私がこれ企画したので、内容言いますねー! 名付けて、『嫌いなものを燃やしてけ大会』。 みんな、燃やしたいものは持ってきたかー?」
そんな企画、聞いてない。
鷹野瞬が懐からなにかを取り出す。
「人参だけは許せねえ」
「焼いたら美味しくなりそうだねー! 妹ちゃんは?」
「私は元カレの写真持ってきました!」
「いいねー! 嫌な思い出を焼き焦がせ!」
さすがはこの兄妹二人、揃って頭がおかしい。
まともな僕ではこの祭りに参加することは難しそうだ。
「じゃっ、私がまず見本みせるねー。私が持ってきたのは聖書! 運命が憎い! くたばれゴット!」
彼女もたいてい頭のおかしいやつだったことを、僕は今思い出した。
聖書の種類によってはテロが起きても仕方のない暴挙だ。
「ファイヤーゴット!」
死んでしまう彼女の運命。
恨んでも仕方がないとは思うが、八つ当たり的だ。
順に炎に嫌いなものを投げていく。
「人参はこの世からなくなれ!」と鷹野瞬。
「最悪の相手だった……」と妹。
僕は……。
なんだこれは。えっと、楽しまなくちゃいけないんだったか?
「手持ちがないんだけど」
「ほら、なんでもいいからなんか燃やして!」
「じゃあ、心で」
「え?」
「うおおおお!」
微妙な顔をされる。手持ちがないのだから、燃やせるのは己しかいなかったのだ。
死んだ空気。
「……いえーい!」
叫んでみる。
しらけた。
「ねえ、無理してる?」
「うん。君が燃やせって言ったからね」
「心は燃やさなくていいよ?」
不完全燃焼。
……慣れないことはやってみるものじゃない。
「先輩、頑張りましたね……」
なんだか胸に痛い発言だ。
「なあわかってるか? 今おまえかなり滑ったぞ?」
こっちは違う意味で胸に痛い。なんというか直接攻撃的だ。
僕らは何事もなかったかのように、焚火でマシュマロをあぶり始める。スルメとかもあった。
彼女が遠慮がちに口を開く。
「君でもあんなことするんだね」
「現実では大人しいやつでも叫ぶこともあるし、いつも元気な人が鬱一歩手前だったりすることもあるらしいからね」
「なに、君、鬱一歩手前なの? まあでも私、君の頑張ってる姿にあれ感じたよ。……ギャップ萌え?」
「……そう」
ギャップ萌え、と彼女は再び呟く。気に入ったらしい。
確かに、日頃から抱く印象の高低差は新鮮な思いを抱かせることもあるだろう。
しかし、
「そんな言葉で僕を抽象化してほしくないんだけど」
「でも、概念的には正しくない?」
「違う」
「違わない。ギャップ萌え」
病気で頭がおかしくなっている『死んじゃうちゃん』には話が通じないので、鷹野瞬に話しかけることにする。
「ねえ瞬」
「うるせえ。今俺に話しかけんな。俺はお前らの微笑ましいやり取りを一生見てたいんだよ」
「……」
話しかけてもまともな対応をしてくれないので、彼女の方に向き直る。
彼女はくすくす笑っている。
「ギャップ萌え」
妹の方に話しかけることにした。
「ねえ、今日暑いね」
「天気の話から始めるコミュ障みたいな話の始め方しますね」
「そんなに厳しい対応しないでよくない?」
「仕方ないですよ。二人で会話を続けてください」
「……そう」
フラれてしまったので、再び彼女の方に向き直る。
「ギャップ――」
「しつこい!」
彼女のすこぶる上機嫌。憎ましい。
やはり人には向き不向きがあるのだな、と僕は痛感する。というか、一度のミスでここまで責められるのには本当に驚いた。なんなんだ。
絶対にこんな真似、二度とやらない。
……僕は鷹野瞬が楽しめ、というから、無理をしただけだというのに。
もやもやするものを引きずったまま、時間が経過していく。
僕らは自然な雑談をし、それをそこそこに楽しんだ。
「さて、そろそろお開きにするか」
鷹野瞬がそう言った時には、時刻が十二時を回っていた。
異論はなく、テントの中で眠ることになる。
と、その時だった。
「あ、お兄ちゃん。今日一緒に寝ようよ」
「……は?」
突然の爆弾発言に、彼は戸惑う。
「ねっ、いいじゃん。兄妹水いらずでさ」
そういって、カップルのように彼の腕に巻き付いた。
彼は怯んだ。しかし、振りほどきはしなかった。
「いや、お前わかっていってんのか? もう俺たちはいい年だろうが。さすがにまずいだろ」
「でも友達で今でも一緒に寝てるっていう子もいるよ」
「それはずいぶんと……不健全だ」
助けを求めるような目がこちらに来る。
無視した。
「助けてくれ」
耐えきれなくなったように、彼は哀れっぽい声で鳴く。
「ねえ瞬?」
「な、なんだ?」
「僕は君たちの微笑ましいやり取りを一生眺めていたいんだ。僕に喋りかけないでくれ」
