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ナメクジラ  作者: まきの・えり


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4/10

 私には、ああ、これが、私の予感だったのだ、とすぐにわかった。

 私たちは、眠っていた。

 長い船旅で、疲れていたのもあったけれど、どこかで、ヒシヒシと、今寝ておかないといけない、という気分を感じていた。

 私たちは、そういう時には、本当に、よく眠る。


 突然、ドーン、という船全体を揺さぶる揺れが来た。

 床に転がり落ちた、父親と私は、すぐに、目を覚ました。


「お、おは、おは、おはようございます。ただ今、午前7時40分…ウワアアアーー!!」というアナウンスが聞こえた。

「ウワ、ウワ、ウワアアア…助けてくれーー!」というアナウンスで、乗客のほぼ全員が、目を覚ましたと思う。


 私たちは、ある程度覚悟を決めていたので、あまりうろたえなかったけれど、周囲では、パニックが起きていた。

「氷山に激突した!」という声を聞いた。

「船が、沈む!」と口々に叫びながら、船中が、ドタバタという音を立てていた。


「もう、何やの?」と寝起きの悪い、母親まで、目を覚ました。

「氷山に激突したみたい」と私が言うと。

「そんなことぐらいで、騒がんとって欲しいわ」と母親が言った。

「お母さん、海が怖いことないの?」と私はたずねた。

「アホかいな。海が怖くて、船に乗れるかいな」

「わしは、怖い」と父親は、床に転がったまま、震えていた。

「この人は、しゃーないわ。海の水で、殺されかけた口やから」と母親が言った。


「乗客の、み、皆さん…ウワアアア!! お、お、落ち着いて…ギャアアアア!! 落ち着いて…グワアアア!! うわあ、来た、来たあああ!!」

 というアナウンスと、船の大きな揺れで、本当に、とんでもない事態になっていることは、わかる。

 しかし、そういう緊急事態のはずなのに、私は、かなり落ち着いており、自分の勘が当たったことに、変に満足してしまっていた。

 これで、お母さんの言う、私の予感的中率が、4割近くにはなった、と思えるからだ。




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