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スターゲート・オンライン  作者: もふもふ白犬
第一部 出会い
7/14

1-6 アントホール

読んでくださりありがとうございます。

今回ハヤテとセーヤは《樹海エリア》の奥にある《アントホール》という洞窟にやってきていた。その名のとおり、アリの巣だ。ただし、2メートル程もある巨大なアリで、二足歩行で歩き武器も使用するのだが。


《アントホール》までの道のりは遠い。ハヤテの住むフォレストガーデンを抜けると《迷いの森》と呼ばれるエリアがある。30~50レベルのモンスターが生息するフィールドであり、その先にはエルフの村が点在している。


エルフの村より先は《樹海エリア》が存在し、50~80レベルのモンスターが生息していた。《樹海エリア》には、素早い虫系のモンスターや、植物系のモンスターが多く、擬態などの『隠蔽スキル』をもつモンスターも存在する。それもあって、命中率が高く、『探知スキル』を持つ、シーフ系の3次職ローグや4次職アサシンの狩場となっている。



《アントホール》に現れるアリは65~80レベルと高レベルであり、その最深部には女王アリが眠っている。現実世界に戻ることとは関係ないダンジョンボスであるため無視されているが、雑魚が最高80レベルのダンジョンボスであることを考えると相当強いはずだ。


ちなみに、ハヤテとセーヤがいるのは《アントホール》の真ん中あたりである。中ほどまでくればモンスターの出現率も高く、何班も巡回しているソルジャーアントなどが、次々とリンクして10匹以上になってしまうこともある。


ハヤテとセーヤが《アントホール》に潜ってから小一時間がたったが、今のところ包囲されることもなく確実に経験値を稼ぐことができた。巣の内部はぼんやりと明るく、数メートル先くらいならば見渡すことができた。ハヤテとセーヤは、無数にある脇道に身を隠しながら、巡回するアリたちを眺めていた。


「3匹だな。ガード一匹とソルジャーが2匹」


「行けるかな?」


ハヤテの言葉に、セーヤが問いかける。


「当たり前だろ。リンクされる前にガンガン片付けよう」


「わかったわ。私がソルジャー2匹を引き受けるから、ハヤテはガードをお願い」


「ああ、了解。じゃ、お先!」


言うが早いか、ハヤテは脇道から飛び出すと、


「〈ブルタックル〉ッ!」


とスキル名を叫びながらアリたちに突っ込んだ。


止まることのない体当りでソルジャー2匹を弾き飛ばし転倒させる。ガードアントにも体当たりをぶちかますが、ガードアントは手に持った盾で防ぐと数歩後退しただけで踏み止まった。ハヤテは体当たりの軌道を逸らされ駆け抜ける。


後方からセーヤが現れ、倒れたソルジャーアントに追撃を仕掛けたのがわかった。


「お前の相手は俺だぜ!」


ハヤテはニヤッと笑うと、盾と剣を構えるガードアントに向き直る。


ガードアントは油断なくジリジリと間合いを詰めてくる。そんなガードアントに、ハヤテはお構いなしに突っ込んでいく。ガードアントが構えた盾に突っ込むようにして接近すると、ぶつかる直前で右に移動し、横から顔にフックを叩き込む。


 ギシャ!


 ガードアントは思わずうめいたが、怯まず右手にもった剣で攻撃しようと試みる。しかしハヤテがガードアントの左手側に移動するため攻撃が出来ない。無理に攻撃すると、空振りした上に反撃まで食らう。何度目かの攻撃を食らったガードアントはバランスを崩し後退する。すかさず踏み込むハヤテ。ガードアントはとっさに盾でハヤテの行く手を阻もうとするも、ハヤテにとってはそれが狙いだった。


 ハヤテはスッとガードアントの盾に手を触れると、スキルを発動する。


「――――〈発勁〉!」


 腹の底から沸き上がる力が、全身をめぐってその力を増し、強烈な力と、地面を砕く踏み砕くように蹴り、鋭く突き出された両手が盾に触れる。相手の防御力に比例して威力の上がる〈発勁〉が、ガードの動作で防御力の上がったガードアントに直撃した。


 ガードアントのHPが一気にイエローゾーンに突入する。大ダメージの影響でふらつくガードアント。ハヤテはその隙を逃さず、接近すると接近して5発攻撃を入れる。HPがレッドゾーンに入ったところで、ガードアントがふらつき状態から回復し剣を水平に振るう。


 ハヤテは身を低くして攻撃をかわすと右の回し蹴りを放つが、これは盾でガードされてしまう。ガードアントが剣を振り上げる。振り上げた時にはハヤテはすでに半身になって攻撃をよける準備が出来ていた。


 遅れて降り下ろされる攻撃後の隙に、顔面に初級の連続スキル〈飛燕〉を叩き込む。高速の左右のフックだ。ガードアントはかろうじてHPバーに赤いメモリが残っている。剣を下から斬り上げるガードアント。体を斜めに反らせてかわすハヤテ。踏み込む。降り下ろされる剣。


 ドゴッ!


