少年の行動の始まり
高校生くらいになると光夜は一つの決意をしていた。
世界を変えるためにはまず・・・・・
「光夜・・・」
「・・・・優治か」
声をかけてきた茶髪で小柄な少年は花咲優治
俺と優治は『鈴蘭』に入って兄弟のように育てられた。
優治が犯した罪は俺と同じように常識では考えられないものだったらしく、俺と同じように施設の大人たちから気味悪がられていた。
優治は俺の考えに賛同してくれる親友でもある。
「やるのか・・・・本当に・・・?」
俺達のやることは誰もが考え付くが絶対に実行しないこと
それを実行するのに迷いがあってはいけない
しかし、優治の顔からははっきりとした迷いが伝わってくる。
「優治、お前が迷うなら俺は一人でも・・・・いや、俺達だけでやる」
今は一人でも、きっとみんなが手伝ってくれる。
だって、みんなも幸せになりたいと思うから
俺の言葉に優治は首を振る。
「迷ってはないさ・・・・ただ・・・やったら俺達、普通じゃなくなるぞ?」
「普通?お前はバカか?俺達が普通なわけないだろ?それとも、お前は自分が普通だと思ってたのかよ。バッカじゃねぇの?」
そう、俺達は普通じゃない
生まれてすぐに罪を犯した悪魔
そんな俺達が何をやっても普通
普通じゃない奴が何をやっても普通なのだから
「・・・・・そうだな・・・俺達は普通じゃない・・・だから普通になるためにやるんだ」
「お前がどうしようが勝手だが今は考えるときじゃない」
俺の言葉に優治は決意の眼差しで頷く
俺達の夢は違っても目指す世界は同じ
その第一歩を今日、踏み出す
『鈴蘭』は元々、高校であった建物をそのまま使った施設だ。
たくさんの教室があり、その教室では授業を行っている。
俺や優治は成績優秀なためレベルの高い勉強をしていたがそれもありふれたことしか教えられない
社会に出ることのない俺達には必要ないことだからかも知れない
まあ、そのことはさておき話を戻そう
高校だったこともあり、この施設には様々な部屋がある。
調理に使う家庭科室
科学の実験や薬の開発に使われる科学室などだ。
その中で俺達が今、向かっている場所は施設全体に連絡をするときに使う放送室
そこで俺達の計画は始まる。
「放送室の警備は2人、時刻の言うとおりだな」
時刻というのは俺達に施設内の様々な情報をくれる仲間のことだ。
施設に入ったのは最近だが計画に使えると思い優治が誘った。
施設に入る前はプロのハッカーだったらしく、情報室などから外の情報や施設の予定などを調べてくれる。
ただし、小学5年生くらいの歳の時刻に今回の出来事を見せるわけにはいかない
小学生が耐えられるレベルではないから・・・・
「よし、始めるぞ」
俺と優治は放送室へと向かう。
放送室の前に立つ警備員が俺達に気づき声をかけてくる。
「お前達、ここは生徒立ち入り禁止だ。」
「え?そうだったんですか?」
俺はさも知らなかったかのようにいった。
そんなこと分かりきっているのに・・・・
「そうだ、分かったらさっさと行け」
「は~い・・・・て言うと思った?」
俺の言葉に驚く警備員
自分等が管理してる奴のことがやっと分かったか?
「にひゃ!混乱してろ」
驚いている隙を突いて警備員の後ろへ回り込む
そして、その首筋へ勉強のために支給されたシャーペンを突き刺す。
「ぐああああぁぁぁ!!!」
シャーペンの突き刺さった場所からは勢い良く血が噴出す。
その血が廊下を赤く染めた。
もう一人は状況を飲み込めたらしく
装備していた警棒を取り出し構える・・・・・が
それよりも早く優治の蹴りが急所に決まる。
あまりの痛みから思わずうずくまる警備員
その上に馬乗りになってさっきと同じように首筋へ今度はコンパスを突き刺す。
警備員の叫びとともに噴出した血が服を赤く染める。
だが、そんなことは気にせずに放送室の扉を開け中へと入る。
扉を閉める前に廊下を確認するが二つの死体が転がる真っ赤な光景以外何もなかった。
この光景を時刻に見せるわけにはいかないな。
そんな風に思いながら扉を閉めた。
中はいたって普通の作りになっていた。
放送機材と椅子がいくつかおいてあるだけ
そんな中で俺と優治は作業へと移った。
放送機材を操作し施設全体へ伝わるようにし、マイクをオンにする。
優治に合図を送り放送を始める。
『施設内の全員に聞いてほしい』
きっとこの放送を聴いた大人たちがここへと来るだろう
早めに終わらせなければ
『俺達はここに送られ、外に出ることも出来ずにいる。罪を犯したことは間違ったことをしたんだから仕方がない・・・・でも、外へ出てみたくはないか?外ではたくさんの人が暮らし、たくさんの出来事が待っている。そんなところへ行ってみたくはないか?俺は行ってみたい』
放送室の扉から大きな音がする。
大人達が扉をあけようとしているのだろう
鍵はこっちが持っているから心配ないが力づくであけようとしているのなら別だ。
いつ入ってくるか分からない
だが俺はまったくあわてずに放送を続ける。
『みんなはどうだ?こんなつまらない場所にいてもいいのか?いやなら・・・・俺のところへ来い!強制はしない。来たい奴だけ来ればいい。そして、変えてやろう外の世界を俺達の力で!』
そういって放送を終わる。
問題はここからだ。
人が集まらなければ俺は終わる。
変化はすぐに現れた。
放送室の外で複数の悲鳴が上がり、そして静かになる。
扉を開けるとそこには、血だらけであったり口から泡を吹いたりして倒れる職員達と無傷の少年少女達が立っていた。
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