突然の告白?
バイト先で始まる恋愛っていいですよね。
友達の恋愛話を聞く感覚で、よんでいただけたら幸いです。
本作は声劇台本風となっています。
<バイト先事務所にて>
真:はぁ〜。俺なんか、一生彼女出来ないって。
亜希:いいこと考えた!それじゃ、私がいまから彼女ね!よろしく!
真:おい、ちょっとまてぇ、なに急にいいだしてんだよ!
亜希:いいじゃない、減るもんじゃないし。
真:減るもんじゃないけど…さてさて、なにを企んでいる?
亜希:なにも企んでいないって。さーてなにを買ってもらっちゃおうかなー。
真:おいおい、やっぱり企んでいるじゃないかー
亜希:冗談だって。それでは彼氏さん、今日も一緒に帰ろうね。
真:今日「も」って、その「も」は何処からでてきたんだ?
亜希:いつだったっけ?一回だけあったでしょう?一緒に帰った日。
真:
またまたえらく古い話を持ち出してきたなー。
俺がこのバイトに入って何日目かのことだろう?かなり前の話だぜ。
亜希:ま、いいじゃない。小さな事だよ。
真:そりゃそうだけどな。あ〜あ〜、彼女かー!いいなぁ。欲しいなぁ。
亜希:だからぁ、私が今から彼女だって。
真M:
冗談みたいな告白?だったけど、本当に彼女はできたんだ。
驚きでもあり嬉しくもあり、でも、なかなか実感が湧かなかった。
もっともそれは俺だけのものみたいだったけどな。
亜希:あのさ、今度の週末、ちょっと付き合ってくれる?
(休日の駅前)
真:誰と会うんだよ?
亜希:いーからいーから、黙ってついて来たらいいの。
真:いきなりお父さんに会わせるっていうのは無しだぞ。
亜希:いずれはそうなる運びとなりますが、今日は違うよ。
真:そうなのか?とりあえず、あんまり緊張するところは嫌だぞ。
亜希:あー待った?
由美:
今来たところだよ。なーんて、10分くらいかな。
おっと、これが噂の彼氏さんだね?
ふむふむ、背は高いじゃない? その靴上げ底?
真:おいおい、いきなり失礼なこと言われてないか?
亜希:それがね、上げ底じゃないんだよ。いいでしょ?
由美:パットしない感じもするけど、あんたの趣味なんだろうね。少し変わった?
亜希:いやー変わってないよー
由美:そう?前は…
亜希:あー、前は前でいいじゃないのー。それよりー
真M:
前があったんだ…まぁ、確かに普通より可愛いよな、多分。
性格は置いておくとしてな。
由美:今日はその...、洋服見に行くんでしょ?
亜希:良い店あったんだよ、裏通りをぶらっと歩いてたらさ。
由美:
そういえば、最近何軒かお店変わったみたいね。
シャッター街ってテレビで言われてるのみた時は、愕然としたわ。
亜希:そうそうーオシャレな店と可愛い店。どっちにしようか?
真:なに気使ってるんだ?俺が相手の時は、勝手にどんどん決めて行くのに。
由美:
じゃあ、オシャレな方で、
ほら、あたしって、背が高いから、あんまり可愛いのは似合わないんだよね。
亜希:そんなことないよー、美人さんはなんでも似合っちゃうから、羨ましいなぁ。
由美:
なぁーにいってるの?合コンではいつも一番人気で、
二次会に来ないってわかった時の男性陣の落胆はぱねえっすよ!
亜希:あーごめんねーいつも。門限が。お父さん、怖いから。
由美: 大事な娘だからねー気持ちはわからんでもない。しかし、娘にも自由を!
亜希:自由を!
由美:君もやりなさいよ!
真:はい。自由を!なんだこれ。
亜希:バイトだって、やっとオッケーしてもらったんだからね。
由美:厳しいねー。あたしんとこは放ったらかしよ。一体娘をなんと思っているのかしら。
亜希:由美がしっかりしてるから、安心してるんだよ。
由美:それはそれで、どうかなー。少しは心配して欲しいよ。
真M:
そして、後はお決まりのパターンだ。
どっちがいいと思う?と聞いたくせに、おれが選ぶのと逆を選ぶ。
最初から決まってるんだよ。
なら、俺に聞くなっていうの。 そして、
亜希:「 これもコミュニケーションだから 」
真M:
だという。
こうやって荷物を持たせるのもコミュニケーションなのかねぇー わかんねえな。
亜希:さーて、後はスイーツでも食べに行きましょうか?
由美:あーごめん、この後用事があるんだー
亜希:また、合コン?