ハヤテは剣を握る手の内側に入り込むと、肘打ちを叩き込んでいた。


声もなく崩れ落ちるガードアント。ふうと息をついて、セーヤの加勢に向かおうとしたが、セーヤも丁度2匹目のソルジャーアントを倒したところだった。


「ちらちら見てたけど、相変わらずすごい張り付きね」


セーヤは感心半分、呆れ半分の表情でハヤテを見た。普通のプレイヤーならヒット&ウェイで強力なスキルを叩きこむ。


「ああ、こっちは素手だから、攻撃回数多くしないと倒すのに時間がかかってしょうがないんだよ。特にフィールドによっては戦ってる間にバンバンリンクするからさ。スキル後の硬直が怖いんだ」


ハヤテの言葉に、セーヤは心の中でつぶやいた。


(じゃあパーティ組めばいいのに・・)



あれからさらに一時間もたっただろうか。何度か小さいアリのパーティを撃破してきたが、つい先ほど何度目かの戦闘に入った瞬間、アリの別働隊が現れリンクした。計5匹。


 手早く2匹のソルジャーアントを倒したが、すぐに近い場所にガードアントと、弓を構えたスナイパーアントが現れた。


「なんだこれ!? ポップ位置が近すぎないか?」


ハヤテは不審そうにセーヤに聞くが、セーヤもアリ達の対応で手いっぱいになっていた。


ソルジャーアントをさらに1匹、セーヤが倒す。しばらくすると、1匹のソルジャーアントが駆け寄ってくる。


「ハヤテ、たぶんコマンダーがいるわ」


「コマンダー? 見える範囲にはいないけど・・・」


「たぶん群れの奥よ。コマンダーは接近しないと攻撃に参加してこないから」


セーヤの視線の先には、リポップしたガードアントとスナイパーアントの姿。


「なら、セーヤはスナイパーとコマンダーを頼む。俺が他の奴のタゲ取るから」


 ガードアントはリポップしてからハヤテの方に接近してきているが、スナイパーは離れた距離から矢を射かけてくる。


 ハヤテはまず周囲にいるソルジャーアントのターゲットを自分に集中させるため、範囲攻撃〈烈風脚〉を繰り出す。3匹のソルジャーアントに攻撃が命中する。セーヤはこの隙にソルジャーアントの包囲を抜ける。


 さらにスキル発動後の硬直が解けると、〈気功砲〉を放つ。射線上の敵すべてにダメージを与える〈気功砲〉で、まだこちらに到達していないガードアントと離れた場所にいるスナイパーアントにダメージを与える。2匹のターゲットもハヤテに移る。


「死なないでよ!」


 セーヤはアント達の注意を引かぬよう外回りに移動し、奥のスナイパーアント目がけて突っ込んでいく。


 「〈ガゼルスナッパー〉」


斬撃スキルを発動し、数メートルの距離を青白い光を放ちながら飛び込むと、スナイパーアントの胸を斬り裂く。HPも防御力も少ないスナイパーアントは一撃で3分の1ほどHPを減らす。


一方のハヤテは、前からはガードアント、後ろからはソルジャーアント3匹。〈気功砲〉の硬直時間にソルジャーアント達の攻撃を受け、HPは3割ほど減っている。


(倒すならガードアントだ。コマンダーがいる今、いくら倒してもすぐ近くにリポップする。ソルジャー倒してリポップがガードやスナイパーだったら目も当てられないしな)


 そう決めると、ハヤテはソルジャーアントの攻撃をなるべく回避しつつ、ガードアントに攻撃を仕掛ける。本来なら〈発勁〉で大ダメージを与えたいところだが、スキル発動後の硬直時間で袋叩きにされるのは怖い。ハヤテは、転倒効果のある〈水面蹴り〉で足払いをしつつ距離を取りながらアリを引きまわす。


 そのときセーヤは、〈ガゼルスナッパー〉の硬直時間が解けると、突きから斬り上げと2回攻撃をし、5連突きの刺突コンボスキル〈サザンクロス〉を放つ。スナイパーアントはあっという間にHPバーを灰色に染めて地に伏した。


 残るはコマンダーアント。暗く狭い洞窟の数メートル先にコマンダーアントは立っていた。セーヤはスタミナを回復させるペースで近づく。基本的にコマンダーアントは自分から攻撃を仕掛けることはないノンアクティブモンスターだ。指揮官の証とも言える軍帽をかぶり、手にはオーケストラの指揮者が持つような指揮棒を手にしている。HPは高いが能力値自体は低い。その能力はあくまでも近くに仲間を呼び寄せる能力に特化しているのだ。コマンダーがいると、モンスターがリンクしやすく、リポップ場所もコマンダーの近くになりやすい。


 スタミナも回復し、十分な距離まで近づいたところで、セーヤは攻撃を繰り出した。踏み込んで切りかかると、コマンダーアントは指揮棒でガードする。セーヤは構わず連続で攻撃を続ける。コマンダーアントも応戦するが、攻撃力が弱いため、セーヤは構わず攻撃を続ける。コマンダーアントのHPが半分まで減った時、セーヤの攻撃を受けてコマンダーアントが仰け反る。


(クリティカル!?)


セーヤは心に歓喜が走ったその時、


ブシュウウウウゥッ!


コマンダーアントは勢いをつけて口から、黄色い霧を吹き出しセーヤに浴びせかけた。


〈蟻酸〉。武器を錆びさせて攻撃力を低下させるスキルで、蟻系のモンスターがごくまれに使う技だ。一定時間で解除されるが、それまでは武器のグラフィックも黄色い液体に覆われる。


「く、こんな時に!」


 セーヤは自分の油断が生んだミスに深く後悔する。セーヤは先ほど以上に攻撃を繰り出したが、コマンダーアントのHPの減りは少ない。焦りが募り、後方のハヤテを見る。


 ――――!!


 ハヤテのHPバーが赤くなっている。それはHPが3分の一を切ったことを示していた。ハヤテの周りには、3匹のソルジャーアントと1匹のガードアント。それに、紫色をしたポイズンアントの姿もあった。


「ハヤテ、逃げて!」


 セーヤは思わず叫んだが、ハヤテからは逃げる気配が微塵も感じられない。むしろ・・・


(笑ってる?)


 バシィ!


 よそ見をしていたセーヤに攻撃を加えるコマンダーアント。


「くっ、邪魔しないで!」


 セーヤはさびた剣で次々と攻撃を繰り出す。


(ハヤテ、死なないで・・・)


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