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スターゲート・オンライン  作者: もふもふ白犬
第一部 出会い
8/14

1-7 惹かれあう思い

読んでいただき感謝してます!


時間は少し戻る。


逃げては〈水面蹴り〉を繰り返し、そのつど一番近くに来たアリを転倒させて時間を稼ぐハヤテ。セーヤはすでにコマンダーアントとの戦いを始めていた。


(コマンダーをセーヤが倒したら、こっちも一気に片付けよう)


一定間 隔で繰り出される水面蹴り。倒れた味方を回り込んで追いかけねばならないため、なかなかハヤテに攻撃することができぬアリ達。


 何度目か、それとも十何度目かの〈水面蹴り〉を繰り出すと、普通はどてっとその場に倒れるだけなのだが、今度の一撃を受けたソルジャーアントは、飛び上がると脳天から地面に落下した。クリティカルヒットだ。クリティカルヒットが出ると、普通よりダメージも大きくなるし転倒時間も長くなる。ところが、散々〈水面蹴り〉でHPを削られていたソルジャーアントは、その一撃を受けてHPを灰色に変えた。


「ゲッ、ついてない」


そう言いつつもハヤテはリポップまで楽ができると思っていた。そこに、すぐさまソルジャーアントが現れた。


(いや、早すぎだろ!)


と思わずツッコミを入れてしまう。ハヤテのHPはレッドゾーンに入る寸前。ハヤテもまずい状況であることは理解した。一度まとめて片付けて、HPを回復しようかと考え、〈水面蹴り〉でソルジャーアントを転がしたあと、ガードアントに〈発勁〉を叩き込む。ガードアントはHPをごっそり減らして残りはあと3割と行ったところか。


モンスターをまとめて倒すには、皆だいたい同じくらいまでHPを減らしたあとで、範囲攻撃をする必要がある。リポップしたてのソルジャーアントを小突きながら後退していると、背後からバシャっと液体を浴びせられた。何事かと振り返ると、そこには紫色の蟻が立っていた。先ほど浴びたのは毒液だった。それを証明するかのように、HPバーが紫色に変わっている。


「ポイズンアント! どうして・・・」


 後ろにはポイズンアント、前にはガードアントとソルジャーアント3匹。


「あ、そっか。セーヤが倒したスナイパーの分のリポップがさっきのソルジャーアントだったんだ」


 すると、ハヤテが倒した分のソルジャーアントは、このポイズンアントとなって現れたことになる。ようやく合点がいったハヤテは、覚悟を決める。前と後ろのアリたちの丁度中間に移動し、スキルを発動する。


「〈集気法〉」


両脇に拳を構えて、目を閉じて鼻で呼吸を一つ。空中から黄色の光がハヤテの体に集まる。半分以下になっていたHPが、一気に半分を超えるくらいまで回復する。


 モンク系の自回復スキル〈集気法〉。最大HPの3割を回復することができる。ただし、クールタイムはそこそこ長く連続して使うことはできない。


 せっかく回復したHPだが、毒の効果でHPが減り始めた。


何秒間かに一度HPが減って行く。大した量ではないが、塵も積もれば山となる。油断はできない。しかし、ハヤテは毒のことなど気にした様子もなく、


「さてと、行くぜアリ野郎!〈烈風脚〉」


 ハヤテが空中で回転蹴りをすると、近付いていたポイズンアントとソルジャーアント2匹にダメージを与えた。しかし、残ったソルジャーアントとガードアントからは着地後のわずかな隙に攻撃を受けてしまう。


 その攻撃でHPがグッと減り、さらに毒の効果でHPがレッドーゾーンに突入する。その瞬間、ハヤテの胸にカッと熱いものが燃え上がる。


 ギリギリの戦い。難しいゲームほど燃える。命がけのゲームがハヤテにスリルを与える。


(俺は今、生きてる!)


「ハヤテ、逃げて!」


 セーヤの声が聞こえる。


「・・・冗談だろ。こんなスリル、滅多に味わえない」


 ハヤテは、自分でも知らぬうちに笑みを浮かべてアリに突っ込んで行った。



 あれから何度攻撃をしただろう。セーヤの攻撃にコマンダーアントのHPは赤く変わっている。普段の狩りなら蟻酸の効果が切れるまで逃げ回ってもいいが、ハヤテの命がかかっている状態でそんなことはしてられない。


ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ!


