第一話 夢から覚めて
ね、眠い・・・
「 」
誰かの声が聞こえた
暖かくて、優しくて・・・とても懐かしい感じのする声
「だ で ?」
体が重い・・・頭がぼーっとしてる
「だ じょ ですか?」
やっとの思いで目を開ける
・・・?なんで俺ふかふかベッドで寝てるんだ?
「だいじょうぶですか?おーい・・・って、あ!意識を取り戻したんですね!よかったぁ・・・」
・・・なんか目の前にやたら癒しオーラ出してる女子がいる
顔が近い
なんだこのシチュエーション
「そうか・・・ここは天国か・・・」
「いや、現実ですから!気を確かに!!!」
む、現実だと?
なら一体━
「ここはどこ・・・っていってええええ!」
ナンダコレ痛い!!
体起こそうとしたらすっげえ痛みが走ったんスけど!!?
「あっまだ動かないでください!手当てしたとはいえまだ傷はふさがってないんですから!安静にしといてください」
「へ?傷?」
腕を見ると包帯でぐるぐる巻きにされていた
よく見ると腕だけでなくほぼ全身に包帯が巻きつけてあった
「・・・なんで俺ミイラ男みたくなってんの・・・」
「たまたま散歩してたらあなたが海辺で倒れてて・・・近寄ったら全身傷だらけでびっくりしました。あ、治癒術かけたので、あと一時間くらいで動けるようになると思いますよ」
「え、ああ、そりゃどうも・・・」
「ところで、なんで海辺で倒れてたんですか?船が沈没したとかですか?」
「え?それは・・・」
・・・なんでだろ?
なんも思い出せねえぞ?
・・・
「あの・・・言いたくなかったら無理に言わなくても━」
「あ、いや、言いたくないっていうか、言えないというか・・・」
「?」
「いやだから、その、なんか俺・・・記憶喪失・・・みたいで」
「へ?」
沈 黙
「きおくそうしつ・・・って・・・なにも思い出せないんですか?自分の家とか、名前とか・・・」
「一般常識は覚えてるみたいだけど、自分のことは全然・・・あ、ちょっと待って!かろうじて名前だけは思い出せる」
「そうなんですか?なんていうお名前なんですか?」
「カイン・・・です」
「カイン、ですか・・・カイン、カイン・・・」
・・・なんかそう何度もつぶやかれると、恥ずかしくなってくるというかなんというか
「もしかして・・・あなたは・・・」
じっと俺の顔を見つめてくる癒し系女子
髪はピンクで肩まで伸びてて・・・胸は普通、ウエストは・・・ってどこ見てんだよ俺っ!!
「やっぱり本当に・・・でも・・・」
「あの━」
「ちょっと待っててください!」
その子はバッと立ち上がると、走って部屋を出て行った
それからしばらく待ってると、分厚い本を持って帰ってきた
全速力で走ったのか、顔が赤い
「はぁはぁ・・・」
「あの、大丈夫で━」
「あなたですね?」
「は?」
いきなりなんだ?
「あなたなんですね!!」
「あ、あの」
「ちょっと失礼します!」
そう言うとグイッと顔を近づけてきた
「な、なななななんあ!?」
「セインの色は・・・金色・・・まちがいない・・・!あなたが!!」
「あなたが・・・勇者さまなんですね!?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?
いや、ちょっとまて
なぜそうなる
てかセインってなんだ
なんでこの子は意気揚々と俺の手を握ってぶんぶん振り回してるんだ
「やった!やった!本当に来てくださるなんて、思ってもいませんでした!予言は間違ってなかったんですね!!!」
「ちょっと意味がわからないんですが!?セインって!?勇者って!?そもそもあんた誰なんだよ!?」
「あっすみません!わたしはマリナっていいます!よろしくお願いします!」
「あ、こちらこそよろしく・・・じゃないよ!前の二つ説明しろよ!!」
「ああ、これでこの国も救われます!さっそく住むところ準備させますね!」
「だめだ、コイツ、聞いちゃいねえ」
そろそろ振り回されすぎて腕がもげそうだ
どうやって落ち着かせようかと考えていると、救いの神がやってきた
「もう少し落ち着いてください、マリナ様・・・彼、困ってるじゃないですか」
「・・・って誰?」
短い黒髪の女性が、部屋の入口に立っていた
「すまないな、少年。うるさくして」
そういうと彼女は俺のベッドに近づいてきて、少女━マリナを子猫をつかむように持ち上げて俺から離した
「マリナ様・・・怪我人相手になにやってるんですか」
「あ、リリィ」
「『あ』じゃありません。なんの説明もしないまま自分だけテンションあがってどうするんですか。ちゃんと説明してあげないと・・・」
「ごめんなさい・・・」
しゅん・・・としょげるマリナ
はぁ・・・とため息をつくリリィさん
「まったく・・・一国の王女がこんなんじゃ、そのうちこの国滅びますよ」
助かった・・・本気で腕がもげるかと思った・・・ん?