彼の顔が真っ青、とまではいかなくとも、確実に歪んだ。
そして彼は、自分を救ってくれそうな最後の一人に目を向ける。
「部長……」
「応援してるよっ」
「部長! てめえ!」
まあ、この辺にしておいてあげよう。
「冗談はおいてといて。テントは狭いし君らが一緒に寝ると僕らが一緒に寝ることになる。それは困る。だからまあ、その話はなしだね」
単純な正論で、場を収めようとした。
――縋るような目付き。
妹。切実な目で、こちらを見ている。
泣き落とし。同情を誘うような。おそらく、妹が好まないような手段。
鷹野瞬は妹と腕を組んでいるから、妹の表情に気付いているのは僕と彼女だけだ。
僕には妹の気持ちがわかった。たぶん、彼女は兄に向き合うとしている。支えになろうとしている。
――私、少しでもお兄ちゃんのことを理解したいんです。
テントの中で行われるのは、不健全なことではなく話し合いだろう。腹を割った、兄との対決を、妹は望んでいる。
だが僕には関係のない話だ。それに、彼女は妹の事情がわからない。
だから通るわけがない。そのはずだった。
「そっか」
深い声でそういった彼女の姿は……気のせいかもしれないけど、鷹野瞬のことをよく理解しているが故のものに見えた。
……そんなはずがない。彼女が彼のことを理解しているはずがない。そんな機会がないし、彼女に彼が理解できるとは思えない。
これは果たして、僕が彼女を侮っているのか?
「ねえ、行ってあげて。大切な話があるからしいから」
わからない。でも僕には、どう見ても彼女が彼のことを理解しているように見える。死にたがっている彼のことを、深く知っているように見える。
彼女が勉強同好会発足以前から彼のことを知る機会なんて、なかったはずだ。
彼は気圧されていた。彼女の思わぬ反対と、妹の押しに。
彼は彼女の目を見ていた。なんだか弱みを握られているような、そんな目を彼はしていた。
「……わかったよ」
「わーい、お兄ちゃん大好き!」
「……はいはい、愛してるよ」
なんだか元気のない彼を引きずって、兄妹はテントの中に消えた。
「ね、二人っきりだね?」
「…………あ」
「あー、今夜は『死んじゃうクン』と床を共にするのか~。ついに行きつくところまで、来てしまったね?」
「……そうだね。今日はお祝いだね」
適当な冗談でさえも苦しい声が出る。
「愛してるよー!」と全然愛が籠ってなさそうな声で彼女が叫ぶ。
「愛してるよ」と僕も小さく呟いたのが、すでに彼女はテントの中に入ってしまっていた。
……聞けよ。
◇
鷹野瞬に言って、さすがにこれはなしだろう、と言いに行こうとは思った。
明らかな自分の不手際だった。さらに言えば彼女といることは苦痛だった。概念は彼女に嫌悪の情を植え付ける。
でも、そのせいで彼女から必死に逃げようとするのはなんとなくプライドが許さなかった。わかるだろうか? この独特で意味の分からない意地。『嫌なこと』から逃げるのはなんとなく憚られる。
……まあ、間違いなんて起こらないだろう。少なくとも僕はそんなことができる脳をしていない。
そして結局、現在はテントの中だ。小型の照明がテント内を照らしている。荷物は外。
彼女が深々とため息をつく。
「暇だね」
「そうだね」
「新婚ごっこやろっか」
「嫌だよ」
彼女は僕の発言を無視した。
「あなたー、もう寝る時間ですよ」
「君、普通に眠いんじゃん」
「いやあ、まあ。でもこういう機会ってなかなかないし、ぜひ眠気を覚ましたい」
「永眠して」
切実な思いだった。
「一緒にえっちな永眠、する?」
「それってどういう概念なの……」
「乙女の口から言わせないでよ!」
「……絶対今適当に作った造語だよね? 明らかに意味なんてないよね?」
「裸で抱き合ったまま心中することなんかは、それにあたるんじゃない?」
「そうかな……?」
どうなのだろう。どうでもいい。
なんだか、悪い気に当てられている気がする。夏の熱が、人を狂わしておかしな雰囲気にさせている。
楽しい雰囲気。彼が作り出した流れ。彼の物語の濁流。
彼はよくやっているよな、と痛感する。
僕は電気を消した。
「あっ、卑怯。夜はまだまだこれからだっていうのにー」
「もう僕は寝たから。もう返事はしないから」
「そんな小学生みたいな」
僕は寝袋にくるまって固く目を瞑る。夜の闇は得意じゃない。
襲い来るのは若干の恐怖感。でも、彼女の前でそんな姿を見せるわけにはいかない。
眠りに落ちて、脳が活動のほとんどをやめてしまって、
――次に目を開いた後の景色は。
いったいなにが広がっているんだろうか? なにが欠落した景色が見られるんだろうか?
