第10話:自分がいたい幸せ
再び自傷行為をしてしまった実穂。
実穂は少々間が抜けた子になっていた。
いつも間が抜けているが、今度ばかりは重症であった。
そんな実穂を気にかけていた実穂の母は、一駅先に住む祖母の家に従弟が来てるから遊びに行っておいでと言った。
電車賃を貰い、電車で一本そして徒歩で着いた祖母の家は、家庭菜園を営んでいる。
祖母は独り暮らしだが、住んでいる家は50坪の大きい家。
三分の一は家庭菜園のための畑があり、残りは家になっているが、周りには物置があってたりする。
「おばぁーちゃん、いる?」
庭の出入り口となるアーチを潜り、玄関へと向かう。
途中、自転車置き場を見ると、子供用シートがついたオレンジ色の自転車が置いてあった。
「あらぁ、実穂。いらっしゃい」
麦藁帽子を浅く被った祖母が、両手に丁度良いほどに成長した大根を持って実穂を出迎えてくれた。
実穂はニコッと笑って見せて口を開けた。
「おばあちゃん元気そうだね、大和はいるの?」
「大和君?さっき家の中でお菓子食べてたけど……。
あと、廉君は窓越しからずぅーっと私の事見てたわよ」
大和は1年生の男の子に、廉は大和の弟で今年3歳の男の子。
祖母が「あそこに廉君がいるよ」と、指を指す。先には、両手を窓にくっつけて目を光らせながら、祖母と実穂を見ている。
「叔父さんは?」
「一度車で家に戻ったよ、なんか忘れ物だとか……」
「そぉ」
実穂は知らず知らずに、左手首に張ってある絆創膏を擦っていた。
祖母との軽い挨拶を交わすと、玄関へと向かった。
ドアに手を掛ける前に、がちゃっと音を立てて白いドアが開いた。
「あ!おねーちゃん!」
甲高い声をあげて、大和は実穂の歓迎をしてくれた。
嬉しさのあまり跳びあがっている大和の頭に手を置く。
「こんにちわ」
「こんにちは!!」
思わず、心から笑みをこぼしてしまう。
大和に連れられ、廉がいる部屋に案内された。
廉は実穂とあまり面識がない。が、廉は実穂のことをまじまじ見ながらキャッキャキャッキャと笑い始め、座っていた実穂の膝に可愛いお尻を乗っけた。
「おねーたん、おねーたん」
まだ上手く口が回らない廉は、実穂の手を優しくとった。
廉の小さな手を実穂は愛しむ様に見つめ、両手でその小さな手を包んであげた。
――もしかして、コレが幸せ?
実穂は、もし、自分が死んだらっと、廉に手を握られながら考え始めた。
ふと、心の中に出てきた幸福の感覚。
生きているという意味を、左手首の痛みが教えてくれた。
――学校や家で過ごすことは幸せでも不幸でもないと思う。
確かに、お母さんからの売り言葉や学校に行きたくない辛さから逃げ出しても、誰も文句は言わない。
でも、たったのそれだけしか物事を見なくて、死にたいって思うのは何か違う……
膝の上で大人しくする廉と、大和の優しさに胸を打たれていた。




