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ユサブル ユレル クレル

 もうすぐ学校行事が行われる。その為、今週から休み時間や放課後は、執行部やその他係りの人達が作業をするようになった。香もその一人である。そして光一もまた。

 しかし、香と光一は担当する部が違う。それでいて、作業は同じ部屋、同じ場所でするのである。もちろん、一つの部に一人という訳は無く、光一は別な生徒、別な女子と共に作業をするのである。

 光一と一緒に作業をしている女子は光一に好意を、いや、それ以上の感情を寄せているらしく、度々、不必要に、不自然な程に光一に接近しては、笑顔をみせている。それが香には堪らなかった。

自分も何かと理由を付けては光一のもとへ行くのだが、度が過ぎれば他人が見た時不自然なのは間違いないし、なにより、その行為は光一といる女子に対する自分の「嫉み」「僻み」である事を自分自身がよく知っていた。

 それは香にとって、その女子が光一と只の係員同士としてのよりも親しくしている事以上に堪らない事であった。

 その時であった。光一と女子の、二人の顔が近付いた。わざわざ、一枚のプリントを二人で覗き込み、同じ箇所を二人で作業していく。必然と二人の距離は縮まり、二人の頭が近付き、二人の顔が近付き、そして、二人の眼が近付いていった。

 「―嫌!―」

香は心の中で叫び声を上げた。だが、それで何が変わるという訳でもない。依然二人はそのままだ。時々、互いの肩が、手が、髪が触れ合っている。

「―駄目!それ以上彼に近付かないで!―」

「―それ以上彼に触れないで!―」

「―…それ以上…、―」

二人の眼と眼が合う。二人ははにかんだ。何時からだったのだろうか。二人の顔は赤らんでいた。

「―それ以上、彼に貴女を刻まないでぇっ…!―」

 香の目の前で、二人が笑い合いながら、楽しげに作業を進めてゆく。

「―…ここに居たくない…。―」

「―…胸が…こんなにも胸が苦しいよぉっ…!―」

 香の右手は制服の胸元をしっかと握り締め、左手は床を強く引掻いた。

「眼」には「まなざし」という意味もあるんですよ。物語中のシーンに合ったものとして「目」ではなく「眼」を使用しました。ちょっとした自分なりの工夫です。

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