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ナメクジラ  作者: まきの・えり


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5/10

 オレは、本能的に、コイツのために、全速力で走っていたことに、気がついた。

 コイツにある何かのために、全速力で走って来たのだ。

 オレのプライドか、オレの意識されない意識か、オレの存在か、何か訳の分からないもののために、走って来たのだ。


 オレは、敵に戦いを挑んだ。

「ボー、ボー!!」と叫ぶ、相手の威嚇に対しては、身体を上下させる威嚇で、応じてみた。

 しかし…相手からの反撃は、何も無かった…

 ボー、ボー叫んでいるだけだ。


 無視か…

 オレのプライドは、水にまみれた。

 こうなれば、己をかけた、総力戦しかなかった。

 体格では、ほぼ互角。

 体力は、お互いに未知数。


 エイヤー!

 とオレは、相手にのしかかった。


 その時、ジェル越しにではあったけれど、そのヒンヤリとした、敵の肉体に接して、オレは、心底恐ろしくなった。

 冷たくて…しかも、固い…

 おまけに、ギザギザとした、無駄な肉が一杯ついている…

 これは…とんでもない相手に、戦いを挑んでしまったのかもしれない。


 もしかすると…この不細工な相手に負ける…かもしれない。

 このカッコいいオレが…こんな不細工なヤツに…

 負・け・る…


 屈辱だった。

 そういう可能性を考えるだけで、屈辱に、身もだえしそうだった。

 実際に、オレの身体を覆っているジェル状物質は、身もだえして、粘着力を増した。

 ネロネロと、敵に密着した上で、敵を水中に叩き込むべく、前後左右に、敵を揺さぶりだした。


 そうか…

 このジェル状物質は、実際のオレではなく、意識されないオレの意志を反映しているのかもしれない。

 そう思ったとたん、このオレ自身も、身もだえした。


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