サンドラとぬめで迷宮について
「ねぇねぇ、この世にダンジョンってないんですか?」
これだけファンタジーまみれなのだからあるんじゃなかろうか。寿命が長そうなので是非娯楽として検討したい。しかしながら二人の返答はつまらないものだった。
「だんじょん?」
「なんだそれは」
少しの期待をこめてダンジョンを説明しよう。翻訳魔法がちょっと違う判定してるだけかもしれないから!
「ダンジョンって迷宮のことです。道やら階層がありすぎて迷いそうな遺跡とか洞窟、塔とか」
「聞くだけだと大規模だが誰が作るんだ? そんな迷惑なもん」
「目的がわからん。リターンがないのう」
利益がないといらないらしい。ありますよ! 利益!
「中には魔獣がわんさかいて素材が取り放題です。場合によっては入場料とるかも?」
「釣り堀の魔獣版か。税金がかなり痛い。ついでに迷宮じゃなくて牧場にすべきだ。増えかたがちがう」
「入場料なしに普通に移動狩猟民は狩りをしているが。坊主の日に寄る施設かのう?」
なんか違う!
「こう、何でできたかはわからないけど魔獣がわきだしてくるので対策しなきゃ! みたいな謎の建物で国中から力自慢や一攫千金を夢見る冒険者がくるんですよ」
「わきだしてくるのなら結界で閉鎖すればいいのでは? 共食いで減るだろ」
「冒険ができる時点で千金のスポンサーがつく成功者なんじゃが。旅人でもなく冒険家がくるような僻地、魔獣が大繁殖なんて珍しくもないし誰も行かぬが。そんなところに魔獣の釣り堀???」
釣り堀からは離れてよ! 最初に経営を持ってきたのが大失敗だった。
「運営は見つけた人があとから考えればいいんです。だから自然発生的にできたとか魔力の吹きだまりからわきだしたとか、後は魔王的な人が人類を征服しようと作ったりとか」
「作る側なしにはじまらんだろう。自然で建物はできない。魔力の吹きだまりは妖精が行水するように集まるくらいだ。あと魔王はいるぞ?」
「ハラーコの言葉からすると魔王の意味が違いそうじゃのう。まぁ、今代の魔王はそんな物騒ではない。平和主義じゃ」
魔王はいるのに平和主義って普通に国作ってる系なのか? というか私は魔力の吹きだまりで行水する生き物だったの?
「ああ、混乱の回転だな。魔王はアデン王都で十年毎に開催される魔法大会の優勝者に与えられる称号だ。大陸中から腕自慢が集まる。紛れ込んだ妖精が魔王することが多いがな」
「なんと。もしや引退した前魔王のクレメンスは……」
「あれは妖精だな。しかも島出身の。記憶に魔法使いのものが結構あったらしくて『やりたいことリストに魔王を加える!』って思い出してすぐに大陸まで出掛けた。今は島にいるよ」
「なるほどのう。ヒューマンの成りをしているのにえらい魔力だと思ったんじゃ」
「ちなみに今の魔王はちゃんとした人類な。ダークエルフだけども。クレメンスを島に返すために叩き折りに来たクレメンスの伴侶だ」
「それってちゃんとした人類じゃないような気が……エルフだと思っておった」
「エルフに偽装してるな。ヒューマン偽装のクレメンスを折るには更に魔力を出せるエルフじゃないとおかしいだろ? ちなみに一期で引退予定だ。夫婦で新大陸探しに行くらしい」
混乱から解けたら話題には一ミリもダンジョンが残ってなかった。悔しい。ないならいつか作ってやるんだから!