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走る、走る、走る。
ついに、オレは、水面上に姿を現し、ジェル状物質を旋回させることによって、猛スピードで、水面の上を走ることができるようになった。
これは、快適だ。
空気抵抗の一番少ない、流線型のカッコいいオレだからこそ、できる芸当だ。
誰に言われなくても、充分以上にりりしく、カッコいいことは、オレ自身が知っていた。
ジェル状物質ごしに、身体に感じる風も、オレの誇りに色を添える。
ああ、気持ちがいい。
この世にオレ一人。
この世は、オレのものだ、オレの思うままだ、という気持ちよさだ。
それに加えて、スピードとスリル、それに、風。
オレのスピードが少し落ちた。
なぜか、スピードを落とした方がいいように感じる。
その理由は、すぐにわかった。
オレと同じように、水面を走る生き物がいたからだ。
チッとオレは思った。
この時の意識は、複雑だ。
分析してみよう。
オレは、自分だけが、この気持ちよさを知っていると思っていた。
ところが、同じように、気持ちよさそうなヤツが現れたのだ。
当然、カッコよさでは、オレの勝ちだ。
相手のおバカ野郎は、空気抵抗を受けやすい、不細工な格好だ。
ジェル状物質で、保護されているわけでもない。
プッと笑いたくなったが、オレは笑えなかった。
形態的に笑えないのだとは、その時、考えてもみなかった。
一番腹が立ったのは、相手の超然とした態度だ。
お前のことなんか、ぜ~んぜん、問題じゃないもんね~。
関心ないもんね~~、という、クソいまいましい態度。
オレは、怒った。
というよりも、怒りという感情が芽生えた。
で、オレは、わざと、相手に近づいてみた。
すると、ボー、ボー、と叫んで、オレを威嚇するではないか。
そうか、とオレは思う。
オレに、勝負を挑んでいるわけだな。
いい度胸だ。
スピードでは、オレの勝ちだ。
しかし、相手にも、何か、とんでもない戦力があるような気がする。
一瞬でも気を抜いたら、この戦いに敗れるかもしれない。
オレの誇りが、芽生えたばかりの意識の中の誇りが、地に、いや、水にまみれるかもしれない。