笑ってしまう。僕は小学生みたいに、夜を、眠ることを恐れる。
「ねえ、『死んじゃうクン』。起きてる?」
「……」
「ねえねえねえ」
「……」
「返事がない。ただの屍の様だ」
元気なやつだ。
「『死んじゃうクン』。……『死んじゃうクン』?」
「……」
「ねえ、ねえってば」
「……」
「ね、ねえ」
◇
魑魅魍魎の夢の世界の中だった。
ここは真実の世界だ、と誰かが言う。
一人の男がいる。彼は必死で積み木を積み立てている。しかしそれは容易く崩れてしまって、彼は悪態をついている。
それを何度か繰り返したかと思うと、一定のところまで組み立てたところで思い切り拳で破壊した。
「なにしてるの?」と僕は聞く。
「確かめてるんだ」と彼は言った。
彼は宙に浮かんでいる呪文を詠唱するかのように唱え始める。
「積み上げたものを破壊して、なんだったかを自覚してるんだ。強い信念は強い否定を背景にして完成する。救う・見捨てる を選ぶとき、残った片方について考える。人を救う必要が一体あるのか? 見捨てたらどうなるのか? それを深く考え自覚して、ようやく人を救うという信念は完成する」
まるで物語だ、と彼は言う。
「もっとも強烈でいて過激な手段だ。生きるために死ぬことを考える。刃の上で心臓を滑らせるような真似をして、ようやくそれは完成するんだよ。一歩間違えれば崖から落ちる。でもそれが必要なんだ」
彼の言うことは、よくわからない。
彼は憎しみを込めた眼光を放ってきた。僕はたじろいで彼から遠ざかる。
次に会ったのは女だった。とても白い眩い女。強烈な意思が見て取れる。
「なにしてるの?」と僕は聞く。果たして彼女は答えた。
「ずっと考えてた」
「……」
「ずっとこんな時間が続けばいいのにって。でも、それは続かない」
「……」
「なら、壊したほうがいいのかなって」
それは……違うと僕は思う。でも口が裂けてもそんなことは言えない。腐った生き方をしてきた僕には権利がない。
「死にたくないよ」と彼女は言う。
死にたくない、死にたくない、死にたくない。
でも――。
「きちんと死ななくちゃならない」
彼女は真っすぐに僕を見つめた。
やめてくれ、と僕は思う。彼女は悲しそうな顔をした。
「なんで君は泣いてるの? 何にも感じないんじゃ、なかったの?」
◇
「『死んじゃうクン』、『死んじゃうクン』!」
誰かが呼ぶ声。
「×××クン! ×××君!」
何かを掴んだ。視界が明るくなる。戻ってきたような感覚。怯えたような表情の彼女の顔が目に映った。
「ほんとうに……よかった」
「……」
「大丈夫? うなされてたよ?」
「…………」
圧倒的な熱が体を支配して、彼女を抱きしめた。衝動が体を動かした。
「ひゃっ、なな、なに!?」
「いなくならないでよ」
「……」
「いなくならないでくれよ。なんで、なんでこんなことに」
感覚が侵されている。今も僕は彼女の熱を感じない。
『概念迫観念症』。病気はさらに悪化した。これからさらに僕は多くのものを失っていくのだろう。
心細かった、弱気になっていた。それは言い訳なのかもしれない。
僕はおそらく、彼女にこんなことを言ってはいけなかった。
「無理だよ。私はいなくなる。きちんと綺麗に死ななくちゃいけないんだよ」
「嫌だよ。なんでだよ、なんでだよ……! 君は……」
言葉は彼女の人差し指によって縫い留められた。宙づりになってはじけて消える。彼女がそうしたのだ。
彼女はとても悲しそうに微笑んで見せる。それが嫌で、僕は泣きそうになった。
「なら……せめて僕は君と一緒に死ぬよ」
それが僕にできることだから。それしかないから。命の使い道なんて他にはなにもないから。
震える僕の体を、彼女は優しく抱きしめる。
「よしよし」と彼女は言った。
「君は…………だよ」
今、なんて?
「君は…………なんだよ」
僕にはその声が聞こえない。音が塗りつぶされてしまってなにもわからない。
それは病気のせいなのか、現実からの逃避なのか。
僕にはわからなかったのだ。誓って。