 ジリジリと削られていたコマンダーアントのHPバーが一気に減りだす。蟻酸の効果が切れたのだ。


「〈ライトニングピアス〉!」


―――雷閃―――


 セーヤの突きが雷の尾を引いてコマンダーアントに突き刺さる。


ギイギイギイギギィィィ


 コマンダーアントが声を上げて崩れ落ちた。しかしセーヤは、コマンダーアントに一瞥もくれずハヤテの方を見た。


 ハヤテのHPは1割もなく、しかも毒状態。さらに、セーヤの見ている目の前でポイズンアントの攻撃を受ける。


 グッと減るHPとさらに毒によるダメージでもはや目視できないほどHPはギリギリの状態だった。


「ウソでしょ!? イヤッ!」


 セーヤは思わず叫ぶ。ハヤテの背後にソルジャーアントが迫る。ハヤテは気づかずポイズンアントに攻撃を繰り出す。


「ハヤテッ! 〈ヒール〉」


 セーヤは祈るように必死にハヤテに魔法をかける。


 ソルジャーアントの槍がハヤテの背を叩くのと、癒しの光がハヤテを包むのは同時だった。


 ハヤテが、ポイズンアントが、ソルジャーアントが動きを止める。


 セーヤはプレイヤーが死ぬ瞬間を見たことがなかった。凍りつくような恐怖がセーヤを包む。


 セーヤにとって長く感じたそれも、実際には瞬きほどの時間に過ぎなかった。ポイズンアントがガクリと膝をついて倒れ、攻撃後の硬直時間を終えたハヤテが、後方のソルジャーアントに〈ソバット〉を食らわせ吹き飛ばした。


 セーヤの〈ヒール〉が間に合っていたのだ。ソルジャーアントに止めを刺したハヤテがいつもと変わらぬ笑顔でセーヤを見る。


「〈ヒール〉サンキューな! 助かったぜ」


 セーヤは真っ蒼な顔をして放心状態でハヤテを見ていた。心臓はバクバクと音を立て、体は小刻みに震えている。


「・・・セーヤ?」


 答えないセーヤにハヤテが心配そうに近づく。


「―――――バカッ!」


――――バチンッ!


 セーヤの平手がハヤテの頬を打つ。パーティを組んでいなければ、即オレンジカラーのモラルハラスメントプレイヤー扱いされる一撃だ。パーティを組んでいてもメニューリストに対象を、この場合はセーヤをモラルハラスメントプレイヤーに認定するかというメッセージが届いているはずだ。


「ちょ、何すんだ――」


 ハヤテの口から飛び出しかけた文句は、体にかかった柔らかい衝撃で喉の奥へと引っ込んでいく。


「――バカッ、本当に死んじゃったかと思った」


 ハヤテは、抱きついてぽろぽろと涙を流すセーヤに、目を白黒させる。


「・・・心配掛けて悪かったよ」


 ハヤテはセーヤが泣きやむまで、子供をあやすように優しく髪をなでた。



 結局今日の狩りはそこでお開きとなった。


 泣きやんだ後、セーヤは突然不機嫌になり、帰ると言いだした。ハヤテもとばっちりを受けて、帰れと言われた。しかもセーヤは、ハヤテが転移するのを見届けてから帰ると言いだした。ハヤテは何となく逆らうことができず、渋々帰ることにした。


 ハヤテが転移石を使って飛ばされるわずかな時間に、不機嫌だったセーヤが口を開いた。


「ハヤテ、お願いだから無理はしないでね」


 瞳を潤ませて言うセーヤの言葉に、ハヤテの心臓が高鳴る。普段モンスターをばたばた斬って倒す女傑のセーヤが、儚い表情を見せると、その美貌と相まって反則的に可愛く感じてしまう。


 ハヤテは「ああ」と甘い息を吐くように呟いた。


 ハヤテが去ったあと、セーヤは胸を押えて立ちつくす。


「・・・ハヤテ」


 セーヤの口から、せつない声が吐息のように洩れて闇に消えた。


ラブな感じはうまくかけね・・・


誤字脱字、ご意見ご感想、うまい恋愛描写の小説の推薦等ございましたらご一報くださいませ。

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