第1話:夏の別れ
中学3年の夏。
実穂はもうこれ以上にないという恋をした。
もう2度と戻ることは出来ない恋。
実穂にとっては初恋で、少し重荷だったのかもしれない。
夏休みも後半になろうとした時で、今日が3ヶ月の記念日だったとき…。
実穂は最愛の彼、風李笠也と別れた。忘れもしない、8月15日の夕方。
14日から少し仲が悪くなってきて、彼から別れ話を切り出された。
彼にはもう2年以上の片思いの子がいて、その子に告白をしたいという申し出だった。
実穂はもちろん、自分のことを好きではないと百の承知で告白をして、奇跡的に交際がスタートした3ヶ月前。
その恋が終ってしまったと分かったとき、どんな思いにさらされたか。
本気で好きだった、一緒に過ごしてきた日は何にも変えがたい思い出だった。
そんな思いが心に積もり、涙を塞いだ。
別れる2日前までは、普通に笠也の家に行っていた。そんな日が懐かしい。
けれど、もうそんな事は出来なくなってしまったのだ。
“実穂は俺に辛い思いをさせたって分からないの?”
怒り交じりでくるメールには、もう自分を彼女としては見たくないという不満の声。
そんな彼を実穂自身、もう支えることは出来ないと知っていた。
だから別れを承諾した。
正直、自分の未熟さに腹が立った。
彼は他の子が好きで、自分のことは好きではないことは認められた。
しかし、自分は本当に笠也のことが好きだとは認められなかった。
別れた夜、笠也とのメールで、笠也は言った。
“高校生になってからもう一度、ね?
実穂にその気がなければいいけど”
そのメールを見た瞬間、実穂は涙を流した。訳も分からないが、ただただ涙を流したままだった。
高校生になるまで、ずっと好きでいよう……そう固く決心した。
夏の別れから少しして秋になった頃。
少し荒れていた実穂に追い討ちをかけるかのように色々な出来事が起きた。
元彼になった笠也とふたりきりで話しているときだ。
「実穂ってさ、俺より足首太いよね」
という、些細な一言が実穂の心を一気に崩した。
元々弱っていたためか、友達にそのことを愚痴っている最中に泣き出したのが、実穂自身驚いた。
言われた直後は気にも止めていなかった。
が、友達に愚痴っていると何故か悔しくて腹立たしくて、涙を流しているときこんなに心が傷ついているんだと、実感した。
別れたショックもあるからだろうか、実穂はそれ以来笠也を避けるようになり、メールもしなくなった。
ただただ時間だけが過ぎていく中、実穂の傷は癒えることもなく、実穂は自分の誕生日、10月19日を迎えた。
その日は平凡に過ぎて欲しいと、強く願っていたがそうはいかなかった。
水道場で水を飲み終えて、教室に戻ろうとしたとき待ち伏せをしていた笠也に呼び止められた。
目も合わせずに、すれ違い様に聞こえた声。
「実穂、誕生日……」
完全に無視状態だった実穂は、名前を呼ばれ思わず振り返る。
そして、久しぶりに笠也と目が合った。
懐かしかった。
が、実穂はそんな思いを振り切るように教室へ入っていった。




