少年達の個性 その①
「・・・・!!!」
バタッ!!
暗闇の中
男が顔を驚いた表情のまま固めて無言で倒れる
がっちりした体格で場所が学校らしいことから体育教師であるように見えた。
だが、ここは学校ではない
ここは『鈴蘭』
学校などという普通の子供が通うところではない
むしろ逆、普通でない子供を閉じ込めておく広き牢獄
その牢獄で働いている大人たちは格闘や科学など様々な分野で優秀なものたちばかりだ
当然、倒れた男もこの『鈴蘭』で働く職員の一人
柔道で有名な高校もキャプテンを務め、そのうちプロ入りさえ噂されていたほどの腕の持ち主
まあ、どれだけの経歴があろうと死ねば関係ないことだが
「これで三人目。漫画で言うところのそろそろクライマックスって場面っスね!」
人が死んでいるという状況に合わない能天気な声が廊下に響く
声の主は倒れた男の後ろ側に立っていた
ボサボサの頭に赤いぼうしをキャップを後ろにして被る少年
歳は中学か高校くらいだろうか?
機嫌よさそうに笑顔でいるがその手には血のついたカッターを持っている
人を殺したということに恐怖どころか楽しさを感じているように見えた
そして、その隣には倒れている男よりも大柄な少年(?)と背の小さな眼鏡をかけた少女が帽子の少年の言葉に反応した
「フンッ!この俺が手を下すまでもない最下級の愚民どものことなど知らん」
そういう大柄の少年は青く長い髪を頭の後ろにゴムで縛っている
服装は他の2人と同じデザインの制服だが、サイズは桁違いに大きかった
「え~なにいってるんですか~愚民とかいってるあなたのことなんかが知りたくもないです~」
少女のほうは長い髪をツインテールにし、ニコニコと笑顔で長髪少年に憎まれ口を言っていた
「・・・・貴様は俺に殺してほしいのか?」
大柄な少年は少女を睨み付ける
もしも、少女が普通の少女だったならその眼力でその場から動けなくなっていただろう
だが、少女は・・・いや、その場の三人は全員が普通ではなかった
「嫌です~死にたくないです~せめて白馬に乗った王子様の剣に指されて死にたいです~あなたみたいなボケナスは嫌です~」
少女は長髪少年の睨みをまったく気にせずにいう
そんな少女の言葉に長髪少年の中で何かが切れる音がした
「・・・・貴様の運命は決まった・・・殺す!!」
「うわ~灸伍君が怒ったです~」
どうやら少年の名前は灸伍というらしい
少女に対し、拳を何度も振る灸伍
それを笑顔で避け続ける少女
その2人を帽子の少年が止めに入る
「灸伍さんも李子ちゃんもこんなとこでバトルするのは死亡フラグっスよ?やっと第一章完結なのにゲームオーバーになっちゃうの嫌なんでやめないっスか?」
眼鏡の少女・・・李子も灸伍も帽子の少年を振り返る
「俺に指図するか・・・・雛乃よ、えらくなったものだな、ん?」
「いや、別にそういうんじゃないんっスけど・・・・あれ?これもしかして・・・俺に死亡フラグ立ってます?」
「・・・・お雛ちゃんガンバ!」
「そのお雛ちゃんってのやめないっスか?なんか雛人形みたい・・・・・って、危ない!灸伍さんいきなり殴るのは反則!レッドカード!退場っスよ!?」
「知るかそんなもの・・・・俺はとにかく貴様を殺したいだけだ!!」
「ギャー!!無理無理無理!!!マジ死にますって!人生のゲームオーバー迎えちゃいますって!!」
「また生き返れば?」
「いやいやいや!李子ちゃん冷静に無理言わない!無理っスってコンテニューなしの人生なんですけど!?」
「どうでもいいが・・・・俺が直々に死刑にするのを誇りに思え!」
「無理!!・・・・・・ギャー!!!」
廊下に雛乃の悲鳴が響いた
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