第7話:キスと別れ
6月半ば~7月後半まで実穂は少し、心身ともに忙しかった。
それは第一次世界大戦並みで、休む暇がなく、追い込み漁の魚を体験したようだった。
最初は、笠也が本当の自分の気持ちに気づき始めたこと。
桜子に告白したいという気持ちの表れが出てきて、一度は別れたが2週間後ぐらいに復縁した。
復縁までの経緯は長くはないが、笠也が遠くに行ってしまいそうで案外、近くにいたことに気づいたときは嬉しかった。
復縁したときは、再度、笠也が好きだという気持ちが固まった。
部活ないでは少し会話が出来るようになったり、部活帰り一緒のジュースを飲んだりカップルらしいことを沢山出来た。
デートにはいけなかったものの、誰よりも多く笠也と接することができ半分は充実した夏休みを過ごせた。
――今日、また両親いないから俺ん家おいで('-'*)
朝のメールがそれから始まった夏の真っ盛り。
8月の昼間、笠也の家にいたときだった。
実穂と笠也の関係はこのとき一番ピークに達していた。
笠也は実穂を自分の寝床へと連れ込み、一緒に添い寝をするということが2人のマイブーム的なので、イチャつきようは大人のカップル顔負けのよう。
しかし、添い寝は添い寝で終ってしまうものではない。
笠也は実穂が薄着で来ることを狙って、わざと腹に手を回し、こしょっと、服の中で指先を動かす。
「ひやぁ」
クスっと、後ろで笠也が笑う声がいつも聞こえる。
実穂は背中を笠也の胸にくっつけて、一緒にいることを嬉しがる。
急な笠也のイタズラには反応しきれないが。
だが、そんな笠也のイタズラは今日は違った。
「……ねぇ、上、行ってもいい?」
甘い声で実穂の耳元でそう囁く。
もちろん、言われた実穂も言った笠也も意味は理解している。
「……いいよ」
小さな声でそう言うと、今まで腹にあった笠也の指先は徐々に上に行き、横を向いているがために形が崩れた胸に指先が触れた。
つんつん、と、弾力を指で楽しんでいるのか、笠也は突くのを止めない。
実穂はくすぐったくて身じろぎをするが、笠也は動く実穂を器用に足と腕を使い優しく包む。
「ちょっと、楽しい……」
照れも混じった声が、笠也の口から漏れる。
実穂はくすぐったさの中、とうとう我慢できなくなると、ガバッと身を上に持ち上げた。
「くすぐったいです、すっごく!」
「実穂、顔真っ赤。かわいい」
笠也も体を起こすと、実穂はそんな意地悪発言をする笠也の頬にキスをしてやった。
すると、笠也は「やったな?」と小さな声で言うと、優しく実穂の唇を自分の唇で多い被せた。
初キスで、実穂はてっきり笠也との別れが遠くなったことを考えていたが、そんな考えはまだ甘いことを知らなかった。
今日もまた、笠也の家に行ける……と、そう予定があったのだが笠也に急な用事があってドタキャンをされてしまったのだ。
そこで大人しく実穂は次の機会を待てばよかったものの、実穂は笠也に駄々をこね、大きかった期待の怒りをそのまま彼にぶつけた。
楽しみだったのになくなった意味が分からなくて、実穂は悲しみを通り越して怒りの感情が我を支配した。
実穂は夏休み、笠也と立て続け会っていたため、欲深い人間といつの間にか化してしまったのだ。
それを気づかなかった実穂。
笠也はそんな実穂に愛想を尽かしてしまい………。
8月15日の夕方。
実穂にとっては忘れもしない思い出と共に、笠也と別れた。