一国の・・・『王女』?
「━━ってお姫さまあああああああああああああああああああああ!!!?」
おいおいまてまて、やばくねえかコレ!?
俺お姫さまにため口使ってた!!!?
「大丈夫よ!勇者さまが来てくれたもの!滅びるなんて絶対ない!」
「だから!勇者ってなん・・・なんですか」
今からでも遅くない、敬語だ、敬語を使え、俺
「姫は役に立ちそうにないので私が説明しよう」
「あう」
ぽいっと姫を投げ捨てるリリィさん
・・・扱い雑だなおい
「まあ、簡単に言うとだ。君はこのやたらと分厚い予言書に書かれている世界を救う勇者と非常に境遇が似ている。海辺で倒れていたところもそうだが、自分の名前以外の記憶がないのもな」
「で、でも、それだけならまだよくあるパターンじゃ━」
「ああ、だが、決定的だったのは君のセイン━魔力の色が金色だったことだ」
「魔力・・・?」
「セインは色でその人物の魔力属性がなんなのか判断できる。金色のセインの属性は『光』赤色は『火』青色は『水』・・・といった具合にな。通常、セインは人の目で見ることができないが、一部の人間には見ることができる。姫もその一人だ。予言書に書かれていた勇者のセインの色は金色だった。君のもまた金色だ。これ以上の証拠はないだろう?」
「でも、セイン、の色が金色の人なんて、世の中にたくさんいるんじゃ」
「そうでもない。金色のセインを持つものは極端に少ない。現在確認されている金色のセインを持つものは、そこの隅でいじけてるマリナ姫と・・・君だけだ」
「少なっ!」
え?
んじゃあなにか?
予言書に書かれてる条件をオールクリアしてるのは、俺だけ・・・ってことか?
「まあ、そういうことだから君には世界を救うために色々やってもらわなければいけないわけで━」
「ちょっと待てよ!世界は勇者が救わないとダメなくらいヤバイことになってんのか!?」
「いや、別に」
・・・おい
「今のところはまだ比較的平和だ。・・・・比較的、だけどな」
「?」
「一部の地域では、村ひとつ全滅したところがあったりするが、世界が滅びるほどではない。・・・ひどい事件だったが、な」
「・・・」
「予言書にはこうも書かれている『勇者が現れると同時に、世界は崩壊し始めるだろう』と」
「勇者来ない方がいいじゃん!!!」
いや、まじで笑えない
それ、勇者じゃなくてただの死神だよ
「まあそういうわけだから、君には世界が滅ぶ前になんとかしてもらわなければいけないわけだ」
「なんとかって・・・なにをどうすれば・・・?」
「もちろん敵と戦うんだよ」
敵?
「今までは大人しくしていたが、これからどう動いてくるか分らん・・・君にはこれからある部隊に入って、その部隊の仲間とともに、やつらと戦ってもらいたい」
なんかすごいことになってきた・・・
部隊のことも気になるが、やっぱり一番気になるのは・・・
「あの・・・その敵って」
「・・・人の道を外れた、外道どもだよ。やつらは楽園に住んでる。楽園、と言えば聞こえはいいが、そこに住んでるやつらはろくでもない。目的はいまいち分らないが、一つだけ分ってることがある」
「・・・なんですか」
リリィさんは唇をかみしめて
「あいつらは・・・人殺しを楽しんでやってるんだ。まるで、ゲームみたいに」
そう、憎しみのこもった声で言った
自分の文章力の無さに絶望した!次の話からどんどんキャラ増える・・・と思います。ついに作者の一番好きなあの子(誰)が!!!・・・来るかもしれない