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大好きな彼の背中  作者: 宵賀
7章:loveとlikeの違い
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第36話:攻め立てる笠也

 中学ギリで出場した大会は風のように過ぎ去っていき……4月の初め。

 今、目の前には今彼と元彼が、実穂の目の前にいらっしゃる。

 面白いテイストだと思うが、誰もこの感情を楽しんではないだろう。


「絶対実穂はこれ楽しんでるよね」


 笠也が口を尖がらせた口調で文句を言ってくる。


「自分がモテるとか思ってるんでしょ」


 目をチロリと利かせて実穂を睨んでくるが、それを感じた佐々木がさりげなくフォローをする。


「実際そうだからね」


 気まずい感じが、ファミレスの一角で流れる。でも、取りあえずは注文をする。

 ドリンクバーを頼み、全員が同じタイミングで席を立とうとする。


「「「あ・・・・・・」」」


 実穂は思わず笑ってしまった。なんだこれ……マジかよ。

 同じ女を巡ってのバトルか?と、思うほどに。


 嫌でもここは誰か1人が残らなくてはいけない。

 ここで、佐々木が残る人となった。

 実穂と笠也が一緒にドリンクを注ぎに行く事に。


「ねぇねぇ」

「うん?」


 佐々木が見えないところで実穂は、頬をピンク色に染めて話しかける。


「さっきのさー、家で」

「実穂だめ。」


 口封じをされる。

 実穂はキッと笠也を見るが、それでも目はとろんとなってしまう。




 今から2~3時間前。

 実穂はまた笠也の家に行って、添い寝諸々を楽しんだ。

 けれど、今度こそは佐々木が家に遊びに行ったことを知っている。

 部活のときに実穂は、笠也の持っていたハンドタオルを盗み、返しに行くと、いう理由で。


「はい、タオルー」

「もう、取るのはよしとくれよ?」


 玄関に入るやそう言い、お菓子タイムが始まる。

 チョコ棒を沢山買ってきて、マシュマロを皿の上に乗っけて、会話を交わす。


「一緒に寝んねしたんだぁ、いいでしょ」

「はいはい」


 頭をぽんぽん撫でてくれて、まるで、カップリングらしき行動を取る。

 ここでの実穂は佐々木の事は心の端に思いやり、もちろん、佐々木といる時は笠也の事を端に追いやる。


 実穂は人生で初めての“浮気”と“二股”と“不倫”のトリプルをかけた。


 もちろん、その代償は大きく、つい最近、自分が誤った判断をしてしまったことに気づいた。

 けれど、後悔をしているつもりはなかった。

 「好き」という感情を、佐々木は実穂に思い出させてくれ、おまけに「判断」をも、追加として気づかせてくれた。


 でも、まだ実穂の気持ちは不安定なもので、佐々木と笠也の間を行ったり来たりしている様子で、それはなんとも歯がゆい状態。

 一刻も早く、けじめをつけなければいけないのに……と、実穂も分かっているものの、やはり動き出せない。



「あ、そうだ!」


 実穂は一本のチョコ棒の袋をあけ、それを半分ほど口に銜える。

 そして、笠也の肩をトントン叩き、半分を食べてくれと指示をして見る。


「えー、いやだよぉ」


 眉を寄せ、笠也は少しためらう様子であったが、実穂の背中に手を当て、近づくと半分をパクっと食べてくれた。

 実穂の顔はふにっと、笑うようになるが、チョコの作戦はまだ続く。

 お互いが半分食べたから、必ず互いの唇が触れ合い、ソフトなキスを交わした。


「実穂、佐々木とちゅーしたら、こういうことないからね」

「………しないよ、そんなこと」


 笠也とこのように、唇を重ね合わせたのはもう、何回目になるであろうか。

 きっと、数え切れないほど重ね合わせて、実穂は思うに、笠也はキスが美味く(上手く)なった。


 佐々木とキス……考えただけで、実穂は震えてしまう。

 笠也以外の異性と接吻だなんて、実穂はしたくないと考えた。


「それと、身体もね」

「うん」


 こういう事を、まじめに考えてしまうと、実穂はやはり、後悔をしてはいられない。

 嘘をついてまで、自分の思いを封じ込めた苦い感情と、今を大切にしたいという複雑に入り組んだ、色のない感情。


――やりなおしたい……


 どれくらい過去に戻れば、こんな辛い想いをしなくて済むのだろうか。

 全て自分で蒔いた種でも、実穂はどんな苦しい想いをしても、どんなに辛い後悔をしても、書き換えたと願う。


「実穂の気持ち、分かってやりたいけど、俺はなぁ。おいで」


 うつむき加減の実穂を置いて、笠也はベッドへと誘う。実穂は、それに素直に応じて、椅子から立ち上がりいつ寝転がってもフカフカなベッドへ足を踏み入れた。

 目の前には笠也の胸板。ぎゅーっと優しく、それでも強く抱きしめられると実穂は心の底から、熱い感情が体を支配するのが分かった。


「実穂……よしよし。実穂は悪くないんだよ」


 声もなく、自分の腕の中で泣いている元カノの実穂を、笠也はそっと慰めてやった。

 お互いがお互いを必要としている瞬間は、今、初めて訪れたのかもしれない。

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