1-3 フォレストガーデン
今回は説明回になってます。
ゲームの設定とか載せたほうがいいのでしょうか?
大樹の街。エルフと人間が住まうこの街に、ハヤテのホームがある。
見上げると首が痛くなるほど巨大な大樹の中にその街はあった。大樹には、階段やロープが下がっており、いろいろな方法で出入りすることができる。
大樹の中はくりぬかれていて中心は吹き抜けの様になっている。中には無数の店や民家が立ち並び、またプレイヤーの借りる宿や、個人で購入できる家もあった。
大樹は100階に分かれており、30階以降はほとんどがプレイヤーのための購入可能、賃貸可能なホームになっている。
街になっている1~30階は、民家や店が立ち並び、1階の中心、吹き抜けの終着点は広場になっており、プレイヤーの露店が立ち並ぶ。露店と言ってもプレイヤー本人が出している場合は少なく、代理のNPCが設定させた金額で物を販売するシステムになっている。
ハヤテは《通商連》の露店に向かっていた。
デスゲームと化したS.G.Oでは、プレイヤー同士の協力が不可欠であると考えた者たちがいた。その中に『商人』と呼ばれるプレイヤーもおり、素材やアイテムの買い取りをして、他に求めている人の所に効率よく提供することを仕事にしている。
その商人と生産職が組んだ大型ギルド《流通商人連合会》が結成され、ギルドの共通倉庫を利用した、全国どこでも素材の買い取りや生産職の作ったアイテムの販売ができるシステムがプレイヤーの手によって作られたのだ。
プレイヤーは、ドロップアイテムをなるべく店売りはせず、《通商連》で売って生産職に貢献しようということになっている。
《通商連》の露店はたくさんあり、待ち時間なく売買できるような工夫もなされている。今回のハヤテのアイテムはやや供給過多の部類に入っていたため、店売りより若干安くなってしまったが、量も多く高レベルモンスターのドロップアイテムなので、金額的にはまとまったお金になる。
ついでに必要なアイテムをそろえるため、《通商連》のNPCに今度は購入の申し出をして、アイテムを補充する。素材を売って、そのお金で消費アイテムから、武器防具、アクセサリーに至るまで、その場で購入できるので時間の節約という面で見ても、《通商連》はプレイヤーに貢献していると言える。
また、消費アイテムのポーションなどを取っても、店売りの物に比べて手作りの物の方が効果が高い。狩りに出ない生産職の低レベルのプレイヤーが作って日銭を稼いでいたのだが、最近は生産職のレベルも全体的に高くなってきたらしく、初級アイテムはほとんど販売されていない。
ハヤテはアイテムの補充を終えると、露店をブラブラしつつ自室に戻るための移動用トランスポーターに向かった。
☆
ハヤテの借りている家は大樹の50階にある。
50階にはやや広めの部屋がそろっていて、中級レベル以上のプレイヤーでなければ、金銭的な面で借りることができない。
ハヤテは部屋に戻るため、トランスポーターから大樹の外へとつながる枝に向かった。枝といっても横幅数十メートルはあり、枝からさらに分かれた小枝に同化するように作られた無数のツリーハウスがあり、その一つがハヤテの借りている家だ。
なかなか家の中で過ごすことがないため、部屋の中には調度品と呼ばれるものはほとんどない。アイテムは全部メニュー画面のアイテム倉庫の中に入っている。
ちなみに、SGOではアイテムをしまう場所は2か所ある。アイテム倉庫とアイテムポケットだ。
アイテム倉庫とは、街の中でしか開くことができず、しまうのも、引き出すのも街の中だけ。その代わり、無限とも思える量を入れることができ、装備のセット機能なども付いているため便利である。とくに装備のセット機能はとても役に立つ。狩りの相手や場所によって装備を変えることが多いため、ある決まったセットを作っておき、一瞬で装備を切り替えることができる。いちいち倉庫から探し出す必要がない。なので、プレイヤーは街に入るとすぐに各々の個性を主張した私服に着替えることが多い。気軽なジーンズから、メイド服、アフロ、全身タイツに至るまで、なんでもござれの格好で、秋葉原にも負けないコスプレぶりである。
一方アイテムポケットの方は、どこでも出し入れ可能だが、数に制限があることと、重量に制限がある。なので装備アイテムをもう一式狩りに持って行って着替えるなどは難しい。消費アイテムのことを考えると、精々が予備の武器を持って行く程度だろう。
ハヤテは家に着くと早速ハンモックに飛び乗り気持ちよく揺られながらメニュー画面を開く。
早くも、セーヤからメールが入っていた。メールは着信すると戦闘の時以外は音が鳴るはずなのだが、どうやらハヤテは気付かなかったようだ。
『今日はありがとう。久々に思いっきり狩りができて楽しかった♪ ギルドの予定がない日が分かったらメール送るね。じゃあ、お疲れ様 セーヤ』
こうして誰かとメールをし合うなんて何時ぶりだろうか。ハヤテはぼんやりとそんなことを考えつつメールを返す。
『こちらこそ、経験値大分稼げたから助かったよ。またよろしく頼む。俺の方は基本予定ないからいつでも連絡してくれ ハヤテ』
ハヤテは久々に送るメールに四苦八苦したが、結局あたりさわりのない短いメールを送ることにした。
(今日はなんかいい気分で寝れそうだな)
ハヤテの顔には自然に笑みが浮かんでいた。その時、メールの着信音が鳴った。どうやらセーヤが早くもメールを返してきたようだ。ハヤテがメニューを開いてメールを確認すると、
『基本予定ないなんて・・・かわいそう(;_;)』
「―――ほっとけっ!」
ハヤテは、思わず叫んだのだった。
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