由美:ま、そうだねー。今度はね、大手商社にお勤めのサラリーマン様。
真:サラリーマン様ねぇー。
亜希:へえー凄いじゃない?いいなぁー。
由美:あんたも来る?半分だけ、大歓迎する。
亜希:なんで半分なのよー
由美:だって、人気高いから。ライバル増えちゃう。
亜希:またまたー。なら、やめとく、由美のライバルなんて、私には務まりません。
由美:なにをおっしゃるー 。
亜希:えっと時間大丈夫?
由美:あーまずいー!でもヒーローは遅れて ...
真:これ逃すと、三十分はバス来ないよ。
この道の渋滞をあまくみるなよー 日本のモータリゼーションは凄いんだよー
しかも、電車との接続も最悪ー
由美:あああーそれは、まずいじゃない。 それじゃ、また電話するねー
亜希:はいはいー待ってますよー。
真:うわーすんごい手を振ってるな、あれじゃちぎれちやうぜ。
亜希:あ、千切れた!…なんてね。
真:
そういやさ、こんなに買って大丈夫かよ?
そこまで安い店じやないだろ?
亜希:大丈夫、どうせ返品するんだから。
真:え、返品するの!
亜希:そうよ。こんなにお金つかったら、明日からなにも食べれないよ!
真:おい、どうした?
亜希:あの服だけは気に入ってたのに。試着室から出てきた時の驚いた顔、覚えてるよ。
真:あー、あれはな。似合ってたよ。うん。馬子にも…
亜希:あーあ。(下を向いて)
真:似合ってたよ。なんか、バイトの時とは別人って感じがしたよ。
亜希:うーん!明日から頑張ろう!絶対に手に入れてやるからなぁー!
真:そうだ、その意気だ!
亜希:またご飯減らさなきゃね…ま、ダイエットにもなるし。
真:そんな、太って無いのに、なんで女の子ってそんなに痩せたがるかねぇ?
亜希:それが女ごころってもんよ。
真:今のままで十分、可愛いのにねー。
亜希:なになに?もう一回言ってごらんなさいな?
真:もう言わない。
亜希:えーいじわるー
(再び、バイト事務所)
真:
バイトの主任ですか?
いやぁ僕なんか。 大丈夫ですか?そんな、人徳ないですよ。
はあ、そこまで仰られるのであれば。
時給アップですね!喜んて!
亜希:おお!主任どのではないですか?
真:バイトのだよ。対したこと無いって。
亜希:そんなこと言って、私より時給高いんだからね!
真:
俺の時給、知ってるのかよ?
つうか、筒抜けかよ。
亜希:風の噂でね、
真:
少ししかちがわねぇよ。
その代わり、責任三倍だからな。 前の主任、良くやってたよ、ほんと。
これじゃ割りにあわないぜ。
亜希:でもさ、意外と評判良いの知ってる?
真:いやー知らないなぁ。忙しすぎて。
亜希:君って、皆から優しいお兄さんと思われてるんだろうね。
真:そうなのかなぁ。自覚ないや。
亜希:だって、あんな事まで許してあげるんだもんね。
真:
あれは昔、俺もやったミスだしなー。
なんとかしないと、って思った矢先だからなー。
まぁ、あいつのせいだけにはできないよ。
亜希:
うーん、さすが、心が広いねー。
そしてきっと、他の皆にも優しいんだろうねぇー。
真:
皆さん平等に応対しているだけだよ。
えこひいきなんかしないぞ。
亜希:それなら、私には、もっともっーと!優しくしてよね!
真:
えー、バイト中は無理だぞ。
まあ、バイトが終わったらな。
亜希:本当だね?絶対だからね!約束だからね!特別なんだからね。(小声)
真: わかった、特別だ。
亜希:えへへー
真:なでなで。
亜希:他の人なでなでしちゃだめだからね。
真:しないよ。
亜希:うふふふぅー
真:マンガの真似しなくてもいいよ。
亜希:はいはい、彼氏殿。
真:今は主任と呼びなさい。
亜希:はい、彼氏主任。
真:なんか他にも彼氏係長とか居そうな雰囲気だな、それ。
亜希: そんなの居ないよー。それとも居た方が良いの?
真:
なんだ、お前、またまた口がうまくなったんじゃないか?
言わなくてもわかるだろう?
亜希:
ずるいよーそれ。やっぱり、口で言わないと伝わらないものがあるんです。
それに言葉で聞くから嬉しいんだよ。 心に刻まれるって気がするんだよ。
真:わかりました。大好きです。 他の人を見ないで、俺だけみてて欲しいです。(棒)
亜希:やった!はい、了解いたしました。君だけをいつまでもみています。(棒)
真:お前まで棒読みにならんでよろしい!(指でつんとつっつく)
亜希:痛っ!ぶったー!DVだよー、みなさーん、DVさんがいますよーここにー。
真:
突っついただけだろ?大袈裟な。
それに、なんかデビッドさんみたいだな、DVさんって字で書くと。
亜希:
あーそんなこと言って誤魔化してぇー!
