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大好きな彼の背中  作者: 宵賀
最終章:去年とは違う1年
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第39話:あれから一年後

 実穂は少し、ぼぅっとしてる事が再び多くなった。授業中は流石に中学のときみたいにはないが、でもやはり、先生の声が右から左へと流れる。

 どうして、自分がこんな風になったのか。

 それは実穂は知っている。


 5月15日。


 黒板には、そう白く書かれた文字。胸が熱く、焦がれる理由もその数字が全て真実を語る。

 涙こそは出てこないが、この前の音楽の時間に実穂は、なんと大胆な事に教室で泣いてしまった。


 友達と恋愛話をしていたときである。

 自分は3日で別れた事があるんだぞ、という友達の言葉から、実穂は自分から3ヶ月の日に別れたんだぞと、自慢げに言おうとしたのだが、言った瞬間涙が零れ落ちた。

 もう、半年以上も経っている別れなのに、こうも思い出してみとやはり辛く、今でも傷ついた心は癒されていないのだと思い感じた。

 実穂の意思で涙はすぐに止まったものの、やはり、8月15日になってしまったら……と、考えたとき、その日がとても怖く恐ろしい。


 そして、そんな今日は……。


 夢のような3ヶ月がスタートした、素晴らしい一年前の日である。

 笠也は何を想っていたのか。それはきっと実穂には分かる事ができないことであって、実穂が何を想っていたのか。それは笠也にも分かる事が出来ない日々の始まりに過ぎない。

 何をどう想っていても、それはもう過去の事でしかなくて、今更どうこうしても、何もならない。


――今まで、ありがとう。


 サクサクっと笠也にそんなメールを送ってみる。

 返信はいつになるのか。最近は忙しいのかメールが返ってこないことが多いが、それでも実穂は、笠也を心の何処かで捜し求める。

 掴むことが出来ない煙を、掴もうとするような感じがして、耳鳴りがする。


 苦しくても、何が何でも自分自身に諦めがついてしまえば、この想いからは解き放たれよう。

 そして、新しい恋はともかく、自分はもう恋はしないだろう。

 そう考えた。




 その日の夜に、笠也からの返信が返ってきた。

 着信音を他と変えていたので、すぐに分かる。


――俺も。実穂、ありがとう。


 そこでも、実穂は涙を流しそうにもなる。終って欲しくない…と、言わんばかりの大粒の涙。でも、堪える。

 誰かのためでも、自分のためでなく。

 ただ、流してはいけないような涙だと想うから、堪えきる。


――また、メールするかね。ばいばい。


 震える手、震える心、震える体。

 人は、こんな思いに、こんな感情で制御が出来なるなるのか。

 心が砕かれてもなお、人を想い続ける希望を自覚してなくてもいつかは気づいてしまう。


――大好きだったよ、俺の彼女。


 その文面で、実穂の脳裏に、そう言って頭を撫でてくれている笠也が涙の中に浮かぶ。

 もう、とっても近い、大切な存在ではなくなってしまったけれど、笠也はどこか、自分の近くにいるはずがしたから。

 実穂は携帯の画面をそっとしめて、声も出さずに泣く。



 近くに……。

 近くにいて欲しい。けど、それはやっぱダメなの。



 嘘をついても、つききれない。

 自分の本心は何よりも固く、誰よりも自分しか分かる事が出来ない。

 この涙は、一体なんなのだろうか。


 たった一人の人を――笠也を――思い続けた涙?

 寂しいなんて、もう思わないし、感じもしない。

 こんなにたくさんの涙を沢山流して、自分に嘘をつくことがなく、自分に素直になることはとても素晴らしい。







 消えてしまったあなたの面影を探しつつけた7ヶ月。

 人にすがっても、あなたの存在は消える事はなかった1ヶ月少し。

 改めて気づいた、あなたの存在の大きさ。

 そして、一途に思い切れる責任と苦しさ。


 笠也はきっと、そんな事を私に伝えたかったのだろう。

 私にそう教えてくれるために私と出会い、私と好いて、私も好かれ、愛し合った。


 もう私は……。


 足場がまだ不安定なものだから、1人では、あなた無しでは、この先を歩くことが出来ない。

 でも、そんな道を、私だけ歩く事ではない。

 私は、あなたがいた思い出と一緒に歩く。

 だから、私の思い出は、私だけの宝物。


 私と出会うために、手を伸ばしてくれてありがとう。

 人の感情を時間かけて教えてくれてありがとう。


――でも、ごめんね。


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