第35話:逃げ切れない選択、もう気づいた実穂
佐々木と付き合いながらも、実穂は地味に笠也との交流を続けていた。佐々木はこの事について知っているのかどうか知らないけれど、OBとして部活に行くときは登下校一緒だから、別に構わないだろうと、実穂は思っていた。
なぜ、部活に行くのか。
それは、春の大会があるからである。
卒業はしたものの、まだ中学生であり、大会はギリで出れる。
そんな今日も実穂は佐々木と一緒に部活へ行った日だった。
明日を大会本番とする3月の末。
練習メニューはそんなに変わらないが、いつもと違うのは実穂と佐々木、笠也以外にも卒業生(同学年)がいることであった。
しかもみんな男…ということで、佐々木は実穂に話しかけてきてくれない。
――なんだよ、友達ばっかり……
佐々木の周りに友達がいるのを見ながら、実穂は水分補給をしていると、肩をトントンと、叩かれる。
振り返って見ると笠也が。
「おやおや、友達にまで実穂は嫉妬かいな?」
「なんだ…何か用?」
笠也はきっと、不機嫌そうにしている自分をからかいに来たのだと、思い込む。
しかし、笠也は笠也で実穂が弱い笑顔を見せながら言う。
「ずっと一緒に来てるけど、進展のほうはどう?」
どうしてこんな事を聞くのだろうか。
実穂は正直の所を話す。
「別に、何もない」
――これじゃあ、ただの友達だよ
とも、言いそうにもなった。
思わずギュっと口を閉めて、笠也を見る。
「ふーん。実穂は感情が顔に出る女の子だから、佐々木に嫌われないようにしないとね」
そう言うと笠也は実穂の横を通り水道場へと向かった。
すれ違った瞬間、ふわっと、大好きな香りが実穂の思考を停止させ動き出そうとしてる足を止めた。
「なにしてるの?」
「………」
と、ここで今の彼氏が登場。
でも、言っちゃ悪いが、佐々木は今どうでもいい思いである。
――笠也はもしかして……
脳裏で、この前家に遊びに行ったときに言われた言葉を思い出す。
添い寝をしていて、笠也があくびで目に涙を浮かべて言った一言。
――「どうして、佐々木なの?」――
実穂は何が苦いものでも食べた時のような苦しみを今、覚えた。
自分だって、なんで佐々木?って思ってる。
けど、今は……。
過去に犯してしまった過ちを、取り払いたいと思ったのはこれで何回目であろうか。
自分は判断を間違ってしまったの?
無意識のうちに、実穂は佐々木との会話を初めこの思いの渦を取り払うことは出来なかった。
家に帰ってからは、最近暑くなったせいかよくシャワーを浴びるようになった。
汗は体操着を濡らし、どうしよもなく喉が渇く。
汗で湿っている体操着を洗濯籠の中に入れて、すぐに洗濯機を回し始めるのと同時に実穂はシャワーを体にかける。
ピシャピシャと、シャワーが肌から足へ、そして排水口へと伝う。
キュッと蛇口を閉めると、シャンプーを手に取り、満遍なく手の平になじませると髪を洗い始める。
「本当に……どうして?」
小さな声でも反響するお風呂場では、自分の声がくぐもって聞こえた。
部活の時に感じた思いの渦は、紛れもなく今の現状に満足しない自分がいるということ。
実際に実穂は、もう、佐々木との関係を止めたいと思っていたからである。
けど、それは許されないことだから……。
好きでもない相手と付き合うのは、本当に苦しい。
ふと、実穂は感じた。
髪を濯ぎ終わると、水気をとり、コンディショナーを髪に馴染ませる。
そして、髪を高い所でお団子にして結ぶと今度は体を洗い始める。
泡を十分に出すと、それを体に優しく押し付けて汗をかいた部分を洗い流す。
ボディソープの香りは、いい香りである。
人の心を落ち着かせてくれるような、安らぎがある。
しばらくの間、それを楽しむとコンディショナーと体についた泡をシャワーで再び洗い流すと、実穂は風呂場を後にした。
●話しの展開が速いですかねぇ…でも、そういうことなのです。
●新しい小説の連載を始めました!もし、お暇があればこちらにもどうぞ!タイトルは「俺の日常」ですb




