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大好きな彼の背中  作者: 宵賀
3章:一時的な再会
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第8話:土日の夢

 笠也のマンションに行くのは2ヶ月ぶりで、エレベーターの中で実穂は緊張を隠せなかった。

 いざインターホンを押してみると笠也は家へと招き入れようとしたが、実穂の表情を見て、屋上へと案内した。


 やはり屋上はいつみても景色が良くて、自然と心の隙間に通る風が冷たくも感じた。

 笠也は実穂に対して、付き合っていた当時を思わせる行動をとった。

 うつむき加減なので目線を合わせたり、髪を弄ったり、沢山話しかけてくれた。

 でも、実穂はなんて言ったらいいのか分からずに、笠也が言うことを聞いていた。


「……まだ、怒ってるの?足首のこと」


 うんっと、頷いてみせる。

 実穂はあの一言……たったあの一言で傷つきあんなにも大好きだった笠也を2ヶ月も避け続けた。

 怒っているのもそうだが、悲しい、悔しいといった方が適切かもしれない。


「ごめん」


 自分の目の下で笠也がそう言う。

 笠也の髪が風でなびかれて、実穂はその髪に手を取った。

 そして、無言のまま髪を弄る。

 心の警戒心は解けたものの、口を開けることはどうしても難しかった。


 家に帰ってから、実穂は体育祭の日から書き続けている日記を開き今日のことを書いた。

 日記には久々に笠也の家に行って、家には上がらなかったが、少しだけ話したことと、また明日の日曜日に家に行くこと、その他諸々を書きつづった。


 そして実穂は気づいた。

 どうして、自分が笠也に対して避け続けていたのか。


 簡潔に言えば、小さな一言で傷つく自分が怖かったし、また好きになるのも怖かったから。

 好きになってしまえば再び傷つけ、傷つけてしまうこともありえるし、好きという感情を認めたくもなかった……。


 けど、実穂は今日笠也会って自分の意思がハッキリした。

 笠也は嫌いにはなれない。

 自分を成長させてもらえるし、自分が心から必要としている、そんな大切な人を嫌いにはなれないと。


 ふっと、実穂の顔には、好きな者への情に対する笑みが浮かび、明日が楽しみになったいた。




 ピンポーン……っと、指先に圧を加えると、すぐに目の前の扉が開いた。

 前には細身で、自分よりも背が高い笠也が、笑って出迎えてくれた。


「上がって」


 笠也の笑みに胸の高鳴りが実穂には押さえつけようもない。

 久々の笠也の家。

 しかし、荷物をソファーに置くと、実穂はいそいそと数学を広げ始める。

 明日は定期テストなため、あまり遊んではいられない……と、思っていたが、笠也が実穂をまた自分の寝床へと誘い込む。


「実穂……ここ(寝床)では関係が戻るって約束覚えてる?それに、今度添い寝したら俺の携帯に実穂が寝てる写真撮らせるってことも覚えてるよね?」


 あぁ、笠也はそれが目的だったのか……。

 甘い声で囁かれるも、実穂は約束だから仕方ないかという思いと、少し安心を持ちながら約束を果たせてあげた。


 もちろん、実穂は約束を忘れていたわけでもない。けど、また添い寝をするってことは思っても見なかった。

 別れたからないだろうと、そんな軽い思いで承諾した約束……。

 まさか果たすときが来るなんて思っても。


「実穂ー…撮るからねー」


 っと笠也が嬉しそうに「パシャ」っと携帯のシャッター音が鳴る。

 どうやら上手く撮れたみたいで、満足げに実穂を自分の腕の中に入れ込む。

 そして、待っていたかのように実穂の服を少しあげ、腹を突く。


「え、それも?」

「嫌じゃないでしょ?」


 笠也は当然、と言った口調で実穂の胸を触る。

 が、笠也はすぐに起き上がると実穂の上に乗っかった。


「え?」

「こっちの方が実穂が良く見えるし……いっぱい弄れるし」


 彼氏だったときの顔を見せながら、笠也は実穂に顔を近づける。

 思わず表情が硬くなる実穂。


「関係は、戻るんだよ?」


 何かを言い聞かせるように、耳元でそう囁かれると、笠也は真っ直ぐ実穂を見ながら唇を重ね合わす。

 微かに笠也の舌が、実穂の舌との触れ合う。

 顔が遠くなったと思ったら笠也は言う。


「実穂、顔真っ赤。あの時みたい」


 実穂はこのときに笠也の彼女であった事を忘れずに入られなかった。

 つぅっと、実穂の目には一筋の涙が流れた。


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