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オレは、本能的に、コイツのために、全速力で走っていたことに、気がついた。
コイツにある何かのために、全速力で走って来たのだ。
オレのプライドか、オレの意識されない意識か、オレの存在か、何か訳の分からないもののために、走って来たのだ。
オレは、敵に戦いを挑んだ。
「ボー、ボー!!」と叫ぶ、相手の威嚇に対しては、身体を上下させる威嚇で、応じてみた。
しかし…相手からの反撃は、何も無かった…
ボー、ボー叫んでいるだけだ。
無視か…
オレのプライドは、水にまみれた。
こうなれば、己をかけた、総力戦しかなかった。
体格では、ほぼ互角。
体力は、お互いに未知数。
エイヤー!
とオレは、相手にのしかかった。
その時、ジェル越しにではあったけれど、そのヒンヤリとした、敵の肉体に接して、オレは、心底恐ろしくなった。
冷たくて…しかも、固い…
おまけに、ギザギザとした、無駄な肉が一杯ついている…
これは…とんでもない相手に、戦いを挑んでしまったのかもしれない。
もしかすると…この不細工な相手に負ける…かもしれない。
このカッコいいオレが…こんな不細工なヤツに…
負・け・る…
屈辱だった。
そういう可能性を考えるだけで、屈辱に、身もだえしそうだった。
実際に、オレの身体を覆っているジェル状物質は、身もだえして、粘着力を増した。
ネロネロと、敵に密着した上で、敵を水中に叩き込むべく、前後左右に、敵を揺さぶりだした。
そうか…
このジェル状物質は、実際のオレではなく、意識されないオレの意志を反映しているのかもしれない。
そう思ったとたん、このオレ自身も、身もだえした。




