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「アホなことは、やめとき!!」
そういう両親の絶叫を、私は、どこか遠いものとして、受信していた。
私たちの種の存続が危うい今、文明化してしまった私たちが取るべき道は、未発達ではあるけれど、生命力の強い、新種のオスと結婚することではないのか。
その証拠に、私は、私たちの両親が失ってしまった能力、つまり、自分の周囲にネバネバしたバリアーを作り、そのバリアーを濃やかに、うごめかすことによって、異性を誘い、または、拒絶する、外気や外敵から、自分を安全に守る、という能力を、少しずつ回復しつつあった。
私たちの未来のために。
私の夫が、どこに向かって、全力疾走しているのかは、今の私にはわからない。
私は、夢見る。
どこかに、私たちだけの国を建国する。
人類に干渉され、差別されない国を。
そのために、私は、何千匹もの子供を産もう。
その子たちを、逞しく育て、賢く教育しよう。
私の夫のように、父母の世代の恐れる塩水でさえ克服し、異性を求めて、海面上を走り回れるような、子孫を残そう。
暗く雲の垂れこめた空から、差し込んでくる、一条の光。
そのキラキラした輝きが、未来に向かって進んでいる、私たちを、祝福しているように、思えた。