ドメスティックバイオレンスの略なんだぞー!
とても駄目なことなのですよー!わかってるのぉ?
真:ごめんごめん、私が悪かったです。すいませんでした。もうしません。
亜希:はーい、わかればよろしい。
新人バイト: 主任さーん!この品物、何処に並べればいいの?(遠くから)
真:ああ、それはですねー、あの3番目の棚に!
新人バイト:うーん、ちょっとわからないなぁ。
真:
ああ、今行きます!ちょっと待っててもらえますかー?
また、帰りにな。
亜希:忙しいねー主任さんの仕事は。
真:あ、帰りちょっと待っててくれよな。一緒に帰ろうぜ。
(帰り道)
真:待たせたな。ごめん。
亜希:うん、しようがないよ、主任って引き継ぎもあるんでしょ?大変だね。
真
:色々、漏れがあると後でトラブルになるかもしれないからね。
そんで、これ、(カバンの中をガサゴソ)
お詫びの印に。どうぞ。
亜希:なにこれ?くれるの?ただで?
真:プレゼントだよ。 バイト主任と平バイトの差額で買いました。
亜希:でもなぁ、タダより高いものはないっていうからなぁー。
真:なーに言ってるんだよ。なんもないよ。
亜希:ふーむ、柔らかいものだね。どれどれ。
真:もっと、こう、キレイに開けようとか、そういう気持ちはないのかね?
亜希:少しでも早く開けたくて。 ってこれ、この前お店に返品したやつだよね?
真:ああー、そうだったかもしれないな。
亜希:あらぁ?値札ついたままだよ。こういうのって…
真:いや、そうか、忘れてた。値札って取るものだったな。
亜希:まさかの…レシートも入ってるぞぉー?ふふふっ。
真:あああ、慌ててたからな。 いや、もうそういうのはいいから。 気持ちね気持ち。
亜希:今から着てみていい?
真:良いよって。おっと、こんなところでいきなり脱ぐなよ?
亜希:羽織ってみるだけだよ。これ持ってて。
真:はいよ。結構重いな。バッグの中なに入ってるんだ?
亜希:そういうものなの。開けたら針千本だからねっ!うんしょ、うんしょっと。
真:もう少しスマートな掛け声ないのかね。
亜希:エンヤとっとエンヤとっと。
真:余計ひどくなったな。もう何も言うまい。
亜希:ほーらぁー!これやっぱりいいよねー!
真:
うん。まあ、あそこで試着してたものの中では、一番似合ってる気がしてたからな。
なんか、勿体無いと思ってな。
亜希:んふっ、似合ってる?
真:おいおい、だから買って来たんだぞ?
亜希:もう!似合ってる?
真:うん、似合ってるよ。すごく、可愛い。
亜希:やったーありがとう!
真:よしよしー
亜希:あ…ありがとう…
真:う、うん?なんだなんだ?
亜希:嬉しいの…とても、嬉しいんだよ。
真:お、おい!俺、昔から女の子に泣かれるの苦手なんだよ。
亜希:なぁに?昔からって、いつの話?
真:
バカ!小学生の頃にな、ちょっと女の子からかってたら、泣いちゃってさ。
あんときゃあ、先生に怒られたなー。
亜希:えー、そんなことしてたの?
真:いやーほら、小学生ってよくあるじゃん? 好きな子をからかうみたいなさ。
亜希:それねー本当は、女の子傷付くんだよー、知ってる?
真:
まぁー後悔したなー、うん。
そんでさ、中学の時、その子が友達と付き合ってるの聞いてさ、
今度はこっちが傷付く番になったとさっ!
亜希:…好きだったんだねぇ。
真:そうだなー、そうなんだろうなー
亜希:今でも?
真:
まあ、思い出の中ではな。
ただ、今はあの子もどうなってるかわからないよ。
変な意味じゃないよ。
亜希:そうか、そうだよねー。みんなそれぞれ、人生があるよね!
真:
そういう事だ。 お前ー大人になったなー!
背、伸びたんじゃないか?
亜希:ん?この服のせいかな?
真:あーら、大人になったのは見かけだけか?
亜希:なによーその言い方。
真:いや、そのままでいいよ、そのままがいい。
亜希:わかった、そのままでいる。
真:さあ、帰ろう。おいで。
亜希:うん。
真:今日は素直だな?
亜希:今日だけね。
真:今日だけかー。
亜希:じゃあ、時々ね!(キュッと手を握る)
真:ふふっ。亜季の手、あったかいな。
亜希:うん、あったかいね。