表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

梨華の錯乱

 梨華は腰抜けの椿太郎を諦め、自分の命と刺し違いに仇討ちの覚悟を固めた。

 しかし梨華が伴太郎のいる奉行の番所に赴いても容易に中へは入れてもらえないだろうし、仮に入れてもらえたとしても脇差を携えたまま建屋へ入れるわけがない。

 市中に出ている所を襲う?

 いや、奴はいつでも町奉行の与力や同心を数人従えていて、刺し違えるどころかその前に切り捨てられてしまう。これでは犬死にである。

 屋敷へ忍んで夜討ち。

 暗殺? 下半身デブで目立つ顔立ちの梨華にこの作戦は全然むいていない。というか、そもそも梨華にそんな頭脳プレイが出来できるはずもない。

 梨華は真剣に考えた。


――いったいどうしたら奴に近付くことができるのだろう。


 果たし状を突きつけ仕合いを申し入れるしかない。それならば、仇の伴太郎にほぼ確実に会えるだろう。手合わせを申し入れられた者から逃げるような士はいない。

 しかし、その計画には絶望的な欠点があった……。それは何か。

 梨華が伴太郎に仕合いを申し入れ、万に一つでも、億に一つでも、兆に一つでも、豚が木に登ろうとも、宇宙が逆になろうとも、勝てる相手ではないということ。


――当たり前だ。仕合いで勝てるのだったら、もともとこんなに悩んだりしないよ。

 

 それでも梨華は何か方法がないかと考えた。

 其の一、

 伴太郎がよく訪れる代官所に入った後、予め雇っておいた人夫数人に急いで門の前に落とし穴を掘らせ、伴太郎を大声で呼び、穴に落ちたところを別な人夫に糞尿を頭から掛けさせ、最後に上から槍で刺す。


――門の番役がいるから、穴を掘ってるとき「貴様ら! そこで何をしている」と言われたら困る。「落とし穴掘ってます」とは言えない。この作戦ははなから実行自体不可能だ。


 其の二、

 伴太郎を書面で寿司屋に誘い出し、雲丹うにに似せて大量の南蛮辛子を載せた軍艦巻きを食べさせ、うろたえたところを斬り捨てる。


――誘いに簡単に乗るわけがない。それに、もしも辛いものが得意で、大好きだったら何にもならない。


 其の三、

 伴太郎を書面で蕎麦屋に誘い出し、蕎麦の中に大量のわさびを練りこんでおき…………。


――寿司屋と同じことだよ。これも駄目だ。

 

 其の四、

 町人の子供に杏飴か餡子餅を与えて誘い、百人くらいの子供を集めて伴太郎と与力、同心を取り囲み、屋根にも上がらせて一斉に石を投げさせる。うろたえたところを斬り捨てる。


――うん。これ、いいかも。でも……。誰か子供に「おじちゃんたち狙われてるよ」とか、告げ口されたらおしまいだ。

 

 其の五、

 民家の屋根から大量の胡椒を振り撒き、くしゃみした瞬間に斬り捨てる。


――よし! これのほうが一人で出来るからいいみたい。でも……。撒いてる自分はくしゃみ出ないかな。出るよね。やっぱり、駄目だ。

 

 其の六、

 ええい、もう、こうなったら色仕掛けだ。絽利華に、「おじちゃん。あたい、おしっこしたくなっちゃったから誰も来ないように見張っててね」と言わせ、その場でさせる。奴がおろおろしている間に背後から斬り捨てる。


――だめだ! 奴がロリコン趣味の変態じゃなかったら、計画は成立しない。そうだ! そのときは、私が絽利華の代わりをやればいいんだ。

――ああ、でも、気色の悪い女だ、とか思われたらどうしよう……。


 梨華は頭が錯乱状態の一歩手前だった。


――ああ、駄目だ、駄目だ、駄目だ!


 頭を抱える梨華。


――仇討ちが無理だとすれば、いっそ自害して誰かに介錯を頼んで、思いっきり白目剥いて口尖らせた首を送りつけてもらい、奴が怖くて夜一人で厠へ行かれないようにでもしてやるか!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